56歳の女性。4年前に関節リウマチと診断された。Steinbrockerのステージ3、クラス3。趣味は料理、手芸および絵画で活動への意欲は高い。両肩関節と両股関節の可動域制限は著明であり、起き上がりが困難である。後頸部と両膝の痛みを訴えている。作業療法で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
関節リウマチ患者は、関節の炎症や変形により疼痛や可動域制限が生じやすく、特に下肢関節に制限があると、立ち座り動作に困難を伴います。座面が高い椅子を使用することで、股関節や膝関節の屈曲角度が浅くなり、関節への負担が軽減されるため、立ち上がりや座位からの調理動作が容易になります。これは、関節保護とADLの自立を支援する上で非常に有効なアプローチです。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者は趣味活動に高い意欲を示しており、活動の維持は生活の質(QOL)向上に重要です。関節への負担を考慮し、方法を工夫したり、補助具を使ったりして継続できるよう支援すべきであり、安易な中止は適切ではありません。正しくは:趣味活動の絵画を継続できるよう、関節に負担のかからない方法や補助具を検討する。選びやすい理由:関節保護の観点から活動量を制限すべきと考える学生は、負担のかかる活動は中止すべきだと誤解する可能性があります。混同注意:「関節保護」と「活動制限」を混同しやすいです。関節保護は活動を工夫して継続することを目指します。
- 2. 柔らかすぎるマットレスは体圧分散が悪く、特定の関節に圧が集中しやすくなります。また、体幹が不安定になり、寝返りや起き上がり動作が困難になるため、関節リウマチ患者には適していません。適度な硬さがあるマットレスが関節保護と動作のしやすさのために推奨されます。正しくは:体圧を適切に分散し、寝返りや起き上がりを妨げない適度な硬さのマットレスを推奨する。選びやすい理由:関節が痛むから柔らかい方が良いと直感的に考える学生がいるかもしれません。混同注意:「痛み緩和」と「関節保護・動作支援」を混同しやすいです。単純な柔らかさだけでは痛みが悪化したり、動作が困難になったりする場合があります。
- 3. 後頸部に痛みを訴えている患者に対し、高さのある枕を使用すると頸椎の生理的湾曲が失われ、頸部への負担が増大し、痛みが悪化する可能性があります。適切な枕は、頸椎の自然なカーブを保ち、頭頸部を安定させるものです。正しくは:頸椎の生理的湾曲を保ち、頭頸部を適切に支持できる高さの枕を推奨する。選びやすい理由:寝返りがしやすくなると誤解したり、首が固定されるから良いと勘違いしたりする学生がいるかもしれません。混同注意:「頸部固定」と「頸部保護」を混同しやすいです。過度な高さは保護ではなく負担になります。
- 4. 等張性収縮運動は、関節を動かしながら筋力を発揮するため、関節に比較的大きな負担がかかります。関節リウマチ患者では、特に炎症や関節破壊が進んでいる場合、関節保護の観点から避けるべきです。関節に負担の少ない等尺性収縮運動(関節を動かさない筋収縮)が推奨されます。正しくは:上肢の筋力を維持するため、関節に負担の少ない等尺性収縮運動を取り入れる。選びやすい理由:筋力維持は重要であるため、運動を行うこと自体は正しいと考えてしまうかもしれません。混同注意:「等張性収縮」と「等尺性収縮」の違い、および関節リウマチにおける「関節保護」の原則を混同しやすいです。
- 5. 正解。両股関節の可動域制限が著しく、起き上がりが困難な患者にとって、座面が高い椅子は股関節の屈曲角度を少なくし、立ち座りの動作を容易にします。これは関節への負担を軽減し、ADL(日常生活動作)の自立度を高めるための関節保護の原則に基づいた適切な支援です。また、両膝の痛みも軽減する可能性があります。
国試ポイント
この問題は、関節リウマチ患者の身体機能と生活状況を理解し、関節保護の原則に基づいた適切な生活指導や環境調整を提案できるかという、作業療法士として基本的な知識と応用力を問うています。特に、ADLにおける動作分析と、それに対する具体的な介入策(自助具や環境調整)の知識が求められます。
混同注意
関節保護と活動制限の混同(活動意欲のある患者に対するアプローチ)、痛みの緩和と適切な姿勢・動作の混同(柔らかいマットレスや高い枕)、等張性収縮と等尺性収縮の使い分け(疾患活動性に応じた運動処方)、筋力維持の重要性と関節負担のバランス。
次に同じ論点が出たら
次に同様の問題が出題された場合、患者の関節可動域制限や疼痛部位、日常生活での困難な動作に着目し、その動作がどの関節に負担をかけているかを分析します。その上で、関節への負担を軽減し、かつADLの自立を促すための具体的な姿勢、動作指導、または環境調整(自助具・福祉用具の選定)が適切であるかを判断します。特に、「関節保護」の原則に則っているか、「活動の維持・促進」につながるかを評価します。
関連知識
関節リウマチの病期分類(Steinbrockerのステージ・クラス)とその意味、関節保護の原則(関節への負担軽減、不良肢位の回避、安静と活動のバランス)、日常生活動作(ADL)における関節保護的動作の指導、補助具(自助具)や福祉用具の活用、住環境整備(椅子の高さ、手すりの設置など)、疾患活動性に応じた運動療法の選択(等尺性運動、ストレッチ、ROM運動など)。