58歳の男性。脳梗塞後の左不全片麻痺。Brunnstrom法ステージ上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅲ。短下肢装具装着で杖歩行が可能である。MMSEは25点、高次脳機能障害はない。利き手は右手である。山間部に在住であり自動車の運転が必要である。同居の妻は運転免許を取得していない。オートマチック車での運転再開に向けて作業療法を開始した。運転再開支援で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
脳梗塞後の運転再開には、安全性の確保が最重要課題です。道路交通法に基づき、身体機能に変化があった場合は、運転免許証の更新期間にかかわらず、都道府県公安委員会による臨時適性検査を受けることが義務付けられています。これにより、患者の現在の身体能力が安全運転に必要な水準を満たしているかを客観的に評価し、必要に応じて補助装置の使用などの条件を付与することで、事故のリスクを低減させることができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 運転免許の更新は定期的に行われるものであり、脳梗塞発症による身体機能の変化があった場合には、更新期間を待たずに臨時適性検査を受ける必要があります。自動車教習所への通学は運転訓練の一環としては有効ですが、その前に適性検査を受けることが優先されます。正しくは:運転免許の更新手続きと臨時適性検査は別のものであることを理解し、臨時適性検査を優先する。選びやすい理由:運転免許を更新しないと運転できない、という一般的な認識があるため、更新が運転再開に直結すると誤解しやすいため。混同注意:通常の運転免許更新と、脳梗塞後の臨時適性検査。
- 2. 正解。脳梗塞による左不全片麻痺があり、身体機能に変化が生じているため、道路交通法に基づき、運転を再開する前に都道府県公安委員会による臨時適性検査を受けることが最も適切です。これにより、安全に運転が可能であるか、または必要な運転条件(補助装置など)が客観的に判断されます。選びやすい理由:臨時適性検査が運転再開の法的な手続きとして最も適切であるため。
- 3. 車の乗り降りは日常生活動作の一部であり、自動車の運転そのものとは直接関係がありません。スライディングボードの使用指導は移動動作の自立を促す上で重要ですが、運転再開の可否を判断する前に取り組むべき事項ではありません。患者は杖があれば歩行可能であるため、乗り降り自体は可能と考えられます。正しくは:車の乗り降りは運転に必要な機能とは異なるため、運転再開の判断とは切り離して考えるべきである。選びやすい理由:作業療法士が日常生活動作を支援する専門職であるため、ADLの自立支援が運転再開支援の一部であると誤解しやすいため。混同注意:運転動作と、自動車への乗り降りといった付随するADL。
- 4. 奥様を助手席に乗せることは、運転時の安全を確保する上で一時的なサポートにはなるかもしれませんが、法的な義務ではなく、患者の運転能力を保証するものではありません。また、奥様が免許を持っていないため、万が一の事態に対応できるわけではありません。あくまで運転再開の判断は本人の運転能力に基づいて行われるべきです。正しくは:運転再開は、あくまで本人の運転能力と法的な手続きに基づき判断されるべきであり、他者の同乗は運転能力を代替するものではない。選びやすい理由:家族の協力によるサポートが運転再開に有効であると考える可能性があるため。混同注意:運転時の同乗者の役割と、運転免許における法的な運転能力の評価。
- 5. 運転再開の最終的な許可を出すのは、道路交通法に基づいて都道府県公安委員会です。作業療法士は運転再開に向けたリハビリテーションや評価を行い、その結果を公安委員会に提出するなどして情報提供を行う役割を担いますが、許可を直接出す権限はありません。正しくは:運転再開の最終的な許可は都道府県公安委員会が出し、作業療法士はリハビリテーションと評価を通じて情報提供を行う。選びやすい理由:作業療法士が運転リハビリテーションの専門家であるため、その専門家が許可を出すと誤解しやすいため。混同注意:医療従事者の役割(評価・訓練・情報提供)と、法的な許可権限(公安委員会)。
国試ポイント
脳卒中後の自動車運転再開における道路交通法上の手続きと、医療職の役割を理解しているか。
混同注意
医療職の判断と公安委員会の判断。運転再開の可否を最終的に判断するのは公安委員会であり、医療職は医学的側面から助言や情報提供を行います。
次に同じ論点が出たら
脳損傷患者の運転再開支援に関する問題が出題された場合、まず「道路交通法に基づく臨時適性検査」の必要性を検討し、次に患者の身体機能、認知機能、生活背景を考慮した具体的な支援内容が問われているかを確認します。
関連知識
脳損傷後の運転再開支援においては、認知機能(MMSEだけでなく、より詳細な評価バッテリーを用いる)、視覚、判断力、反応速度なども評価項目となります。また、患者の生活背景(山間部居住、奥様が運転免許なし)も支援計画に影響します。