58歳の男性。アルコール依存症。長年、製造業に従事し晩酌を欠かしたことはなかった。徐々に飲酒量が増え、連続飲酒で入退院を繰り返している。今回Wernicke脳症のため入院となり、その後Korsakoff症候群が残遺した。状態が安定したため作業療法が処方された。この患者に出現する可能性が高い症状はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
コルサコフ症候群は、重度の記銘力障害(特に新しい情報を覚えることができない前向性健忘)を主な特徴とします。これはビタミンB1欠乏によって引き起こされるウェルニッケ脳症が慢性化した結果として残遺することが多く、作話や失見当識を伴うこともあります。そのため、この患者に最も可能性が高い症状は記銘力障害です。
選択肢ごとの解説
- 1. 観念奔逸は思考の進行が速まり、次から次へと関連性の薄いアイデアが浮かぶ状態を指し、主に躁病エピソードや精神運動興奮状態で見られます。コルサコフ症候群の主要な症状である記銘力障害や作話、失見当識とは直接的な関連が薄いです。正しくは:観念奔逸は躁病の典型症状であり、思考過程の障害を指します。コルサコフ症候群の核となる症状は記憶障害です。選びやすい理由:記憶障害によって思考が混乱しているように見える場合でも、それが観念奔逸という特定の症状であると誤解する可能性があります。混同注意:思考散漫、支離滅裂な思考。
- 2. 体感幻覚は、身体内部に異常な感覚が生じる幻覚で、精神病性障害やせん妄、アルコール離脱症候群で出現する可能性がありますが、コルサコフ症候群の主症状ではありません。正しくは:体感幻覚は統合失調症などの精神病性障害や、せん妄、アルコール離脱症状などで見られることがあります。コルサコフ症候群では通常、記憶障害が中心です。選びやすい理由:アルコール依存症の患者全体で幻覚が見られることがあるため、コルサコフ症候群の症状として誤って選んでしまう可能性があります。混同注意:幻視、幻聴、触覚幻覚。
- 3. 不安発作は、突然の強い不安感や身体症状を伴うもので、パニック障害をはじめとする不安症群や様々な精神疾患、身体疾患で見られますが、コルサコフ症候群に特有の中核症状ではありません。記憶障害による混乱から二次的に不安を感じることはあり得ますが、発作として出現することは主要症状ではありません。正しくは:不安発作はパニック障害や全般性不安障害などの不安症群の症状です。コルサコフ症候群では記憶障害が直接的な症状となります。選びやすい理由:精神的な負担から不安を感じることは誰にでもあるため、病態の一部として不安発作を連想しやすいかもしれません。混同注意:全般性不安障害、パニック障害。
- 4. 正解。コルサコフ症候群は、ウェルニッケ脳症の後遺症として出現することが多く、ビタミンB1欠乏による脳の損傷が原因とされます。その最も特徴的な症状は記銘力障害(新しい情報を記憶することができない前向性健忘)であり、作話や失見当識を伴うこともあります。
- 5. フラッシュバックは、過去の心的外傷体験が突然、鮮明に再体験される現象で、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の主要な症状の一つです。コルサコフ症候群による記憶障害とは異なる機序を持つ、全く別の症状です。正しくは:フラッシュバックは心的外傷後ストレス障害(PTSD)の代表的な症状です。コルサコフ症候群はビタミンB1欠乏による脳損傷が原因の記憶障害です。選びやすい理由:記憶に関連する症状であるため、記憶障害の一種と誤解する可能性があります。混同注意:健忘、心的外傷後ストレス障害(PTSD)。
国試ポイント
コルサコフ症候群の中核症状(記銘力障害、作話、失見当識)と、その原因(ウェルニッケ脳症からの移行、ビタミンB1欠乏)に関する知識が問われています。他の精神疾患の症状との鑑別も重要です。作業療法士としては、これらの症状を持つ患者への評価や介入方法を理解している必要があります。
混同注意
ウェルニッケ脳症(急性期であり眼球運動障害、運動失調、意識障害が特徴)、認知症(進行性で記憶以外の高次脳機能障害も広範囲に及ぶ)、せん妄(意識障害、見当識障害、幻覚妄想などを特徴とするが、急性で変動性が大きい)。
次に同じ論点が出たら
次回同様の論点が出題された場合、コルサコフ症候群の他の特徴的な症状(作話、失見当識)も選択肢に含まれるか、またはウェルニッケ脳症の急性期症状との鑑別が問われる可能性があります。また、アルコール依存症全体の合併症や作業療法における具体的な介入内容も確認する必要があるでしょう。
関連知識
ウェルニッケ・コルサコフ症候群は、ビタミンB1(チアミン)欠乏が原因で、アルコール依存症患者に多く見られる神経精神疾患です。ウェルニッケ脳症の急性期症状からコルサコフ症候群の慢性期症状へと移行することがあります。コルサコフ症候群の主な症状には、記銘力障害(前向性健忘)、作話(記憶の空白を創作した話で埋める)、失見当識(時間、場所、人物の認識障害)があります。作業療法では、記憶補助具の使用、日課の構造化、環境調整、心理的サポートなどが重要になります。