68歳の男性。慢性呼吸器疾患。「最近、入浴すると息切れがする」との訴えがある。入浴指導として正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
慢性呼吸器疾患患者の入浴指導では、呼吸困難を軽減するために酸素消費量を減らす工夫が必要です。片手で髪を洗うことで、両腕を同時に使うよりも身体活動量を減らし、呼吸筋への負担と酸素消費量を低減することができます。これは、日常生活動作における省エネ動作の原則に基づいています。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。慢性呼吸器疾患患者の入浴では、身体活動による酸素消費量を抑えることが重要です。片手で髪を洗うことで、両手を使うよりもエネルギー消費を低減し、息切れを軽減できます。これは、動作の効率化と負荷軽減を図る自己管理技術(省エネ動作)の一環です。
- 2. 首まで深く湯に浸かると、胸部や腹部が水圧によって圧迫され、肺の換気が阻害されやすくなります。これにより呼吸筋への負担が増加し、息切れが悪化する可能性があります。正しくは:湯に浸かる際は、みぞおちから胸のあたりまでの半身浴にとどめ、胸部への水圧負荷を軽減するように指導します。選びやすい理由:体をしっかり温めることは良いことだと考えるため、深く浸かることを推奨したくなるかもしれません。混同注意:健常者向けの入浴法(全身浴でしっかり温まる)と、呼吸器疾患患者向けの入浴法(呼吸負荷軽減)を混同しやすいです。
- 3. 短いタオルで背中を洗う場合、腕を大きく動かしたり、体をひねったりする必要があり、これが呼吸筋に大きな負担をかけ、息切れを誘発しやすくなります。長いタオルであれば、比較的少ない動きで背中全体を洗うことができます。正しくは:背中を洗う際は、腕の可動域を減らし、体幹のひねりを最小限に抑えるため、長いタオルや柄のついたブラシを使うように指導します。選びやすい理由:特に一般的な入浴指導と区別せず、選択肢の提示通りに考えてしまう可能性があります。混同注意:短いタオルの利点(扱いやすさ)と、呼吸器疾患患者にとっての動作負荷軽減の重要性を混同しやすいです。
- 4. 呼吸器疾患患者が息切れを軽減するための動作指導では、「息を吐きながら動作を行う」ことが基本です。息を吐きながら動作することで、横隔膜の動きを助け、呼気を促進し、肺に残る空気の量を減らす(残気量の減少)ことで、次の吸気を楽にします(口すぼめ呼吸と協調させることが多い)。息を吸いながら動作すると、呼吸筋への負荷が大きくなり、息切れが悪化するリスクがあります。正しくは:息を吐きながら(特に口すぼめ呼吸で)動作を行うように指導します。これにより、呼吸の効率を高め、息切れを軽減できます。選びやすい理由:「呼吸に合わせて」という言葉から、呼吸リズムを整えることが良いと誤解し、吸気時に動作することも有効であると考えてしまうかもしれません。混同注意:一般的な運動時の呼吸法(吸気時に力を入れる)と、呼吸器疾患患者の息切れ軽減のための呼吸法(呼気時に力を抜く、口すぼめ呼吸)を混同しやすいです。
- 5. 長座位で膝を立てて足を洗う姿勢は、体幹を前屈させるため、腹部が圧迫されやすく、横隔膜の動きが制限されて呼吸がしにくくなります。また、前屈位自体が呼吸筋への負担を増大させ、息切れを誘発しやすいです。正しくは:足のケアは、安定した椅子に座って体幹を直立させ、膝を曲げ、足が届く範囲で行うか、または介護者に手伝ってもらうことを検討します。座って体を安定させ、前屈姿勢を避けることが重要です。選びやすい理由:座って洗うことは良い姿勢だと考えるため、長座位が呼吸への影響を考慮せず、選択肢の通りに良いと判断してしまう可能性があります。混同注意:一般的な「座って洗う」という動作の利点と、呼吸器疾患患者にとっての「座位姿勢が呼吸に与える影響」を混同しやすいです。
国試ポイント
慢性呼吸器疾患患者の日常生活動作指導、特に息切れ(呼吸困難)に対する省エネ動作や呼吸理学療法が問われることが多いです。入浴、着替え、食事などの具体的事例を通して、呼吸困難のメカニズムを理解し、それに対する適切な対応策を選択できるかが試されます。
混同注意
健常者向けの一般的な健康習慣(例:全身浴で温まる、運動時に吸気で力を入れる)と、疾患を持つ患者の症状管理のための特殊な配慮を混同しないように注意が必要です。特に呼吸器疾患患者では、身体の姿勢や動作と呼吸機能への影響を結びつけて考えることが重要です。
次に同じ論点が出たら
次に類似の問題が出た場合、まず「対象疾患(慢性呼吸器疾患)の症状(息切れ)を悪化させないための基本的な考え方(酸素消費量の抑制、呼吸筋負担の軽減)」を明確にする。その上で、各選択肢がその原則に合致するかどうか、具体的な動作が身体にどのような影響を与えるかを医学的・生理学的に判断する。
関連知識
慢性呼吸器疾患(COPD、喘息など)の病態生理、呼吸困難のメカニズム、省エネ動作の原則、口すぼめ呼吸、ADL指導の基礎、水圧が呼吸機能に与える影響、呼吸リハビリテーション。