19歳の男性。てんかん及び軽度知的障害(IQ 60)。特別支援学校卒業後にクリーニング店に就職した。「接客態度が悪い」と注意されたことをきっかけに仕事に行けなくなり、引きこもりとなった。時々家族に暴力を振るうために、家族が主治医に相談して外来作業療法が処方された。本人、家族とも復職を希望している。この患者に対して優先すべき対応はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
この患者は「接客態度が悪い」と指摘されたことを契機に引きこもりになり、家族への暴力も認めることから、対人関係における問題が顕著です。軽度知的障害も考慮すると、社会的な状況判断や適切なコミュニケーション能力に課題があると考えられます。本人と家族が職場復帰を希望しているため、具体的な目標達成に向けて、最も直接的に効果が期待できる対人技能の訓練を優先的に行うことが重要です。
選択肢ごとの解説
- 1. 暴力行為の内省を促すことは心理的な介入として重要ですが、これは感情の制御や問題解決能力の一部であり、復職を希望している状況で優先されるのは、直接的に社会参加を阻害している対人関係の問題に対処することです。内省は時間をかけて行うべきものであり、初期対応としてはより具体的なスキル訓練が適切です。正しくは:感情のコントロール方法やストレス対処法について具体的に学ぶ機会を提供する。選びやすい理由:暴力行為は深刻な問題であり、その原因を本人に認識させることは重要だと感じるため。混同注意:心理カウンセリングや精神療法における内省を促すアプローチと、作業療法における行動変容へのアプローチ。
- 2. 正解。患者は「接客態度が悪い」と指摘されたことを契機に引きこもりになった経緯があり、職場復帰を希望しています。軽度知的障害もあるため、社会的な状況を理解し、適切に反応するための対人技能が不足している可能性が高いです。職場復帰を目指す上で、この対人技能の改善が最も直接的かつ優先的に取り組むべき課題です。
- 3. 注意力や集中力は仕事遂行に不可欠な要素ですが、この事例において直接的な引きこもりの原因や職場復帰を阻害している主な要因として提示されていません。対人関係の問題が前面に出ており、そちらへの対処が優先されます。もちろん、作業療法の中で集中力を養う要素は含まれるでしょうが、最優先事項ではありません。正しくは:特定の作業を通して、コミュニケーションや協調性を養う機会を設ける。選びやすい理由:軽度知的障害があるため、認知機能の向上が必要だと考えるかもしれないため。混同注意:認知機能全般の訓練と、特定の社会技能訓練の優先順位。
- 4. てんかんに関する疾病教育は、自己管理や服薬遵守のために重要ですが、この事例において、てんかん自体が直接的に引きこもりや暴力行為、職場での問題行動の原因であるとは示されていません。病識の向上は必要ですが、職場復帰への直接的な支援としては、対人技能の訓練の方が優先されます。正しくは:てんかんの症状や服薬管理に関する知識を深め、日常生活での影響について理解を促す。選びやすい理由:てんかんという疾患があるため、疾患理解が根底にあるべきだと考えるため。混同注意:疾患教育の重要性と、症状による二次的な社会機能障害への直接的介入の優先順位。
- 5. 運動能力を高めることは、身体的な健康維持やストレス解消に役立ちますが、この事例で引きこもりや職場での問題の直接的な原因が運動能力の不足にあるとは示されていません。復職を希望しており、問題が対人関係に起因していることから、運動よりも社会技能の獲得が優先されます。正しくは:運動活動を通じて、集団での活動や協調性を養う機会を提供する。選びやすい理由:身体活動はストレス発散や自己肯定感の向上に繋がり、間接的に役立つと考えるため。混同注意:身体的活動の重要性と、具体的な社会参加を促すためのスキルトレーニングの優先順位。
国試ポイント
作業療法士国家試験では、事例問題において、患者の主訴や背景、目標を総合的に判断し、最も優先すべき介入を選択する能力が問われます。特に、社会参加を阻害している具体的な要因を特定し、それに対して直接的かつ効果的なアプローチを選ぶことが求められます。発達障害や精神疾患を合併している場合の、社会技能訓練の重要性を理解しているかどうかがポイントとなります。
混同注意
この問題では、暴力行為やてんかんといった他の問題も提示されており、それらへの介入の必要性を感じるかもしれませんが、患者の引きこもりと職場復帰希望という中心的な課題に対して、最も直接的にかつ優先的にアプローチできるのは対人技能訓練です。他の選択肢は、重要な介入ではありますが、この状況下での最優先事項ではありません。
次に同じ論点が出たら
今後同様の症例が出た場合、まず患者の「主訴」または「最も困っていること」と、それに対する「具体的な目標」を明確にし、その目標達成に最も直接的に寄与する介入は何かを考えることが重要です。特に、対人関係の課題が原因で社会参加が阻害されている場合は、対人技能訓練が優先されることが多いです。
関連知識
社会技能訓練(SST)、認知行動療法(CBT)の一部、発達障害者への支援、精神障害者の就労支援、作業療法の評価(COPMなどを用いた目標設定)。軽度知的障害者の特性理解とそれに基づく個別支援計画の作成。