22歳の男性。注意欠如・多動性障害。大学卒業後に営業職に就いた。顧客との約束や書類を忘れるなどの失敗が続き、上司が度々指導をしても改善しなかった。子供のころから不注意傾向があり、母親は「しつけをしてこなかった自分に非がある」という。その後も失敗が続いて自信を喪失し、1週前から欠勤し精神科の受診に至った。入院となり作業療法が処方された。この時期の作業療法士の対応として適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
22歳の男性は注意欠如・多動性障害(ADHD)であり、大学卒業後に営業職に就いたものの、不注意傾向による失敗が続き、自信を喪失して休職に至っています。この急性期においては、まず心身の休養を優先し、精神的な安定を図ることが重要です。職場復帰を焦ると、さらなるストレスや症状の悪化を招くリスクがあるため、作業療法士は休養の重要性を伝え、回復を促す対応が適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者は自信を喪失し、休職している状況であり、この時期に仕事の適性について断定的な意見を述べ、転職を勧めることは、患者の自己肯定感をさらに低下させ、精神的負担を増大させる可能性があり不適切です。まずは休養と症状の安定を優先すべきです。正しくは:まずは休養と精神的な安定を図り、自己理解を深めた上で、将来的なキャリアプランについて共に考える支援が必要です。選びやすい理由:ADHDの特性と現在の職業のミスマッチが問題の原因であるように見えるため、直接的な解決策として転職を勧めることが魅力的に映るかもしれません。混同注意:ADHD患者への就労移行支援におけるキャリアカウンセリングと、急性期における精神的ケアの優先順位。
- 2. 正解。患者は営業職での失敗が続き、自信を喪失して欠勤・入院に至っており、心身ともに疲弊している状態です。この時期は心身の回復を最優先し、精神的な安定を図ることが重要であるため、休養に専念し職場復帰を焦らないように伝えることは、患者の回復を支援する上で適切な対応です。選びやすい理由:患者の精神的な安定と回復を最優先する考え方は、医療従事者として自然な判断であり、多くの精神疾患の急性期において共通する介入原則です。混同注意:特になし。精神科作業療法における基本的な考え方です。
- 3. ADHDは脳機能の特性による発達障害であり、母親のしつけの失敗が直接的な原因ではありません。このような発言は、母親に不必要な罪悪感を与え、患者と家族の関係を悪化させる可能性があり、不適切です。医学的根拠に基づかない発言は避けるべきです。正しくは:ADHDは発達障害であり、しつけの問題ではないことを家族に適切に説明し、病気への理解を促し、家族が患者をサポートできるよう支援することが重要です。選びやすい理由:母親が「しつけをしてこなかった自分に非がある」と発言しているため、その点に言及することが適切だと感じるかもしれませんが、ADHDの本質を理解していればこの選択肢は誤りです。混同注意:精神疾患の心理社会的要因と、発達障害の生物学的要因。
- 4. 上司の指導方法は、患者の職場での困難を悪化させた可能性は否定できませんが、ADHDの「病気の誘因」ではありません。ADHDは脳機能の特性による発達障害であり、指導方法が病気を引き起こすことはありません。このような発言は、職場との関係を悪化させる可能性があり、不適切です。正しくは:上司の指導方法が患者のADHD特性に合っていなかった可能性については、症状が安定した後に、患者が職場復帰を目指す際に職場環境調整の一環として検討するべき事項です。まずは患者の症状安定を優先します。選びやすい理由:上司との関係性が患者のストレス要因になっていると解釈し、その原因に言及することが問題解決につながると考えるかもしれません。混同注意:精神疾患の誘因と、症状の悪化要因(ストレス要因)。
- 5. この患者は自信を喪失し、1週前から欠勤し入院に至ったばかりの急性期であり、まずは休養と心身の安定が最優先されます。この時期に直ちに職場復帰を目的とした対人技能向上を促す作業活動を勧めることは、患者にさらなる負担をかけ、回復を阻害する可能性があります。正しくは:心身が安定し、回復期に入ってから、患者のニーズと目標に合わせて、段階的に対人技能向上などの作業活動を導入することを検討します。選びやすい理由:職場での対人関係の失敗が休職の一因であると捉え、その解決策として対人技能向上を勧めることが論理的に見えるためです。しかし、病期を考慮する必要があります。混同注意:精神疾患の急性期における介入と、回復期以降の社会復帰に向けた介入。
国試ポイント
精神疾患急性期・回復期における作業療法の目標と介入の原則、特にADHD患者の初期介入。
混同注意
精神疾患の急性期と回復期、あるいは就労移行支援における介入目標。
次に同じ論点が出たら
患者の病期(急性期、回復期、維持期など)と、それに伴う心身の状態やニーズ。本症例は「1週前から欠勤し精神科の受診に至った」「入院となり作業療法が処方された」とあり、急性期であることを判断する。
関連知識
ADHDの症状(不注意、多動性、衝動性)、診断基準、薬物療法と非薬物療法(心理社会的介入、環境調整、認知行動療法)。精神科リハビリテーションの段階に応じた介入の原則。