43歳の女性。うつ病。半年前に子供が1人暮らしを始めてから気分が落ち込み、布団で寝たままでいることが増えた。家事を夫が行うようになると、「夫に迷惑をかけている自分は生きている価値がない」と口にするようになり、夫に連れられ精神科クリニックを受診した。服薬治療が開始され、症状が改善してきたため外来作業療法が処方された。導入時の作業療法士の対応で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
うつ病患者は、意欲や集中力の低下、自己肯定感の低下を伴うことが多く、導入期においては、失敗体験を避けることが重要です。明確な枠組みのある構成的な作業は、患者が手順を理解しやすく、達成感を得やすいため、症状改善に繋がりやすいとされています。
選択肢ごとの解説
- 1. うつ病患者は意欲低下や気分の変動が大きいため、決められたスケジュールに厳格に従うよう促すことは、かえって負担となり、失敗体験につながる可能性がある。柔軟な対応が必要である。正しくは:患者の病状に合わせて、柔軟にスケジュールを調整し、小さな達成感を積み重ねられるような配慮をする。選びやすい理由:リハビリテーションにおいては、スケジュール遵守が重要であると一般的に考えられるため。混同注意:治療の規律性と、患者の精神状態への配慮のバランス。
- 2. 正解。うつ病患者は、半年前に子どもが独立して以来気分が落ち込みがちで、布団から出られない日が増え、自己肯定感が低下している。明確な枠組みのある構成的な作業は、作業の手順や目標が分かりやすいため、患者が迷うことなく取り組め、達成感を得やすい。これは自己効力感の回復に繋がり、「夫に負担をかけている自分は生きる価値がない」と感じている患者の肯定感を高める上で有効である。選びやすい理由:達成感や成功体験を促すことが重要であると理解されているため。混同注意:指示的介入と自律性尊重のバランス。
- 3. 導入期において、作品の出来栄えのみを評価し積極的に賞賛することは、患者に過度なプレッシャーを与えたり、失敗を恐れて新しい作業に取り組めなくなる可能性があり、自己肯定感が低い状態では逆効果となることがある。正しくは:作品の出来栄えよりも、作業に取り組んだプロセスや努力を認め、患者の主体的な感情を尊重するような関わり方をする。選びやすい理由:患者のモチベーション向上には賞賛が有効であると一般的に考えられるため。混同注意:適切な承認と過度な評価。
- 4. 意欲の低下はうつ病の主要症状であり、この状況で作業の遂行を強く促すことは、患者にとって大きな負担となり、治療への抵抗感を生じさせたり、症状を悪化させる危険性がある。正しくは:意欲低下が認められる場合は、まずは患者の気分や体調を尊重し、休息や気分転換を促すなど、無理のない範囲で関わり、作業内容や量を調整する。選びやすい理由:治療効果を最大限に引き出すためには、積極的に介入すべきだと考えられるため。混同注意:適切な促しと強要。
- 5. 体調が改善しても気分がすぐに改善するとは限らず、「心配ない」と安易に励ますことは、患者の苦しみを過小評価し、共感性の欠如と捉えられ、信頼関係の構築を阻害する可能性がある。うつ病患者はしばしば自身の感情を理解されないと感じている。正しくは:患者の気分や感情の変化に寄り添い、現在のつらい気持ちを傾聴し、その感情を否定せずに受け止める姿勢を示す。選びやすい理由:患者を元気づけたいという善意からくるが、うつ病の病態への理解が不足しているため。混同注意:精神的なサポートと安易な励まし。
国試ポイント
うつ病患者に対する作業療法の導入期におけるアプローチの原則(達成感の提供、失敗体験の回避、明確な構造化)を理解する。
混同注意
構成的な作業は、単に「簡単な作業」を意味するのではなく、手順が明確で結果が予測しやすい「構造化された作業」であることを理解する。患者の自律性を尊重しつつも、初期段階では具体的なガイドが必要となる。
次に同じ論点が出たら
うつ病患者の作業療法導入期に関する問題が出た場合、患者の病状(意欲低下、自己肯定感低下)を踏まえ、失敗体験を避け、達成感を促すための「構造化された介入」を選択肢から判断する。
関連知識
うつ病の治療においては、休養、薬物療法、精神療法、作業療法が柱となる。作業療法では、急性期から回復期にかけて、活動性の向上、生活リズムの再構築、自己効力感の回復を目指す。