PTSD〈外傷後ストレス障害〉に関する支援方法として適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
PTSDの認知行動療法では、トラウマ体験によって生じた非適応的な認知(例:「自分は無力だ」「世界は危険だ」)を特定し、それをより現実的で適応的なものへと再構成する「認知再構成」が中心的な治療技法となります。これは、体験への意味づけを変え、症状の軽減につながるため、適切な支援方法です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。PTSDの認知行動療法では、外傷体験によって歪められた認知を修正し、再構成することが重要な治療目標の一つです。これにより、体験への意味づけが変わり、苦痛の軽減につながります。
- 2. 集団療法やピアサポートにおいて、安全な環境下で体験を語ることは、孤立感の軽減や共感の獲得、自身の体験の整理につながることがあります。ただし、強制や準備ができていない状態での語りは避けるべきです。正しくは:安全が確保され、本人が希望する場合には、集団内で体験を語ることを選択肢として提供し、支援する。選びやすい理由:トラウマ体験を語ることで再体験を引き起こす危険性を考慮すると、語らせない方が良いと短絡的に考えてしまう可能性がある。混同注意:危機介入の初期段階で体験の詳細な語りを急がせないことと、治療過程で安全な環境下での語りを支援することとの違い。
- 3. トラウマフォーカスト認知行動療法やEMDRなど、PTSDに対する効果的な治療法では、安全な環境下で段階的にトラウマ体験に曝露(想起)し、処理を進めることが不可欠です。完全に想起を避け続けるだけでは、症状の改善は困難です。正しくは:安全が確保された治療的環境下で、段階的にトラウマ体験に向き合い、処理を促す支援を行う。選びやすい理由:フラッシュバックや再体験の苦痛を軽減したいという善意から、トラウマ想起を避けたいと考える。混同注意:急性期の心的外傷直後の過剰な刺激からの保護と、慢性期の治療における段階的なトラウマ処理との違い。
- 4. 集中力を要する作業は、解離症状や過覚醒状態にあるPTSD患者にとって、かえって負担やストレスを増大させる可能性があります。まずは落ち着いて安全を感じられる環境を整え、心身のリラックスを促すことが優先されます。正しくは:患者のストレスレベルや状態に応じて、安全で落ち着ける環境を提供し、リラクセーションやグラウンディングなどの安定化スキルを支援する。選びやすい理由:気分転換や注意の転換によって症状が緩和されることがあるため、集中を促す作業が有効だと誤解する。混同注意:他の精神疾患における作業療法の効果と、PTSDの急性期・不安定期における介入の優先順位。
- 5. フラッシュバックは突然起こり、非常に強い苦痛を伴い、持続することもあります。安易に「すぐに収まる」と説明することは、患者の体験を軽視し、信頼関係を損ねる可能性があります。重要なのは、フラッシュバックが起きた際の対処法(グラウンディングなど)を共に学び、患者自身がコントロール感を得られるよう支援することです。正しくは:フラッシュバックのメカニズムを説明し、発現時の対処法(例:グラウンディング、安全な場所への移動など)を具体的に指導し、患者がコントロール感を獲得できるよう支援する。選びやすい理由:患者を安心させたいという気持ちから、楽観的な見通しを伝えたくなる。混同注意:症状の経過に関する一般的な情報と、個々の患者の苦痛に対する共感的な理解と具体的な対処法の指導。
国試ポイント
PTSDの治療原則と、特に認知行動療法の主要な技法に関する理解が問われています。単に症状を避けるのではなく、安全な環境下で症状に向き合い、認知を修正していく治療的介入の重要性を理解しているかを確認する問題です。
混同注意
PTSDの治療における「回避」の是正と、感情の調整や安定化のための「対処法」の指導、およびトラウマ曝露療法の概念が混同されやすいです。治療初期の安定化と、その後のトラウマ処理の段階的アプローチを区別して理解することが重要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合、PTSD治療における段階的アプローチ(安定化→トラウマ処理→再統合)の各段階でどのような支援が適切か、また具体的な治療技法(認知再構成、曝露療法、グラウンディングなど)の目的と適用を理解しているかを問われる可能性があります。
関連知識
認知行動療法(CBT)、曝露療法、EMDR、Somatic Experiencing(SE)、グラウンディング、安全基地、精神科作業療法の役割(安定化、セルフケア、社会参加支援など)。DSM-5におけるPTSDの診断基準も関連知識です。