神経性無食欲症患者の入院治療について正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
神経性無食欲症の入院治療では、まず生命に関わる身体的合併症の管理と体重回復が最優先されます。低体重状態での過度な運動は心臓への負担を増大させるリスクがあるため、活動量は目標体重に達するまで制限し、体重が回復してから段階的に増加させることが重要です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。神経性無食欲症患者は低体重状態にあるため、過度な運動は身体に負担をかけ、心血管系へのリスクを高める可能性があります。まずは体重回復を優先し、目標体重に達してから段階的に活動量を増やすことが安全で効果的な治療です。
- 2. 初期からの急激な高カロリー摂取は「再摂食症候群(Refeeding Syndrome)」のリスクを高めます。これは、長期の低栄養状態にある身体に急に栄養が供給されることで、電解質異常(特に低リン血症)や心不全などを引き起こす重篤な合併症です。正しくは:治療初期は少量からの栄養補給を開始し、身体の状態を慎重に観察しながら徐々にカロリーを増やしていくべきです。選びやすい理由:栄養状態が悪いのだから、早くたくさん栄養を摂らせるべきだと考えがちですが、身体の適応能力を超えた急速な栄養補給は危険を伴います。混同注意:単なる低栄養状態への栄養補給と、神経性無食欲症の再摂食症候群のリスクを混同しやすいです。
- 3. 神経性無食欲症の患者では、重度の低体重や電解質異常など、命に関わる全身状態の不安定さが見られることがあります。これらの生命維持に関わる問題が安定していない段階で、心理的な介入や行動療法を行うのは危険であり、効果も期待できません。正しくは:まず全身状態の安定化(例:体重回復、電解質異常の是正)を最優先し、その上で安全が確保されてから行動療法や心理療法を進めるのが原則です。選びやすい理由:行動の異常が問題の中心であるため、早期から行動療法を行うのが効果的だと誤解しやすいです。混同注意:重症度が高い患者への初期対応と、病気の長期的な治療アプローチを混同しやすいです。
- 4. 神経性無食欲症の治療は長期にわたることが多く、食行動の問題が完全に解決するまで入院を継続するのは非現実的です。入院は主に身体状態の回復と危機的な状況の回避を目的とし、退院後は外来治療や社会生活での適応をサポートする段階へと移行します。正しくは:入院は全身状態の安定化と、ある程度の体重回復が達成され、自宅での管理が可能になった段階で検討されるべきです。食行動の問題改善は退院後も継続的な支援が必要です。選びやすい理由:問題が完全に解決してから退院させるのが理想的だと考えがちですが、現実的な治療期間や社会復帰の視点が欠けています。混同注意:急性期の入院治療の目的と、慢性的な疾患管理の目的を混同しやすいです。
- 5. 入院中に自己誘発性嘔吐が見られた場合、それは患者がまだ病的な行動から脱却できていないサインであり、治療介入がさらに必要であることを示しています。このような状況で退院させることは、患者を危険に晒し、治療を中断することになります。正しくは:自己誘発性嘔吐が見られた場合は、その行動の背景にある心理的な要因を探り、より集中的な心理療法や行動療法、厳重な監督体制の強化など、治療計画を見直す必要があります。選びやすい理由:問題行動への罰として退院させるべきだと考える人もいるかもしれませんが、それは治療的なアプローチではありません。混同注意:問題行動への懲罰的対応と、疾患に対する治療的介入を混同しやすいです。
国試ポイント
神経性無食欲症の入院治療における、身体的側面と精神的側面の介入順序、および緊急時の対応について問われています。特に、再摂食症候群のリスク管理、全身状態の安定化の優先順位、および治療の長期的な見通しを理解しているかが試されます。
混同注意
再摂食症候群のリスクを考慮せずに、早期に高カロリー摂取が必要だと誤解すること。また、食行動の問題が根本原因であるため、全身状態が不安定でも早期から行動療法を優先すべきだと誤解すること。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合は、再摂食症候群の具体的な症状や検査値の変化、あるいは全身状態安定化のための具体的な介入方法(例:点滴の種類、モニター項目)について問われる可能性があります。
関連知識
再摂食症候群の病態生理と予防、神経性無食欲症の身体合併症、摂食障害の段階的治療アプローチ(入院期、外来期)、行動療法や認知行動療法の原則。