51歳の男性。境界性パーソナリティ障害。見捨てられ不安が強く、職場や家庭での対人関係が不安定であった。ストレスが強くなると自傷行為や暴力行為を繰り返し、ストレスが軽減すると精神科デイケアに安定して通所した。母親がデイケア担当の作業療法士に患者対応のアドバイスを求めた。母親への助言・指導で適切でないのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
境界性パーソナリティ障害を持つ患者の自傷行為や暴力行為に対する家族への助言として、家族に「常時監視」を求めることは不適切です。これは家族に過大な負担を課し、家族自身の生活を破綻させる危険性があります。また、患者の自律性を阻害し、かえって関係悪化を招く可能性もあります。自傷行為や暴力行為への対応は、安全計画の策定、危険物の管理、冷静な対応、専門機関との連携、家族自身の安全確保が重要であり、持続可能な支援方法を模索すべきです。
選択肢ごとの解説
- 1. 家族会への参加は、同じような経験を持つ家族との交流を通じて、精神的な支えを得たり、病気への理解を深めたりする上で非常に有効な手段です。孤立感の解消や対処スキルの向上に繋がります。
- 2. 境界性パーソナリティ障害の患者の家族は、精神的・身体的な負担が大きくなりがちです。家族が自身の休息や趣味の時間を確保することは、燃え尽き症候群を予防し、長期的に患者を支え続けるために不可欠な自己ケアとなります。
- 3. 境界性パーソナリティ障害の患者は、感情の起伏が激しく、対人関係において操作的になったり、激しい感情をぶつけてきたりすることがあります。家族がその言動に一喜一憂せず、冷静かつ一貫した態度で接することは、患者の感情の安定化を促し、家族自身の感情的な負担を軽減するために重要です。
- 4. 正解。自傷行為の予防は重要ですが、家族が24時間体制で患者を常時監視することは、現実的ではありませんし、家族自身の生活が破綻する原因にもなります。また、患者にとっても過度な監視は自律性の侵害となり、関係悪化や反発を招く可能性があります。自傷行為のリスク管理は、患者との話し合いによる安全計画の策定、専門機関との連携、環境調整などが中心となります。正しくは:自傷行為のリスクが高い場合は、具体的な安全計画(例:危険物の管理、信頼できる相手への相談、専門機関への連絡方法)を一緒に考えることや、必要に応じて専門家の支援を求めることを助言する。選びやすい理由:患者の安全を願う家族にとって、「監視」は一見、最も確実な予防策に見えるかもしれません。自傷行為への強い不安から、そのような指示を求めている、あるいは受け入れてしまう可能性があるため、選択肢として魅力的と感じる可能性があります。混同注意:急性期の入院環境での厳重な監視・保護と、地域生活における家族による長期的な支援とを混同している可能性があります。後者では、あくまで患者の自立性を尊重し、家族の負担を考慮した持続可能な支援が求められます。
- 5. 家族の安全確保は最優先事項です。患者による暴力行為が発生した場合、まずは自分自身の身の安全を守るために、一時的にその場を離れる、安全な場所に避難するといった行動は非常に重要かつ適切な助言です。これは、患者への怒りや見捨てるといった意図ではなく、あくまで自己防衛の行動であることを理解させることも大切です。
国試ポイント
境界性パーソナリティ障害の患者に対する家族支援について、作業療法士としてどのような助言が適切であるか、また不適切であるかを問う問題です。病気の特性(見捨てられ不安、自傷行為、暴力行為、感情の不安定さ)を理解した上で、家族の負担軽減、家族自身の健康維持、安全確保、そして患者の自立性尊重のバランスを考慮した支援が求められる点を問われています。
混同注意
自傷行為への危機介入(例:急性期の病院での厳重な観察)と、長期的な家庭での支援におけるリスク管理(例:安全計画、家族自身の安全確保)を混同しやすいです。家族への過度な負担を強いる指示は、現実的でなく不適切であると判断する必要があります。
次に同じ論点が出たら
次に類似した問題が出た場合、境界性パーソナリティ障害の家族支援において、以下の点を注意深く判断する必要があります。1. 家族の負担を考慮しているか。2. 患者の自律性を尊重しているか。3. 家族自身の安全が確保されているか。4. 現実的で持続可能な支援策であるか。5. 専門的な介入が必要な場面で適切に連携を促しているか。
関連知識
境界性パーソナリティ障害の症状特性(感情調節不全、衝動性、自傷行為、見捨てられ不安、不安定な対人関係、同一性拡散)、家族支援の重要性(家族会、心理教育、コモンセンスアプローチ、自己ケアの促進)、作業療法士の役割(生活支援、対人関係スキルの向上支援、環境調整、安全管理)。