70歳の男性。統合失調症。数回の入院歴があるが、精神科デイケアを利用しながら独居生活を継続していた。半年前に脳梗塞を発症し、軽度の右片麻痺を呈した。最近、体力低下が原因でデイケアへの通所回数が減り、「家事ができなくなった」と訴えた。今後、独居生活が困難になることが予想された。現時点で、精神科デイケアの担当作業療法士が優先して検討すべきものはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
70歳の統合失調症患者が、脳梗塞による軽度右片麻痺と体力低下により家事遂行能力が低下し、一人暮らしが困難になることが予測されています。この状況では、身体機能の低下が生活困難の主な要因であるため、高齢者の生活支援を目的とした介護保険サービスの利用を最優先で検討すべきです。介護保険サービスは、要介護認定を受けることで、訪問介護や通所リハビリテーションなど、生活機能の維持・向上に直結する具体的なサービスを利用できます。精神科デイケアの作業療法士は、患者の生活全体を支援する視点から、適切な社会資源の活用を推進する役割を担います。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者様の精神状態は安定しており、デイケアに通所していることから、精神症状の悪化が主たる問題ではありません。また、身体機能の低下と家事困難が主な訴えであるため、精神科病院への入院は、現状の課題解決として優先度が低いと判断されます。正しくは:精神症状の急激な悪化や、身体合併症が悪化し在宅での管理が困難な場合、生命の危険がある場合などに検討されます。選びやすい理由:統合失調症の患者様であり、過去に入院歴があるため、生活困難が生じると入院が必要だと考えてしまいがちです。混同注意:精神症状の安定維持のための入院と、生活機能低下による地域生活支援の必要性の判断を混同しやすいです。
- 2. 正解。70歳であり、脳梗塞による軽度の右片麻痺と体力低下が見られるため、介護保険の要介護認定の対象となる可能性が高いです。一人暮らしでの家事困難や生活機能の低下に対して、訪問介護(家事援助、身体介護)、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションなどの介護保険サービスは、生活の継続を直接的に支援する有効な手段であり、OTとして優先的に検討すべき社会資源です。
- 3. 同行援護は、視覚障害により移動が困難な方に対して、外出時の移動支援を提供するサービスです。この患者様は脳梗塞による片麻痺と体力低下が問題であり、視覚障害は示唆されていません。そのため、現在の問題解決には繋がりません。正しくは:視覚障害によって屋外での移動に困難を抱えている場合に利用を検討します。選びやすい理由:障害福祉サービスの一つとして、一般的な知識として知っている場合、選択肢として考えてしまう可能性があります。混同注意:障害福祉サービス全般と、それぞれのサービスの具体的な対象や内容を混同しやすいです。
- 4. 患者様は統合失調症であり、認知症であるとの記載はありません。また、問題の根源は身体機能低下とそれに伴う家事困難です。重度認知症患者デイケアは、認知症の中核症状や行動・心理症状が著しい方を主な対象とするため、現在の患者様の状態には合致しません。正しくは:重度の認知症と診断され、それによる生活上の困難や介護負担の増大がある場合に検討します。選びやすい理由:高齢者向けのデイケアサービスの一種であるため、高齢の患者様にとって良い選択肢だと誤解してしまう可能性があります。混同注意:統合失調症と認知症、一般的な精神科デイケアと専門的な重度認知症患者デイケアの対象を混同しやすいです。
- 5. 障害者地域生活支援センターは、地域で生活する障害者の方々への相談支援を提供する重要な機関です。しかし、「見学」という行為は、現状の「家事ができない」「一人暮らしが困難になる」という具体的な問題に対する直接的かつ優先的な解決策とは言えません。まずは具体的なサービスの導入検討(介護保険申請など)が先行すべきです。正しくは:介護保険サービスの利用検討や申請手続きに関して、情報収集や相談が必要な場合に利用を検討します。しかし、まずは直接的なサービス利用へのアクションが優先されます。選びやすい理由:統合失調症という精神障害を抱えているため、障害者向けの相談機関が支援の選択肢として正しく見える可能性があります。混同注意:相談機関の役割と、具体的なサービス提供機関や制度活用の優先順位を混同しやすいです。
国試ポイント
本問題は、精神疾患を抱える高齢患者が身体合併症を呈し、地域生活の継続に困難が生じた際に、作業療法士が多角的な視点から適切な社会資源(特に介護保険制度)を判断し、優先的に活用を検討できるかを問うています。特に、年齢、疾患(精神・身体)、生活状況(独居)、訴え(家事困難、体力低下)といった複数の情報を統合し、最も効果的かつ現実的な支援策を選択する臨床推論能力が試されます。
混同注意
精神疾患があるため、安易に精神科関連のサービス(再入院、精神科相談機関)を選びがちですが、本ケースでは身体機能低下による生活困難が主訴であり、介護保険サービスの利用が最も直接的な解決策です。また、他の障害福祉サービスや認知症関連サービスとの混同にも注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題に遭遇した際は、患者の『年齢』『主たる訴えや困りごと』『既往歴や現在の疾患状況(精神・身体)』『生活環境(独居など)』を総合的に評価し、それに最も合致する具体的な支援制度やサービスを優先的に選択する視点が重要です。特に『高齢』と『身体機能低下』がキーワードであれば、介護保険の活用が第一候補となることが多いでしょう。
関連知識
介護保険制度(対象者、サービス内容、申請プロセス)、障害者総合支援法(各種サービス内容、同行援護など)、精神保健福祉法、高齢者の身体機能評価(ADL/IADL)、地域連携(ケアマネジャーとの協働など)。