30歳の男性。右利き。交通事故による右前頭葉背外側部の頭部外傷で大学病院に入院。全身状態が安定したため、回復期リハビリテーション病院に転院となった。転院後もリハビリテーション治療が継続され、現在5か月が経過した。運動障害や感覚障害を認めず、歩行は自立している。しかし、日中はボーッとして過ごし、促されないと行動に移せない。会話は成立するが、自発性に乏しい。 この患者の高次脳機能評価として最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
症例は右前頭葉背外側部の頭部外傷後、日中の無気力、行動の自発性低下、会話の自発性低下を認めており、これらは遂行機能障害の典型的な症状である。BADS(遂行機能障害症候群の行動評価)は、遂行機能障害を評価するためのバッテリーであり、まさに本症例の症状に合致する評価法であるため、最も適切である。
選択肢ごとの解説
- 1. CBS(行動性無視尺度)は半側空間無視の評価尺度であり、本症例の自発性低下とは直接関連がないため不適切である。正しくは:半側空間無視を評価する際に用いる。選びやすい理由:高次脳機能障害の評価尺度である点で選択肢として挙がりやすいが、症状が異なる。混同注意:他の高次脳機能障害の評価尺度
- 2. 正解。BADS(遂行機能障害症候群の行動評価)は、遂行機能障害、特に計画立案、問題解決、行動の切り替えといった前頭葉機能の評価に特化している。本症例の「促されないと行動に移せない」「自発性に乏しい」といった症状は典型的な遂行機能障害であり、この評価法が最も適切である。選びやすい理由:症例の症状と評価の目的が一致するため。混同注意:WAISなどの一般的な認知機能検査
- 3. SLTA(標準失語症検査)は失語症の評価バッテリーであり、本症例では「会話は成立するが、自発性に乏しい」とあり失語症を明確に示唆する所見ではないため不適切である。正しくは:失語症が疑われる患者の言語機能を評価する際に用いる。選びやすい理由:会話の自発性低下という点から言語障害と混同しやすいが、失語症の症状とは異なる。混同注意:言語機能の全般的な問題
- 4. SPTA(標準高次視知覚検査)は視空間認知障害の評価尺度であり、本症例の自発性低下や遂行機能障害とは直接関連がないため不適切である。正しくは:視空間認知障害が疑われる患者の知覚機能を評価する際に用いる。選びやすい理由:高次脳機能障害の評価尺度である点で選択肢として挙がりやすいが、症状が異なる。混同注意:他の高次脳機能障害の評価尺度
- 5. VPTA(標準高次視覚認知検査)は視覚性認知障害の評価尺度であり、本症例の自発性低下や遂行機能障害とは直接関連がないため不適切である。正しくは:視覚性認知障害が疑われる患者の認知機能を評価する際に用いる。選びやすい理由:高次脳機能障害の評価尺度である点で選択肢として挙がりやすいが、症状が異なる。混同注意:他の高次脳機能障害の評価尺度
国試ポイント
前頭葉損傷による高次脳機能障害、特に遂行機能障害とその評価バッテリーについて理解する。
混同注意
前頭葉損傷に伴う症状は多岐にわたるため、単なる意欲低下やうつ病との鑑別、また他の高次脳機能障害(失語症、半側空間無視など)との区別が重要である。
次に同じ論点が出たら
前頭葉損傷の既往があり、かつ自発性低下、計画性低下、行動の切り替えの困難などの症状がある場合に、遂行機能障害の評価バッテリーであるBADSを第一に検討する。
関連知識
前頭葉は遂行機能(計画、目標設定、実行、問題解決、行動の抑制など)を司る重要な部位である。遂行機能障害の症状として、自発性低下、注意転換の困難、行動の固執、計画性の欠如などが挙げられる。BADSのサブテストには規則変換、行為の計画、遂行課題などがある。