80歳の女性。右変形性股関節症に対し人工股関節置換術(後方アプローチ)が施行された。現在、術後2週が経過し、患肢全荷重が許可されている。この患者に対するADL指導として最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
人工股関節置換術(後方アプローチ)後の脱臼肢位は、股関節の屈曲90度以上、内転、内旋です。選択肢1、2、3、4はいずれもこれらの脱臼肢位を誘発する可能性のある不適切な動作です。一方、選択肢5の「階段を降りるときは右足(患側)を先に下ろす」は、術後全荷重が許可されている状況において、患側への負担を分散させ、安全に階段を昇降するための適切な指導です。階段を降りる際は、患側を先に下ろすことで、健側が体重を支えながらゆっくりと患側を下ろすことができ、患側への急激な荷重を避けることができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 股関節の後方アプローチ術後には、股関節の過度な屈曲、内転、内旋は脱臼のリスクを高めるため禁忌とされます。割り座は股関節の過屈曲と内旋を伴うため不適切です。正しくは:長柄の自助具を使用するか、麻痺側を前に出して座位で靴下を履くなどの工夫が必要です。選びやすい理由:一般的な人がよく行う動作であり、一見すると大きな問題がないように見えるかもしれませんが、術後のリスクを考慮する必要があります。混同注意:術後の動作制限について十分に理解していないと、日常生活における一般的な動作と混同しやすいです。
- 2. 椅子座位から床の物を拾う動作は、体幹を深く前傾させ、股関節を90度以上に屈曲させる可能性があり、後方アプローチ術後の脱臼肢位につながるため不適切です。正しくは:長柄の自助具を使用するか、介助を求めるのが適切です。選びやすい理由:椅子に座っているので安全だと考えがちですが、股関節の屈曲角度が重要であることを見落としやすいです。混同注意:座位であれば安全という誤解と、股関節の屈曲制限の具体的な角度に対する理解不足と混同しやすいです。
- 3. 体育座りは股関節の過度な屈曲、内転、内旋の複合運動となるため、後方アプローチ術後の脱臼肢位に該当し、極めて危険な動作です。正しくは:床に直接座ることは避け、ベッドや椅子に座るか、座る場合は股関節の脱臼肢位を避ける必要があります。選びやすい理由:床に座る姿勢として一般的であり、問題意識を持ちにくいかもしれませんが、人工股関節の安定性には特に注意が必要です。混同注意:一般的な座位姿勢と、人工股関節術後の脱臼肢位の知識が混同しやすいです。
- 4. 足を組む動作は、手術した側の股関節を内転、内旋させることになり、後方アプローチ術後の脱臼肢位に該当するため不適切です。正しくは:足を組まず、両足を床につけるか、クッションを挟んで外転位を保つなどの指導が適切です。選びやすい理由:一般的な座位姿勢であり、無意識に行いがちな動作ですが、術後の股関節にかかる負担を考慮する必要があります。混同注意:一般的な座位姿勢と、人工股関節術後の股関節の安定性の概念が混同しやすいです。
- 5. 正解。階段を下りる際、まず健側(手術していない側)を下ろし、その後に患側(手術した側)を下ろすと、患側に負担が集中します。しかし、この患者さんは全荷重が許可されており、階段を下りる際は患肢を先行させることで、患側への荷重を制御しやすく、転倒のリスクを減らしつつ、より安全に降りることができます。階段を上がる際は健側から、下りる際は患側からが原則です。正しくは:この選択肢は正しい指導です。選びやすい理由:健側から先に下ろすのが一般的だという誤解から、間違っていると判断しそうになりますが、人工股関節術後の荷重状況と安全性を考慮すると、この選択肢が適切です。混同注意:術後早期の免荷期間における階段昇降方法(上がる:健側から、下りる:患側から)と、全荷重許可後の原則(一般的に上がる:健側から、下りる:患側から)の理解が混同しやすいですが、ここでは全荷重許可後であるため、患肢から下ろすことで負担を分散させる意味合いが強いです。
国試ポイント
人工股関節置換術(特に後方アプローチ)後の脱臼予防のための具体的なADL指導と、階段昇降の原則(荷重条件によって異なること)を正確に理解しているかが問われます。術後の時期や荷重条件によって適切な動作が異なる点に注意が必要です。
混同注意
術直後の免荷期と全荷重許可後のADL指導、および前方アプローチと後方アプローチでの脱臼肢位の違い。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず手術アプローチ(前方/後方)を確認し、次に術後の経過日数や荷重条件(免荷/部分荷重/全荷重)を確認することが重要です。それらに基づいて、具体的なADL動作が脱臼肢位に該当しないか、または機能的かつ安全な動作であるかを判断します。
関連知識
人工股関節置換術の術式(前方、側方、後方アプローチ)ごとの脱臼肢位の理解。杖歩行や階段昇降における荷重方法の原則。ADL指導における自助具の活用。