78歳の女性。脳梗塞による左片麻痺。身長160 cm。発症後7か月経過。便座上座位保持時、立ち上がり時および立位保持時には手すりが必要で、下衣着脱は手すりに右肩を当てて行う。トイレに図のようなL型手すりを設置する。設置位置の寸法で適切なのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
L型手すりの設置は、便座からの高さ(a)、L字部分の垂直手すりの長さ(b)、壁から水平手すり先端までの長さ(c)のバランスが重要です。一般的に、便座からの手すりの高さは便座面から25~30cm上が適切とされ、本ケースでは65cm(便座高を40cmと仮定した場合)が妥当です。L字部分の垂直手すりの長さは、立ち上がり動作の際に掴みやすく、かつ身体の重心移動を妨げない25~30cmが適切です。水平手すりの長さは、便器先端から15~20cm前までが基本ですが、本ケースでは下衣着脱で右肩を当てて行うという情報があり、さらに身体の安定を考慮すると、壁からの総延長が150cm程度あると十分な支持面を提供できます。選択肢3がこれらの条件を最も満たしています。
選択肢ごとの解説
- 1. これらの寸法は、標準的な設置基準や個人の身体状況(身長160cm、片麻痺)に合致しません。特に、便座からの手すりの高さ(a)が低すぎ、L字部分の垂直手すりの長さ(b)が長すぎ、水平手すりの先端までの長さ(c)も短すぎる可能性があります。正しくは:aは65-75cm程度、bは25-30cm程度、cは70-80cm程度が一般的です。選びやすい理由:具体的な数値が提示されているため、知識があいまいな場合に適当に選んでしまうかもしれません。混同注意:手すりの設置に関する一般的な推奨寸法と混同する可能性があります。
- 2. a(便座からの高さ)は適切ですが、b(L字部分の垂直手すりの長さ)が長すぎます。垂直手すりは立ち上がり動作の支えとなるため、長すぎるとかえって使いにくくなります。c(水平手すりの先端までの長さ)も長すぎる可能性があります。正しくは:bは25-30cm程度が適切です。cは70-80cm程度が一般的です。選びやすい理由:aの値が適切な範囲であるため、他の値も正しいと誤解する可能性があります。混同注意:特にbの垂直手すりの長さに関して、長い方が掴みやすいと誤解する可能性がありますが、適切な位置にないと身体の重心移動を妨げます。
- 3. 正解。a:65cmは便座から手すりの高さとして一般的に推奨される範囲(便座から25~30cm上)であり、身長160cmの女性にとって適切です。b:25cmはL字手すりの垂直部分の長さとして適切であり、立ち上がり動作の際に安定して身体を支えることができます。c:150cmは壁からの手すり先端までの長さであり、水平手すりの適切な長さ(通常は便器先端より15~20cm程度前まで)と、右肩を当てて着脱する動作を考慮すると、適切な長さと言えます。正しくは:この選択肢は正しいです。選びやすい理由:ありません。この選択肢が最も適切な組み合わせです。混同注意:ありません。
- 4. a(便座からの高さ)が80cmだと高すぎて、身長160cmの女性が立ち上がる際に力を入れにくくなります。b(L字部分の垂直手すりの長さ)も長すぎます。正しくは:aは65-75cm程度が適切です。bは25-30cm程度が適切です。選びやすい理由:数字が全体的に大きいため、ゆとりがあるように感じて選びやすいかもしれませんが、高すぎたり長すぎたりすると使いにくくなります。混同注意:手すりの高さや長さに関する一般的な推奨値と、個人の身体状況への適合性に関する知識が混同されやすいです。
- 5. a(便座からの高さ)が80cmだと高すぎて、身長160cmの女性が利用するには不便です。b(L字部分の垂直手すりの長さ)は適切ですが、c(水平手すりの先端までの長さ)が、下衣着脱の際に右肩を当てて行うことを考慮すると、短すぎる可能性があります。正しくは:aは65-75cm程度が適切です。cは140-150cm程度が適切です。選びやすい理由:bの値が適切であるため、他の値も正しいと誤解する可能性があります。混同注意:手すりの高さの推奨値と混同しやすいです。また、水平手すりの長さが短すぎると、必要な動作範囲をカバーできないことを認識しにくいかもしれません。
国試ポイント
この問題は、L型手すりの寸法に関する一般的なガイドラインと、個別の患者の身体状況(身長、片麻痺の種類、具体的な動作様式)を考慮した適切な福祉用具の選定・設置能力を問うものです。特に、立ち上がりや着衣動作に必要な手すりの高さ、長さ、位置関係を理解しているかが重要になります。
混同注意
手すりの一般的な設置基準を機械的に覚えるだけでなく、患者の身体寸法や具体的な使用方法(例:右肩を当てて着脱する)を考慮して微調整する視点が抜けていると、誤った選択肢を選んでしまう可能性があります。特に、手すりの高さや長さは、患者の身長や残存能力によって最適な値が変わるため、一律の基準だけでは対応できません。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず患者の身長と麻痺側、具体的な動作の困難さ(例:立ち上がり、着脱時の不安定性)を把握します。次に、手すりの種類(I型、L型など)と、その手すりがどの動作を補助するために設置されるのかを確認します。そして、それぞれの動作に適した手すりの高さ、長さ、壁からの距離に関する一般的な推奨値を思い出し、患者の個別状況に合わせて調整できるかを判断します。
関連知識
手すりの設置基準(JIS規格、高齢者向け住宅改修ガイドライン)、身体寸法(座位高、上肢リーチ)、片麻痺患者の動作分析(立ち上がり動作、着衣動作における重心移動と支持基底面)、福祉用具の選定と適合。