「893」のような数字の組を口頭で提示し、提示した数を小さい順に答えさせようとしたところ、順番を間違ったり回答できないことがみられた。この患者の症状として考えられるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
ワーキングメモリとは、情報を一時的に記憶(保持)しながら、その情報を活用して別の作業を行う(処理)能力を指します。この課題では、口頭で提示された数字を一時的に保持し、それを小さい順に並べ替えるという操作が必要とされます。数字の順番を間違えたり回答できなかったりする症状は、このワーキングメモリの機能低下を示唆しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 見当識障害は、時間、場所、人物などの基本的な情報が認識できない状態を指します。数字の記憶や並べ替えの困難とは直接関連しません。正しくは:見当識障害は、日付、曜日、場所、人物などの基本的な自己認識や状況認識の能力の障害です。選びやすい理由:認知症の中核症状の一つであり、認知機能全体の低下と混同して選んでしまう可能性があります。混同注意:記憶障害全般と混同されることがありますが、見当識障害は特に時間や場所など特定の内容に関する記憶・認識の障害です。
- 2. 意味記憶は、一般的な知識や概念、単語の意味などに関する記憶です。提示された数字の短期的な保持と操作の困難は、意味記憶の障害ではありません。正しくは:意味記憶障害は、言葉の意味、一般的な事実、概念などの知識の記憶に困難が生じる状態を指します。選びやすい理由:記憶障害の一種であるため、数字を覚えられないという点で関連があるように感じるかもしれませんが、短期的な情報を一時的に保持・操作する能力とは異なります。混同注意:エピソード記憶(個人的な出来事の記憶)や手続き記憶(自転車の乗り方などの技能)と混同されることがあります。この問題は短期的な数字の保持と操作であり、意味記憶とは性質が異なります。
- 3. 言語流暢性障害は、言葉をスムーズに発したり、適切な言葉を見つけたりする能力の障害です。提示された数字の記憶や並べ替えの困難とは直接関係ありません。正しくは:言語流暢性障害は、話すスピード、言葉の選択、文章構成など、言語表現の滑らかさや豊かさに問題が生じる状態を指します。選びやすい理由:回答できないという点から、言葉を発すること自体に困難があるように見えるかもしれませんが、本質的な課題は数字の処理能力にあります。混同注意:失語症全般と混同されることがありますが、言語流暢性障害はその一部であり、構音障害や発話失行とも区別されます。
- 4. 巧緻運動機能障害は、指先などの細かい動きや協調運動に問題が生じる状態です。口頭での数字の記憶と並べ替えの課題は、身体的な運動能力とは無関係です。正しくは:巧緻運動機能障害は、手先を使った細かい動作や器用さに困難が生じる状態を指します。選びやすい理由:集中力や遂行機能が低下すると、他の活動にも影響が出ると考えられるかもしれませんが、この問題は純粋に認知機能の問題です。混同注意:広汎性発達障害や脳性麻痺、脳損傷など、様々な疾患で見られる症状ですが、この問題の状況では無関係です。
- 5. 正解。ワーキングメモリ(作業記憶)は、情報を一時的に保持し、同時にその情報を操作・処理する能力です。この課題では、提示された数字を一時的に記憶し(保持)、さらに小さい順に並べ替える(操作・処理)必要があるため、ワーキングメモリの機能が不可欠です。順番を間違えたり回答できないのは、まさにワーキングメモリの障害を示唆しています。
国試ポイント
ワーキングメモリの定義とその具体的な課題例(例:暗算、文章読解、会話内容の理解と応答、数字の逆唱や操作など)を理解しているかが問われます。他の記憶機能(短期記憶、長期記憶、エピソード記憶、意味記憶、手続き記憶など)との違いを明確に区別できることが重要です。
混同注意
短期記憶(情報を一時的に保持する機能のみ)と混同しやすいですが、ワーキングメモリは「保持」に加え「操作・処理」が含まれる点で異なります。この問題のように「並べ替え」という処理が加わる場合は、ワーキングメモリの範疇となります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が問われる場合は、ワーキングメモリの評価方法(例:数字の逆唱、視空間スパン課題)や、日常生活での具体的な影響(例:複数の指示を同時にこなせない、読み書きの困難)について問われる可能性があります。また、ワーキングメモリを構成する要素(音韻ループ、視空間スケッチパッド、中央実行系など)に関する詳細な知識も問われるかもしれません。
関連知識
ワーキングメモリは高次脳機能の一つであり、前頭前野が主要な役割を担います。ADHD(注意欠陥・多動性障害)、学習障害、脳損傷(特に前頭葉損傷)、認知症など、様々な神経発達症や神経変性疾患において機能障害が見られます。臨床場面では、数字の順唱・逆唱、視空間スパン課題、Nバック課題などで評価されます。