認知症患者の周囲を困らせる行動への対応で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
認知症患者の困惑行動(BPSD: Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)は、患者本人の意思や性格からくるものではなく、認知症による脳機能の変化や、それに伴う環境への不適応、身体的・精神的な不快感、欲求不満などが原因で生じます。したがって、行動そのものを非難したり抑制したりするのではなく、行動の背景にある原因を多角的にアセスメントし、その原因を取り除くための介入や環境調整を行うことが最も重要です。行動のパターンを詳細に観察することは、原因特定のための第一歩となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 認知症患者の困惑行動は、不安や混乱、何らかの欲求が背景にあることが多く、すぐに制止しても根本的な解決にはなりません。かえって患者を興奮させたり、反発を招いたりする可能性があります。正しくは:まずは行動の背景にある原因を探り、共感的な姿勢で接しながら、状況に応じて穏やかに対応を検討します。選びやすい理由:すぐに止めれば問題が解決するように見えるため。混同注意:子どものいたずらや、意識的に行われる迷惑行為への対応と混同しやすい。
- 2. 認知症の症状により、論理的思考力や記憶力、判断力が低下しているため、理屈で説得しても理解することは困難です。不信感や混乱を招くだけで、効果的な対応とは言えません。正しくは:論理的な説明ではなく、感情に配慮した対応や、行動の原因を取り除く環境調整が重要です。選びやすい理由:一般的な対人関係の問題解決においては、論理的な話し合いが有効であるため。混同注意:認知症患者の症状を十分に理解していない場合、健常者への対応と同じアプローチを試みようとしてしまう。
- 3. 認知症患者が一人になることで、さらに不安や孤立感を深め、困惑行動が悪化する可能性があります。また、安全面のリスクも高まります。正しくは:適切に監視された環境下で、安心できる他者との交流や、楽しめる活動を提供することが重要です。選びやすい理由:他者とのトラブルを避けるために、一時的に一人にさせる方が良いと考えてしまうことがあるため。混同注意:刺激の多い環境を避けることと、社会的に孤立させることを混同しやすい。
- 4. 認知症患者にとって、環境の変化は大きなストレスとなり、混乱や不安を増大させ、困惑行動を悪化させる可能性が高いです。慣れない環境は適応を困難にします。正しくは:まずは現在の環境で、行動を誘発している要因がないかを確認し、可能な限り最小限の変更で対応を検討します。環境を変える必要がある場合でも、徐々に慣れるような配慮が必要です。選びやすい理由:環境を変えればすべて解決する、という考え方が背景にあるため。混同注意:環境要因の重要性は理解していても、安易な環境変化が逆効果になる点を理解しきれていない場合がある。
- 5. 正解。認知症患者の困惑行動には、必ず何らかの理由や背景(身体的不調、環境変化、コミュニケーションの困難、不安など)が存在します。行動のパターンを詳細に観察・分析することで、その原因を特定し、適切な介入方法や環境調整を導き出すことができます。これは問題解決の第一歩であり、最も効果的なアプローチです。
国試ポイント
認知症患者のBPSDに対する作業療法士の基本的なアプローチ(非薬物療法)に関する知識が問われています。特に、行動の背景にある原因を探るという視点の重要性がポイントです。
混同注意
表面的な行動の抑制や、健常者に対するような論理的な対応と混同しやすいですが、認知症の病態生理を理解した上での、個別性のある共感的なアプローチが求められます。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、BPSDの原因探求と、それに基づいた個別的な介入計画の立案(環境調整、コミュニケーション技法、活動内容の工夫など)に関する知識が問われると予想されます。また、介護者支援やチームアプローチの重要性も関連知識として重要です。
関連知識
BPSDの症状の種類(徘徊、せん妄、妄想、興奮など)、それらの原因となりうる因子(身体的要因、心理的要因、環境的要因、社会的要因)、非薬物療法の原則(パーソンセンタードケア、環境調整、コミュニケーション技術)、BPSDに対する各種アセスメントツール(例: NPI-Q)。