25歳の男性。頸髄完全損傷。手指屈曲拘縮以外の関節可動域制限はない。書字の際のボールペンを把持した場面(別冊No. 1)を別に示す。片手では困難で、両手でボールペンを保持する動作が観察された。このような動作を行う頸髄損傷患者のZancolliの四肢麻痺上肢機能分類の最上位レベルはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
画像では、両手を使ってボールペンを保持しようとしていますが、片手でペンを安定して把持できていない様子が確認できます。これは、手関節伸展筋群(C6)が部分的に機能するものの、指の屈筋群の随意運動が不十分であり、把持力が弱いために生じる現象です。Zancolliの分類C6Aは、手関節の伸展は可能だが指の把持力が十分でなく、通常は装具や補助具が必要となる状態を指します。
選択肢ごとの解説
- 1. C5Aは、肘屈曲(上腕二頭筋、腕橈骨筋)は可能ですが、手関節の伸展ができないレベルです。患者は字を書こうとしており、手関節が伸展しているため、この分類とは異なります。正しくは:C5Aは、肩関節の屈曲・外転、肘関節の屈曲は可能だが、手関節伸展ができない状態です。選びやすい理由:頸髄損傷のレベルが低いと誤解し、より重度の機能障害レベルを選んでしまう可能性があります。混同注意:C5レベルの脊髄損傷における上肢機能。
- 2. 正解。患者はボールペンを片手で保持することが難しく、両手を使って保持する動作が観察されており、手指の屈曲拘縮がある以外は関節の可動域に制限はありません。これは手関節の伸展は可能だが、指の屈曲力、特に把持力が不十分な状態です。Zancolli分類C6Aは、手関節の伸展(C6支配)は可能であるものの、指の屈筋群の随意運動が不十分で、つまみ動作や把持が困難な状態を指し、画像と症例の状況と一致します。選びやすい理由:Zancolli分類の各レベルの機能特徴を正確に把握していないと、他の選択肢と迷う可能性があります。混同注意:C6B1やC6B3など、C6レベルの他のサブタイプ。
- 3. C6B3は、手関節伸展に加え、手指の屈筋(深指屈筋、浅指屈筋)が部分的に機能し、ある程度のキー把持や円柱把持が可能となるレベルです。問題文の患者は「片手でボールペンを保持することが難しく、両手を使って保持する動作」とあり、把持力が不十分であるため、C6B3よりも重度と考えられます。正しくは:C6B3は、手関節伸展と併せて、ある程度の指の屈曲による把持が可能である状態です。選びやすい理由:C6レベルであることは合っているため、より細かい分類のB群を選んでしまう可能性があります。混同注意:C6レベルの把持機能の違い。
- 4. C7Aは、手関節の伸展と指の屈曲がある程度可能であり、補助具なしで物体をつかむことができるレベルです。問題文の患者は「片手でボールペンを保持することが難しく、両手を使って保持する」とあり、C7Aが示す機能より把持能力が劣るため、この分類とは異なります。正しくは:C7Aは、手関節伸展に加え、指の屈曲・伸展、親指の対立運動もある程度可能で、実用的な把持能力を持つ状態です。選びやすい理由:手関節伸展があるため、次のレベルであるC7を選んでしまう可能性があります。混同注意:C7レベルの脊髄損傷における上肢機能。
- 5. C8Bは、すべての指の屈筋と伸筋、親指の対立筋がほぼ正常に機能し、日常のほとんどの作業を自力で行えるレベルです。問題文の患者は「片手でボールペンを保持することが難しく、両手を使って保持する動作」とあり、このレベルの機能とは大きく異なります。正しくは:C8Bは、すべての手内在筋が機能し、巧緻性のある把持が可能で、日常生活動作に大きな支障がない状態です。選びやすい理由:機能が改善している可能性を期待して、より高いレベルを選んでしまう可能性があります。混同注意:C8レベルの脊髄損傷における上肢機能。
国試ポイント
Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類は、頸髄損傷患者の上肢機能を評価し、治療方針を決定する上で非常に重要です。特に、残存する筋肉の機能に基づいて分類されることを理解する必要があります。
混同注意
Zancolli分類は、ASIA機能障害尺度やFrankel分類といった他の脊髄損傷評価スケールと混同されやすいですが、Zancolli分類は特に上肢の機能、それも残存する筋力を基盤とした握り込み能力に焦点を当てています。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず問題文から患者の残存機能(特に手関節と手指の屈筋・伸筋)と、日常生活動作(ADL)での困難さを正確に把握します。画像があれば、その動作から把持の様式や安定性を評価し、Zancolli分類と照らし合わせて判断します。
関連知識
Zancolli分類は、頸髄損傷患者の上肢機能再建手術の適応を判断する際にも用いられます。特にC6レベルの損傷では、手関節伸筋が温存されるため、腱移行術などの手術により把持機能の改善が期待されます。C6Aは、手関節伸展は可能でも指の把持は難しく、一般的にキー把持(lateral pinch)は不可能で、補助具が必要となるレベルです。