境界性パーソナリティ障害患者の作業療法について正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
境界性パーソナリティ障害の患者は、自己肯定感が低く、失敗体験が多い傾向にあります。そのため、作業療法では、患者が「自分でできた」という成功体験を積み重ねることが重要です。自力で達成可能な作業を提供することで、自己効力感を高め、自信を育むことができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 境界性パーソナリティ障害の患者において、退行を許容することは症状の固定化や治療関係の不安定化を招く可能性があります。一時的な退行はある程度理解を示すものの、治療目標達成のためには適応的な行動へと導く介入が必要です。正しくは:退行的な行動に対しては、患者の感情を受け止めつつも、適応的な行動を促す方向で関わります。選びやすい理由:患者の感情を受け止めることが重要だと考えるため、退行も許容すべきだと誤解しやすいです。混同注意:共感と許容の区別。患者の感情に共感することは重要ですが、不適切な行動まで許容することは治療的ではありません。
- 2. 境界性パーソナリティ障害の患者に見られる逸脱行動(自傷行為、他害行為、物質乱用など)は、患者自身や他者に危険を及ぼす可能性があるため、静観するのではなく、介入して行動を制止し、背景にある感情や欲求を理解しようと努める必要があります。正しくは:逸脱行動が見られた場合は、安全を確保しつつ、明確な境界を設定し、その行動の背景にある感情を探索します。選びやすい理由:過剰な介入が患者を刺激すると考えて、静観が良いと誤解しやすいです。混同注意:患者の自律性を尊重することと、危険な行動を容認することの混同。危険な行動に対しては、治療者が積極的に介入し、安全を確保する責任があります。
- 3. 正解。境界性パーソナリティ障害の患者は自己肯定感が低く、失敗を恐れる傾向があります。自力で達成できる作業を通じて成功体験を積み重ねることで、自己効力感の向上、現実検討能力の強化、感情の安定化に繋がります。これは作業療法における重要な介入目標の一つです。選びやすい理由:達成感は多くの精神疾患で重要であるため、これが最も適切であると判断しやすいです。
- 4. 作業療法は、作業活動を通じて感情の表現、対人関係スキルの練習、問題解決能力の向上を図るものであり、言語的な関わりだけでなく非言語的な要素が重要です。特に境界性パーソナリティ障害では、言語化が困難な感情や衝動を作業活動を通して表現したり、行動を修正したりする機会が非常に有効です。正しくは:作業活動と言語的な関わりの両方を組み合わせ、作業を通じて得られた体験を言語化し振り返ることで、内省を深めます。選びやすい理由:精神科リハビリテーション全体で言語的な関わりが重要であるため、作業療法でもそれが中心だと誤解しやすいです。混同注意:精神療法(言語療法)と作業療法(活動療法)の役割。作業療法は活動を媒介とした治療であり、言語的な側面はその活動を補完するものです。
- 5. 境界性パーソナリティ障害の患者は、治療構造の境界を試す行動(splittingなど)を示すことがあります。治療者との信頼関係を築く上で、取り決め事項(ルール、時間、役割など)の一貫性を保つことは極めて重要です。安易な変更は、治療関係の不安定化や患者の操作行動を助長する恐れがあります。正しくは:取り決め事項については、一貫した態度で維持し、変更の必要性がある場合は、患者の要求の背景を十分に検討し、治療者間で合意した上で慎重に対応します。選びやすい理由:患者中心の医療という観点から、患者の要求に応えることが良いと誤解しやすいです。混同注意:患者の主体性を尊重することと、治療の構造を維持することのバランス。境界性パーソナリティ障害の治療においては、安定した構造が患者の安心感を育む上で不可欠です。
国試ポイント
境界性パーソナリティ障害の特性を理解し、その特性に合わせた作業療法介入の原則を問う問題です。特に、自己肯定感の低さや不安定な対人関係、衝動性といった特徴に対する治療的対応がポイントとなります。
混同注意
患者の感情を受容することと、不適切な行動や要求を容認することの区別。また、患者中心の医療と、治療構造の一貫性の重要性のバランス。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、境界性パーソナリティ障害患者の「自己肯定感の低さ」「衝動性」「対人関係の不安定さ」といった主要な特性に対して、作業療法がどのようにアプローチするかを問う選択肢に注目すると良いでしょう。特に、成功体験の提供、境界設定の一貫性、感情調整能力の育成がキーワードとなります。
関連知識
境界性パーソナリティ障害の診断基準(DSM-5)、精神力動的作業療法、弁証法的行動療法(DBT)の原則、治療的環境設定。