17歳の女子。高校2年生。高校入学時、身長158 cm、体重55 kgであったが、同級生に「太っている」と言われ、食事を制限して半年間に12 kgやせた。高校1年の秋ごろから月経が不順になり、半年前から無月経となった。このため無月経と体重減少とを主訴に入院治療が開始されたが各種検査を受けることに抵抗感が強い。母親は「もともと太ってなどいなかったと説得して欲しい」と希望する。作業療法士の患者に対する治療的態度として適切なのはどれか。2つ選べ。
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出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3・5番
解説
摂食障害の患者さんへの対応では、まず受容的な態度で信頼関係を構築し、患者さん自身の考えや感情を理解することが重要です(選択肢3)。その上で、長期の体重減少は身体に深刻な影響を及ぼすため、客観的な健康状態を把握するための臨床検査の必要性を丁寧に説明し、受診を促す必要があります(選択肢5)。心理的な問題に触れない、食事を本人任せにする、母親の要望をそのまま受け入れるといった対応は、患者さんの治療を妨げたり、病状悪化のリスクを高めたりするため不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 摂食障害の患者さんは身体的な問題だけでなく、強い心理的な葛藤を抱えています。作業療法士として、生活習慣や活動を通して心理状態に寄り添うことは重要です。正しくは:心理的な側面にも配慮し、患者さんの感情や思考を理解しようと努める。選びやすい理由:身体的な問題が前面に出ている場合、心理的な領域への介入にためらいを感じるかもしれませんが、摂食障害は心身両面へのアプローチが必要です。混同注意:作業療法士の専門領域と心理士の専門領域との混同。作業療法士も心理的側面に配慮した関わりが求められます。
- 2. 摂食障害の患者さんは、食事に対する歪んだ認識や強迫的な行動が見られるため、本人の判断に完全に任せることは病状悪化のリスクがあります。医療チームによる適切な指導と管理が必要です。正しくは:食事管理は医療チームの一員として専門的な指導の下に行い、患者さんの状態を把握しながら段階的に介入する。選びやすい理由:患者さんの自律性を尊重したい気持ちから、全てを任せる方が良いと感じるかもしれませんが、適切なサポートなしでは困難な状況です。混同注意:患者の自己決定権と、疾患に対する専門的介入の必要性との混同。
- 3. 正解。摂食障害の患者さんは、自己の身体像や健康状態について独特な認識を持っていることが多いです。まずは患者さんを全受容し、その考えや感情を理解しようと努めることが信頼関係構築の第一歩であり、治療への抵抗感を軽減するために不可欠です。選びやすい理由:特になし。これは一般的な医療倫理としても、治療初期の関わり方としても非常に適切です。
- 4. 患者さんの体重減少の背景には、同級生の言葉による心理的な影響や自己肯定感の低さなどが考えられます。母親の要望通りに「太っていなかった」と説明することは、患者さんの抱える心理的な問題を深掘りせず、安易に現状を肯定することになりかねません。患者さんの内面にある問題に目を向けるべきです。正しくは:母親の要望は理解しつつも、患者さんの心理状態や病状を最優先し、専門職として適切な関わり方を検討する。体重の事実だけを伝えるのではなく、患者さんの感情や自己認識に焦点を当てる。選びやすい理由:母親が心配している気持ちを受け止め、患者さんを安心させたいという善意から選びたくなるかもしれませんが、患者さんの根本的な問題を解決には繋がりません。混同注意:家族の要望と、患者中心の治療原則との混同。また、事実の伝達と感情への配慮の区別。
- 5. 正解。長期間の体重減少や無月経は、骨密度の低下、電解質異常、心機能への影響など、様々な身体合併症を引き起こす可能性があります。患者さんが検査に抵抗を示している場合でも、健康状態を正確に把握し、合併症を予防・治療するために検査の必要性を伝えることは、医療従事者として重要な役割です。ただし、強要ではなく、患者さんの理解を得るよう丁寧に説明する必要があります。選びやすい理由:特になし。身体的なリスクがある場合の医療従事者としての責任は明確です。
国試ポイント
摂食障害患者への治療的態度、特に治療初期の関わり方と、身体的・心理的側面へのバランスの取れたアプローチが問われています。患者の拒否や家族の要望がある中で、医療専門職としてどのように患者と向き合い、適切な介入を促すかがポイントです。
混同注意
患者の自己決定権を尊重することと、疾患により判断能力が低下している患者への医療介入の必要性。また、家族の要望と患者にとって最善の医療的判断。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合、摂食障害の患者の精神状態(病識の有無、自己身体イメージの歪み)を考慮したコミュニケーション、身体的リスクへの対応、治療への抵抗がある患者への動機づけ、家族への対応の原則に注目して選択肢を判断する。
関連知識
摂食障害(神経性やせ症、神経性過食症)の病態、身体合併症、治療における多職種連携(医師、看護師、栄養士、精神科医、心理士、作業療法士)、認知行動療法、動機づけ面接、精神科作業療法の原則。