8歳の男児。小児自閉症と診断されている。言語発達の遅れがみられ、軽度の精神遅滞を合併している。小学校に入学した後、「先生が何を言っているか分からない」と訴えた。保護者も強く希望し、特別支援学校に転校した。この児とのコミュニケーションにおいて、作業療法士が最も留意すべきなのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
自閉スペクトラム症の児童は、視覚的な情報処理に優れていることが多く、言語理解に困難がある場合には、絵カードや写真、実物などの視覚補助を用いることで、指示や情報の理解が格段に向上します。これにより、混乱を減らし、スムーズなコミュニケーションを促進することができます。設問の児童が「先生の言うことが分からない」と訴えている点からも、言語理解の困難を補う視覚支援が最も重要であると判断できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 自閉スペクトラム症の児童は、一度に多くの情報を処理することが苦手な場合が多いです。特に言語理解に遅れがある場合、複数の指示は混乱を招き、理解を困難にします。正しくは:一度に一つの簡潔な指示を与えるべきです。選びやすい理由:効率的に多くのことを伝えたいという意図から選びそうになるかもしれませんが、理解の優先が重要です。混同注意:定型発達の子どもへの教育的アプローチと混同しやすいです。
- 2. 正解。自閉スペクトラム症の児童は視覚優位であることが多く、絵や写真、図などの視覚的な情報を用いることで、口頭での指示よりも理解しやすくなります。特に言語理解に遅れがある場合に非常に有効です.
- 3. 自閉スペクトラム症の児童は、他者の表情や非言語的なサインを読み取ることが苦手な特性があります。表情の変化だけで意図を伝えようとしても、正確に伝わらない可能性が高いです。正しくは:言語的なメッセージを明確にし、必要に応じて視覚的な補助を用いるべきです。選びやすい理由:非言語コミュニケーションが重要だと一般的に考えがちですが、自閉スペクトラム症の特性を考慮すると不適切です。混同注意:定型発達者間の非言語コミュニケーションの重要性と混同しやすいです。
- 4. 不適切な行動を指摘する際は、その行動と指摘の関連性を明確にするため、できるだけ直後に行うのが効果的です。時間をおくと、なぜ叱られているのか理解できず、学習効果が低下する可能性があります。正しくは:不適切な行動があった場合は、その場で簡潔に指摘し、適切な行動を促すべきです。選びやすい理由:感情的にならず冷静に対応しようとする配慮から選びがちですが、タイミングが重要です。混同注意:衝動的に叱るのを避けるための一般的なアドバイスと混同しやすいです。
- 5. 自閉スペクトラム症の児童は、集団の中からの自分への呼びかけを認識するのが難しい場合があります。また、注意の切り替えや選択的注意が苦手なこともあり、個別に具体的に声をかける方が確実に伝わります。正しくは:個別に名前を呼ぶなどして、その児童に直接、明確に声をかけるべきです。選びやすい理由:集団行動の規律を促す意図から選びそうですが、個別の理解を優先すべきです。混同注意:一般的な集団指示の方法と混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、自閉スペクトラム症を持つ児童の特性(特に言語理解の困難と視覚優位性)を理解し、その特性に合わせた効果的なコミュニケーション方法を選択できるかを問うものです。個別の特性に合わせた支援の原則が問われています。
混同注意
定型発達の子どもへの一般的な指導法や、自閉スペクトラム症の他の特性(社会性の困難など)に対応する方法と混同しやすいですが、本問では「コミュニケーション」と「言語発達の遅れ」に焦点が当てられています。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず児童の『どのような特性』によってコミュニケーションに困難が生じているのかを明確にし、その特性を最も効果的に補う、あるいは活用する手段は何かを判断することが重要です。特に言語理解の困難がある場合は、非言語的・視覚的なアプローチを優先的に検討します。
関連知識
自閉スペクトラム症の特性(社会的コミュニケーションと相互作用の困難、限定された反復的な行動・興味)、感覚特性(特に視覚優位)、構造化された支援(TEACCHプログラムなど)、視覚支援の具体例(スケジュール、タスク分析、選択肢の提示)。