41歳の男性。右手で腕相撲中に骨折した。直後の単純エックス線写真(別冊No.2)を別に示す。最も合併しやすいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
上腕骨幹部骨折、特に中下1/3の骨折では、橈骨神経が骨のらせん状の溝(橈骨神経溝)を走行しているため、骨折により損傷を受けやすいです。橈骨神経麻痺の典型的な症状は、手関節および手指の伸展麻痺による下垂手です。腕相撲による骨折は、ねじれ応力による螺旋骨折や斜骨折が多く、この部位の骨折と橈骨神経損傷の関連性が高いことから、下垂手が最も合併しやすいと考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 猿手は正中神経麻痺によって生じ、母指の対立運動ができなくなる状態を指します。上腕骨幹部骨折では、正中神経が損傷される可能性は低いとされています。正しくは:猿手は正中神経麻痺による。選びやすい理由:上肢の神経麻痺の知識が問われているため、他の神経麻痺との混同が生じる可能性がある。混同注意:橈骨神経麻痺による下垂手や、尺骨神経麻痺による鷲手と混同しやすい。
- 2. 書痙は、字を書く際に手指が震えたり、こわばったりするジストニアの一種です。これは神経損傷による直接的な合併症ではなく、特定の運動を行う際に誘発される不随意運動であり、上腕骨幹部骨折の一般的な合併症ではありません。正しくは:書痙はジストニアの一種で、特定の動作で生じる不随意運動である。選びやすい理由:手の機能に関する症状であるため、選択肢として見慣れた用語である可能性がある。混同注意:神経損傷による運動麻痺や、外傷後ストレス反応などと混同される可能性がある。
- 3. 鷲手は尺骨神経麻痺によって生じ、環指と小指のMP関節過伸展とIP関節屈曲を呈する状態を指します。上腕骨幹部骨折では尺骨神経が損傷されることは稀です。正しくは:鷲手は尺骨神経麻痺による。選びやすい理由:上肢の神経麻痺の知識が問われているため、他の神経麻痺との混同が生じる可能性がある。混同注意:橈骨神経麻痺による下垂手や、正中神経麻痺による猿手と混同しやすい。
- 4. 正解。上腕骨幹部骨折、特に中下1/3の骨折では、橈骨神経が骨折部によって損傷されやすいです。橈骨神経麻痺は手関節および手指の伸展ができなくなり、下垂手(wrist drop)と呼ばれる特徴的な姿勢を呈します。腕相撲による骨折は螺旋骨折や斜骨折が多く、橈骨神経の走行と関連が深いため、最も合併しやすい神経麻痺と言えます。正しくは:上腕骨幹部骨折は橈骨神経損傷を合併しやすく、その結果として下垂手が生じる。選びやすい理由:画像から骨折部位を特定し、その部位に最も近い神経の損傷を推測する一般的な知識が問われるため、正答しやすい選択肢である。混同注意:他の神経麻痺(正中神経麻痺による猿手、尺骨神経麻痺による鷲手)と混同しないように注意が必要。
- 5. 肩手症候群(複合性局所疼痛症候群タイプI、CRPS-I)は、外傷後に発生する慢性的な痛み、浮腫、関節拘縮、皮膚の変化などを伴う症候群です。上腕骨幹部骨折後に起こり得る合併症ではありますが、直後の神経損傷による麻痺と比較すると、最も合併しやすいとは言えません。一般的に発症までにある程度の期間を要します。正しくは:肩手症候群は外傷後に発症する慢性疼痛症候群であり、発症までにある程度の期間を要する。選びやすい理由:上肢の外傷後の合併症として知られているため、選択肢として魅力的である。混同注意:急性期の直接的な神経損傷による麻痺と、慢性期の二次的な合併症との区別が曖昧になりやすい。
国試ポイント
上腕骨幹部骨折の合併症として最も重要な神経損傷(橈骨神経麻痺)とその特徴的な症状(下垂手)を問う問題です。骨折部位と関連する神経の解剖学的知識が問われています。
混同注意
他の上肢の神経麻痺(正中神経麻痺、尺骨神経麻痺)による症状や、急性期ではない慢性期の合併症(肩手症候群)と混同しやすい。骨折部位と走行する神経の正確な知識が不可欠。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、骨折部位とそれに隣接・貫通・近傍を走行する神経・血管の解剖学的知識、およびそれらの損傷による具体的な症状(例:変形、感覚障害、運動麻痺)を正確に判断できるかを確認する。特に、上腕骨近位部骨折における腋窩神経、上腕骨顆上骨折における正中神経・橈骨神経・尺骨神経、および血管損傷(フォルクマン拘縮)なども関連知識として問われる可能性があるため、包括的に学習できているかを評価する。
関連知識
橈骨神経の走行と支配筋、正中神経の走行と支配筋、尺骨神経の走行と支配筋、各神経麻痺による特徴的な変形や機能障害。CRPS-I(肩手症候群)の病態と症状。上腕骨の解剖。