85歳の女性。右利き。突然の意識消失のため救急搬入された。入院後、意識は回復した。発症後2時間のMRI拡散強調像(別冊No. 1)を別に示す。今後この患者に生じる可能性の高い症状はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
MRI拡散強調像で示された右大脳半球の広範な脳梗塞は、半側空間無視の典型的な原因部位である頭頂葉下部や側頭頭頂接合部を含む可能性が高く、特に右半球損傷では左半側空間無視が最も頻繁に観察されます。患者は右利きであるため、右半球損傷は非優位半球の損傷となり、左半側空間無視の発生と強く関連します。
選択肢ごとの解説
- 1. 拮抗失行は、左右の肢が意図に反して協調性を欠く動きを示す状態であり、通常、脳梁病変(特に前部)や補足運動野の損傷で見られます。提示されたMRI画像からは、そのような病変は読み取れません。正しくは:脳梁や補足運動野の損傷を示唆する画像所見がある場合に選択肢として適切になります。選びやすい理由:失行という言葉から脳損傷に関連する症状だと連想しやすいですが、具体的な病変部位との関連性が異なります。混同注意:他の種類の失行(観念運動失行、観念失行など)や、不随意運動と混同する可能性があります。
- 2. 左右失認は、自己の身体の左右を識別できない、または空間内の左右を指示された通りに識別できない状態であり、ゲルストマン症候群の一部として左角回病変でよく見られます。下図のMRI所見は右大脳半球の広範な虚血性変化を示唆しており、左右失認の典型的部位とは異なります。正しくは:左角回の病変をMRIで確認できる場合に、この症状が出現する可能性が高くなります。選びやすい理由:身体に関する認識障害として、脳損傷の症状であることは理解しやすいですが、部位が異なります。混同注意:他の身体図式障害(半側身体失認など)や、着衣失行のような空間認知に関連する失行と混同しやすいです。
- 3. 運動性失語(ブローカ失語)は、発語能力の障害が特徴で、通常、優位半球(この患者は右利きなので左半球)のブローカ野(左下前頭回)の損傷によって生じます。下図のMRI所見は右大脳半球の病変を示しており、運動性失語の原因となる部位とは一致しません。正しくは:左大脳半球のブローカ野(下前頭回)に虚血性病変が確認できる場合に、運動性失語が生じる可能性が高まります。選びやすい理由:失語症は脳卒中後の主要な症状として知られているため、一般的な知識として選びやすいですが、優位半球の損傷が必要です。混同注意:感覚性失語(ウェルニッケ失語)や、他の種類の失語症、または構音障害と混同する可能性があります。
- 4. 社会的行動障害は、主に前頭葉、特に前頭前野の損傷によって引き起こされ、判断力や抑制機能の低下、感情調整の困難さなどが現れます。下図のMRI画像では右大脳半球の広範な病変が見られますが、直接的に社会的行動障害の原因となる前頭前野の特定の損傷を明確に示すものではありません。また、意識が回復したばかりの急性期症状としては可能性が高いとは言えません。正しくは:前頭葉、特に前頭前野の損傷が画像診断で明確に示されている場合に、社会的行動障害の可能性が高まります。選びやすい理由:脳損傷後に高次脳機能障害としてよく見られる症状であり、漠然とした選択肢として選びやすいですが、部位の特異性や急性期での確実性という点で異なります。混同注意:他の高次脳機能障害、特に記憶障害や注意障害と混同しやすいです。
- 5. 正解。下図のMRI拡散強調像は、右大脳半球の広範な虚血性変化を示唆しています。半側空間無視は、損傷と反対側の空間にある刺激を認識できない、または注意を向けられない状態であり、右半球損傷(特に頭頂葉下部や側頭頭頂接合部)で左半側空間無視が生じることが非常に多いです。この画像所見から、右半球損傷による左半側空間無視の発症は可能性が高いと判断できます。正しくは:この選択肢は正しい記述です。混同注意:左半球損傷による右半側空間無視(非常に稀)、視覚失認、視野欠損などと混同しやすいです。
国試ポイント
脳画像所見(特にMRI拡散強調像)から脳梗塞の部位を特定し、その病変部位から予測される典型的な神経心理学的症状を正確に判断できるかどうかが問われています。特に、優位半球・非優位半球と失語や半側空間無視といった高次脳機能障害との関連性が重要です。
混同注意
脳損傷部位と症状の典型的な組み合わせを知らないと、他の高次脳機能障害や運動麻痺、感覚障害などと混同してしまいがちです。特に、失語は優位半球、半側空間無視は非優位半球(多くは右半球)との関連が強いという原則を理解している必要があります。
次に同じ論点が出たら
同様の画像問題では、まず脳損傷の部位と範囲を正確に読み取り、次にその部位が優位半球か非優位半球かを判断します。そして、それぞれの半球損傷で典型的に現れる高次脳機能障害や神経症状を照合して、最も可能性の高いものを選びます。
関連知識
脳の機能局在(特に優位半球と非優位半球の役割)、高次脳機能障害の種類と損傷部位の関係(例:ブローカ野、ウェルニッケ野、頭頂葉、前頭前野)、MRI拡散強調像で急性期脳梗塞がどのように映るか。