アルコール離脱症状の後遺症はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
コルサコフ症候群は、アルコールの慢性的な過剰摂取によって引き起こされるビタミンB1(チアミン)欠乏を主な原因とする神経精神疾患です。特に記銘力障害(新しい情報を覚えることができない)が顕著で、しばしば作話(記憶の欠損を埋めるために作り話をする)を伴います。これはアルコール依存症の慢性期における重要な合併症であり、離脱症状が落ち着いた後に長期的な後遺症として現れることがあります。
選択肢ごとの解説
- 1. クライン・レビン症候群は、間欠的な過眠、過食、行動異常、認知機能低下を主症状とする稀な神経疾患であり、アルコール依存症の後遺症とは直接的な関連がありません。正しくは:クライン・レビン症候群は、主に若年期に発症し、数日〜数週間続く過眠エピソードとそれに伴う過食、性欲亢進、行動異常、認知機能低下を特徴とする稀な神経疾患です。選びやすい理由:「症候群」という名称から何らかの神経精神疾患を想起させますが、病因や病態はアルコール関連ではありません。混同注意:他の稀な神経疾患や、原因不明の精神神経症状と混同される可能性があります。
- 2. 正解。コルサコフ症候群は、アルコールの長期摂取によるビタミンB1(チアミン)欠乏が原因で引き起こされる重度の記憶障害(特に記銘力障害)、失見当識、作話を特徴とする症候群です。アルコール依存症の主要な神経精神医学的後遺症の一つとして知られています。
- 3. レノックス・ガストー症候群は、幼少期に発症する難治性のてんかん症候群で、複数のてんかん発作型、精神運動発達遅滞、特徴的な脳波異常を伴います。アルコール離脱の後遺症とは直接的な関連がありません。正しくは:レノックス・ガストー症候群は、様々なタイプのてんかん発作、知的障害、特徴的な脳波異常(棘徐波複合)を伴う小児期の重症てんかんです。選びやすい理由:他の神経疾患の知識が不十分な場合、選択肢として考慮してしまう可能性がありますが、発症時期や病態は全く異なります。混同注意:他の小児期てんかん症候群や、アルコール離脱によって引き起こされる急性期のてんかん発作と混同される可能性がありますが、病態は全く異なります。
- 4. レット症候群は、女児に特異的に見られる遺伝性の進行性神経発達障害で、MECP2遺伝子の変異が原因です。正常な発達の後に目的のある手の動きの喪失、常同的な手の動き、発話の喪失などが現れます。アルコール依存症の後遺症ではありません。正しくは:レット症候群は、MECP2遺伝子の変異が原因で起こる神経発達障害で、乳幼児期に発症し、それまで獲得した能力の喪失(言語、手の巧緻動作など)や特徴的な常同運動が見られます。選びやすい理由:「症候群」という名称から、知識がないと選択肢として考えてしまうかもしれませんが、遺伝性疾患でありアルコール関連ではありません。混同注意:他の発達障害や遺伝性疾患と混同されやすいですが、病因は遺伝的でありアルコール摂取とは無関係です。
- 5. 悪性症候群は、主に抗精神病薬の副作用として発症する重篤な病態で、高熱、意識障害、錐体外路症状(筋硬直など)、自律神経症状を特徴とします。アルコール離脱の後遺症とは直接的な関連がありません。正しくは:悪性症候群は、主に抗精神病薬の服用後に発現する、意識障害、高熱、筋硬直、自律神経機能不全を特徴とする緊急性の高い副作用です。選びやすい理由:「悪性」という言葉のインパクトや、意識障害・神経症状を伴う点で、知識が不十分だとアルコール離脱に関連する重篤な症状と勘違いする可能性があります。混同注意:アルコール離脱せん妄や、肝性脳症、その他の意識障害を伴う症候群と混同される可能性がありますが、原因は異なります。
国試ポイント
アルコール依存症に関連する神経精神医学的合併症の知識、特にコルサコフ症候群の病態、原因(ビタミンB1欠乏)、主要症状(記銘力障害、作話)、および他のアルコール関連疾患(ウェルニッケ脳症、アルコール離脱せん妄など)との鑑別が問われることが多いです。疾患名の知識だけでなく、その病態生理や症状の特徴を正確に理解しているかが重要となります。
混同注意
アルコール離脱せん妄(アルコール離脱の急性期に起こる意識障害、幻覚などを伴う状態)やウェルニッケ脳症(コルサコフ症候群の前駆段階とされる、眼球運動障害、運動失調、意識障害を特徴とするビタミンB1欠乏による急性脳症)と混同されやすいです。コルサコフ症候群はウェルニッケ脳症の慢性期と考えられ、症状が主に記憶障害と作話に特化している点が異なります。また、肝性脳症(肝機能障害による意識障害)とも鑑別が必要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が問われた場合は、アルコール依存症の各時期(急性期、慢性期)に起こりうる合併症(離脱症状、せん妄、てんかん、肝機能障害、膵炎、末梢神経障害、心筋症、栄養失調、そして脳症など)を網羅的に確認すること。特に、各種「〜症候群」について、その主要な原因(遺伝性、薬剤性、代謝性など)、主な症状、発症時期、予後などを正確に区別して覚えているかを確認すると良いでしょう。
関連知識
コルサコフ症候群は、ウェルニッケ脳症の治療が不十分であったり、発見が遅れたりした場合に慢性化した状態として発症することが多いです。ウェルニッケ・コルサコフ症候群として一連の病態と捉えられることもあります。ビタミンB1は糖代謝に必須な酵素の補酵素であり、欠乏すると脳のエネルギー代謝が障害されます。治療にはビタミンB1の補充が不可欠ですが、すでに生じた記憶障害の回復は難しいことが多いです。