65歳の男性。右利き。右頭頂葉の脳梗塞による片麻痺。MMSE 19/30点。Brunnstrom法ステージは上肢・手指、下肢ともにⅢ。回復期リハビリテーション病棟で作業療法が開始された。検査結果(別冊No. 1)を別に示す。 この患者の作業療法で最も適切なのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
プリズム適応療法は、半側空間無視に対する有効な治療法の一つとして確立されています。プリズム眼鏡を装着し、視覚情報を健側(無視がない側)にずらすことで、意識的に無視空間へ注意を向けさせることを促します。この視覚情報のシフトが脳内で適応を引き起こし、無視症状の改善に繋がるとされています。
選択肢ごとの解説
- 1. ペグ操作訓練は、巧緻性や手の機能改善には有効ですが、半側空間無視の直接的な改善には繋がりません。半側空間無視の患者がペグを操作する場合、無視側のペグに気づかないという二次的な問題は生じますが、訓練自体が無視を軽減するものではありません。正しくは:半側空間無視の直接的な介入法ではありません。選びやすい理由:手や指の機能訓練として一般的に用いられるため、リハビリテーションの一環として適切に見えるかもしれません。混同注意:巧緻性訓練と半側空間無視の治療的介入。
- 2. 間隔伸長法は、記憶障害に対して記憶すべき情報の間隔を徐々に広げていくことで、長期記憶への定着を促す手法です。半側空間無視の治療法としては適切ではありません。正しくは:記憶障害への介入法であり、半側空間無視とは異なる認知機能障害に対するアプローチです。選びやすい理由:何らかの認知機能障害に用いられる訓練法であるため、選択肢として選びたくなるかもしれません。混同注意:記憶障害に対するリハビリテーション手法と、半側空間無視に対するアハビリテーション手法。
- 3. 自己教示法は、注意障害や実行機能障害を持つ患者が、課題遂行中に自分自身に指示を与えることで行動を調整する認知行動療法です。半側空間無視に対して直接的に視空間認知を改善するものではありません。正しくは:注意障害や実行機能障害、高次脳機能障害による行動の問題に対する介入法です。選びやすい理由:高次脳機能障害全般に対する認知リハビリテーションとして、広く使われる手法のため、適切な選択肢に見えるかもしれません。混同注意:注意障害・実行機能障害に対するアプローチと、視空間無視に対するアプローチ。
- 4. 問題解決訓練は、具体的な問題に対して論理的な思考プロセスを用いて解決策を見つける能力を向上させる介入です。実行機能障害や高次脳機能障害に対する認知リハビリテーションの一環として用いられますが、半側空間無視の視空間認知の障害に直接アプローチするものではありません。正しくは:実行機能障害や一般的な生活上の問題解決能力に対する介入法です。選びやすい理由:高次脳機能障害の様々な症状に対する包括的なアプローチとして適切に見えるかもしれません。混同注意:実行機能障害や高次脳機能障害への包括的アプローチと、半側空間無視への特異的なアプローチ。
- 5. 正解。プリズム適応療法は、プリズム眼鏡を装着して視覚情報を意図的に偏位させることで、視覚入力と身体運動の間の不一致を脳に再学習させ、半側空間無視の症状を一時的、あるいは永続的に改善させることを目的とした介入法です。右半側空間無視の患者の場合、プリズムを通して視野を右側にずらすことで、無視していた左側の空間に注意が向きやすくなる効果が期待されます。
国試ポイント
半側空間無視に対する様々な治療的介入法の中から、最も適切かつ効果の高い選択肢を選び出す知識が問われています。各アプローチの対象となる障害と目的を正確に理解していることが重要です。
混同注意
半側空間無視と他の高次脳機能障害(記憶障害、注意障害、実行機能障害など)に対する介入法が混同されやすいです。それぞれの障害特性とそれに対する治療アプローチの特異性を理解しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
今後、半側空間無視の問題が出題された場合、評価方法(スクリーニング、詳細評価)に関する内容や、他の介入法(特にエビデンスレベルの高いもの)の具体的な実施方法について問われる可能性が高いです。また、生活場面での具体的なアプローチや環境設定についても注意が必要です。
関連知識
半側空間無視の病態生理、評価方法(例えば、線分二等分試験、抹消試験、行動性無視試験 BITなど)、その他の介入法(視覚探索訓練、肢体把持訓練、視覚スキャン訓練、注意喚起、環境調整、自己教示、VR療法など)。