心理的な外傷体験後の早期介入法として適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
心理的な外傷体験直後の早期介入においては、安全の確保、安心感の提供、基本的なニーズの充足、情報提供、そして自己効力感の支援が重要です。これらの目的を達成するための最も適切なアプローチが「心理的応急処置(PFA)」です。PFAは、さらなる心的外傷の予防と早期回復を促進するための、非侵襲的かつ支持的な初期介入として国際的に推奨されています。
選択肢ごとの解説
- 1. デブリーフィングは、過去の衝撃的な出来事について詳細に語り合うことで情動の浄化を促しますが、トラウマ発生直後の早期、特に数日以内に行われると、かえって二次的なトラウマ化を招くリスクがあるため、初期介入としては推奨されません。正しくは:デブリーフィングは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症予防や治療において、専門家が状況を十分に判断した上で導入されるべき介入です。早期には心理的応急処置が優先されます。選びやすい理由:心理的苦痛を軽減するための方法として広く知られているため、早期介入に有効だと誤解されやすいです。混同注意:心理的応急処置(PFA)と混同されやすいですが、PFAは個人の回復力を尊重し情報提供や安全確保に焦点を当てるのに対し、デブリーフィングは出来事の詳細な語り合いを促す点で異なります。
- 2. 正解。心理的応急処置(Psychological First Aid: PFA)は、災害や危機的状況を経験した直後の人々に対し、安全と安心を提供し、基本的なニーズを満たし、情報を提供し、自己効力感を高めることを目的とした初期介入法です。二次的なトラウマ化を避けつつ、早期の回復を支援するために最も適切です。選びやすい理由:心理的「応急処置」という言葉が示す通り、緊急時の初期対応として最も適切であると直感的に理解しやすいです。混同注意:危機介入のさまざまな手法と混同されがちですが、PFAは特に急性期の「初期」に重点を置いた、非侵襲的で支持的なアプローチです。
- 3. 集団精神療法は、複数のクライアントがグループで治療を受ける形態で、通常は特定の症状や課題を持つ人々を対象に中長期的に行われます。心理的外傷体験直後の急性期には、個々の状況に応じた配慮が必要であり、集団での治療は適していません。正しくは:集団精神療法は、ある程度症状が落ち着き、他者との交流を通じて回復を図る段階で検討される治療法です。選びやすい理由:グループで話し合うことが精神的なサポートになると考えられやすいですが、急性期には個々の脆弱性に対応することが優先されます。混同注意:他の種類の精神療法(認知行動療法など)や、単なる自助グループ活動と混同されやすいですが、専門家による治療的介入です。
- 4. 生活技能訓練(SST: Social Skills Training)は、対人関係や日常生活に必要な社会技能の習得を目指す訓練であり、主に精神疾患の慢性期や回復期において社会適応能力を高めるために用いられます。心理的外傷直後の不安定な時期には、まず安全の確保と心理的な安定が優先されます。正しくは:生活技能訓練は、症状が安定し、社会生活への復帰を目指す段階で導入されるべき介入です。選びやすい理由:日常生活の困難を軽減するための有効な手段であるため、何らかの形で役立つのではないかと思われがちです。混同注意:作業療法におけるADL訓練やIADL訓練と混同されやすいですが、SSTは対人関係やコミュニケーションに特化した訓練です。
- 5. 精神分析療法は、無意識の葛藤や過去の体験を深く掘り下げて探求する、長期間にわたる集中的な心理療法です。心理的外傷直後の急性期には、患者の心身に過度な負担をかける可能性があり、また即効性がないため、初期介入としては不適切です。正しくは:精神分析療法は、通常、外傷体験から時間が経過し、症状が固定化している場合や、より深い自己理解を求める場合に検討される治療法です。選びやすい理由:精神的な問題全般に適用されるイメージがあるため、緊急時にも有効ではないかと思われがちです。混同注意:他の短期的な精神療法(例:認知行動療法)と混同されやすいですが、精神分析は時間とコミットメントを要する点が大きく異なります。
国試ポイント
国家試験では、危機的状況や災害発生時の心理的支援について問われることが多く、特に急性期における適切な介入法が重要視されます。各心理療法の適用時期や目的を正確に理解しているかが試されます。
混同注意
デブリーフィングは外傷体験に関する詳細な語り合いを促すため、心理的応急処置と混同されやすいですが、デブリーフィングは早期に行うと逆効果になるリスクがある点で大きく異なります。心理的応急処置は、むしろデブリーフィングのような詳細な語り合いを強制しないのが特徴です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず『介入の時期(急性期、慢性期、回復期など)』と『介入の目的(安全確保、症状緩和、社会復帰など)』に注目し、各介入法の特性と適用範囲を照らし合わせることが重要です。特に、緊急性の高い状況での『初期対応』として何が適切かを見極める視点が必要です。
関連知識
国際的なガイドライン(WHO, UNICEF, UNHCR)でも、災害や危機的状況における初期対応として心理的応急処置が推奨されています。PTSDの予防には、個人の回復力を尊重し、無理に感情の表出を促さないアプローチが有効であるとされています。また、心のケアに関わる職業として、作業療法士が災害現場や危機的状況に遭遇した際の役割と倫理的配慮も重要です。