50歳の女性。末梢神経麻痺により、円回内筋、長掌筋、橈側手根屈筋、浅指屈筋、深指屈筋(示指・中指)、長母指屈筋、方形回内筋、短母指外転筋、短母指屈筋(浅頭)、母指対立筋、第1・2虫様筋が麻痺している。適応する装具で正しいのはどれか。2つ選べ。
画像の選択肢を選ぶと答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2・3番
解説
正中神経麻痺により母指対立筋、短母指外転筋、短母指屈筋(浅頭)、第1・2虫様筋が麻痺すると、母指の対立運動が障害され、機能的なつまみ動作や把持動作が困難になります。この麻痺を補い、母指を対立位に保持することで機能改善を図るのが短対立装具(Bennett型)と長対立装具です。短対立装具は母指CM関節を安定させ、対立位を保持し、長対立装具はさらに手関節の固定も加えるため、より広範囲な機能補助が期待できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 選択肢1の短対立装具(Bennett型)は、母指CM関節を固定し、母指を対立位に保持することで、母指対立筋麻痺によるつまみ動作の障害を補います。問題文の症例は正中神経麻痺による母指対立筋などの麻痺が認められるため、この装具は適しています。選びやすい理由:写真から、母指を対立位に保つ機能があることが分かりやすい点で選びやすいです。混同注意:長対立装具との区別が曖昧な場合、どちらを選ぶべきか迷う可能性があります。
- 2. 正解。選択肢2の装具は、手関節をやや背屈位に保持しつつ、母指を対立位に誘導する長対立装具の一種です。問題文の症例は正中神経麻痺により母指対立筋や浅指屈筋、深指屈筋(示指・中指)などが麻痺しているため、手関節の安定化と母指対立位の保持の両方が重要となります。長対立装具はこれらの機能を補うため適切です。選びやすい理由:手関節と母指の両方の機能を補助できるため、広範囲の麻痺に対応できる点で選択肢として選びやすいです。混同注意:短対立装具との機能の違い(手関節の固定の有無)を理解していないと、どちらを選ぶべきか迷うことがあります。
- 3. 正解。選択肢3の装具は、PIP関節(近位指節間関節)とDIP関節(遠位指節間関節)の屈曲拘縮や槌指の変形を予防・矯正するために使用される装具です。問題文の症例は正中神経麻痺による指の屈筋群の麻痺が主であり、このような指の関節変形に対する直接的な適応ではありません。示指・中指の深指屈筋麻痺はあっても、それ自体でこの装具の第一選択とはなりません。正しくは:この装具はPIP/DIP関節の伸展制限や槌指の改善に用いるため、正中神経麻痺による母指対立筋麻痺には適しません。正中神経麻痺には母指対立を補助する対立装具が適切です。選びやすい理由:指の屈筋麻痺があるため、指の変形を予防する装具と誤解しやすいですが、この装具は主にPIP/DIP関節の伸展を促すものであり、正中神経麻痺による機能障害とは直接的な関連が薄いです。混同注意:指の屈筋麻痺と指の関節の変形予防・矯正の目的を混同しやすいです。この装具は主に伸展拘縮や槌指の治療に用いられます。
- 4. 選択肢4の装具は、手関節から指のMP関節までを支え、手指を伸展位に保持する静的スプリントであり、特にPIP関節やDIP関節の伸展を補助する機能を持ちます。橈骨神経麻痺による下垂手や指の伸展筋麻痺に対して適応がありますが、本症例は正中神経麻痺による母指の対立運動や指の屈筋機能の障害が主であり、この装具は適していません。正しくは:この装具は橈骨神経麻痺などによる手指の伸展機能障害に用いるため、正中神経麻痺による母指対立筋麻痺には適しません。正中神経麻痺には母指対立を補助する対立装具が適切です。選びやすい理由:指全体の機能障害に対応する装具に見えるため、なんとなく広範囲の麻痺に適用できると誤解しやすいです。混同注意:橈骨神経麻痺による下垂手や指伸展筋麻痺に対する装具(コックアップスプリントなど)と、正中神経麻痺による機能障害に対する装具の区別がついていないと誤答しやすいです。
- 5. 選択肢5の装具は、ナックルベンダー(Knuckle Bender)と呼ばれる動的装具であり、主に尺骨神経麻痺による鷲手変形(MP関節の過伸展とPIP/DIP関節の屈曲)を矯正し、指の屈曲を補助するために用いられます。本症例は正中神経麻痺であり、ナックルベンダーの主要な適応とは異なります。正しくは:この装具は尺骨神経麻痺による鷲手変形に用いるため、正中神経麻痺による母指対立筋麻痺には適しません。正中神経麻痺には母指対立を補助する対立装具が適切です。選びやすい理由:指の屈筋麻痺があるため、指の運動を補助する装具として選びやすいですが、これは尺骨神経麻痺による鷲手変形に対する装具です。混同注意:尺骨神経麻痺による鷲手と正中神経麻痺による猿手の病態と、それぞれの神経麻痺に対する装具の適応を混同しやすいです。
国試ポイント
正中神経麻痺による手指機能障害と、それを補うための装具の選択に関する知識が問われています。特に母指対立運動の重要性と、それを補助する対立装具の種類と適用を理解することが重要です。
混同注意
対立装具と短装具、長装具の区別が混同しやすいです。対立装具は母指の機能改善に特化しているのに対し、短装具や長装具は手関節や指全体の安定化、安静保持などを目的とします。また、橈骨神経麻痺による下垂手に対するコックアップスプリントや、尺骨神経麻痺による鷲手に対するナックルベンダーなど、他の神経麻痺に対する装具との区別も重要です。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず問題文からどの神経の麻痺かを特定し、その神経麻痺によって障害される筋肉と、それによりどのような手の変形や機能障害が生じるかを明確にします。次に、各選択肢の装具がどのような目的で、どの部位に作用するかを理解し、症例の機能障害を補うのに最も適切な装具を選択します。
関連知識
正中神経麻痺による手部の変形は「猿手」と呼ばれ、母指球筋の萎縮と母指の外転・伸展位が特徴です。これに対し、装具は母指を対立位に保持し、機能的な把持を可能にすることで、日常生活動作の改善を目指します。また、正中神経麻痺と併せて尺骨神経麻痺や橈骨神経麻痺の症状も理解し、それぞれの神経麻痺に対する装具の特徴を把握しておく必要があります。