注意欠如・多動症〈注意欠如・多動性障害〉に対する心理社会的治療で適切でないのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
注意欠如・多動症(ADHD)の子どもは、外部からの刺激に注意が逸れやすく、集中力を維持することが難しい特性があります。作業中に雑談をすることは、不必要な刺激となり、子どもの集中を著しく妨げます。そのため、作業中は集中できる環境を整え、雑談は避けるのが適切です。他の選択肢は、ADHDの子どもの特性を理解した上での有効な支援方法であり、心理社会的治療として適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. ADHDの特性として、一度に多くの情報を処理することが苦手なため、簡潔な指示は注意の集中を促し、理解を助ける上で有効な支援です。正しくは:複数の指示を同時に出すことは避けるべきです。選びやすい理由:指示を明確にすることは重要ですが、一つずつ出すことが過保護に感じられるかもしれない。しかし、ADHDの子どもには必要です。混同注意:一般的な子どもへの指示方法と混同し、つい複数の指示を出してしまいがちですが、ADHDの特性を考慮すると適切ではありません。
- 2. ADHDのある子どもは聴覚情報よりも視覚情報の方が理解しやすいことが多く、視覚的な指示は情報の定着や行動の想起を助けるため、非常に有効な支援方法です。正しくは:視覚的な情報を補うことは、口頭指示の理解を深めるのに役立ちます。選びやすい理由:手間がかかるように感じるかもしれないが、理解を深めるためには効果的です。混同注意:口頭指示だけで十分と考えるかもしれないが、ADHDの特性として注意の持続が難しいため、視覚的な補助は必須です。
- 3. 正解。注意欠如・多動症(ADHD)の子どもは、外部からの刺激に注意が逸れやすく、集中力を維持するのが困難です。作業中に雑談が入ると、さらに集中力が途切れ、課題への取り組みが妨げられるため、不適切な対応です。正しくは:作業中はできるだけ静かで集中できる環境を整え、不必要な刺激を避けるべきです。選びやすい理由:和やかな雰囲気を作りたいという善意から行われることもあります。しかし、ADHDの特性を理解していないと、かえって子どもの集中を阻害してしまいます。混同注意:一般的な場面でのコミュニケーション方法(例:友人と談笑しながら作業する)と混同しやすいですが、ADHDの子どもにとっては集中を妨げる要因となります。
- 4. ADHDの特性によって生じる軽微な症状を全て厳しく注意することは、子どもの自尊心を傷つけ、治療への意欲を低下させる可能性があります。本人の努力や成長を認めつつ、許容できる範囲で症状を受け入れることは、良好な関係構築と肯定的な自己評価を育む上で重要です。ただし、危険な行為や他者に迷惑をかける行為は、その都度適切に指導する必要があります。正しくは:全ての不適切な行動をすぐに咎めるのではなく、重要な行動と軽微な行動を区別して対応することが望ましいです。選びやすい理由:全ての症状を厳しく管理すべきだと考える人もいるかもしれません。しかし、軽微な症状に過剰に反応すると、子どもの萎縮を招く恐れがあります。混同注意:許容と放置を混同しやすいです。許容とは、症状を理解し、その上で適切な指導や支援を行うことの一部です。
- 5. 行動療法における基本的な原則であり、望ましい行動の頻度を増やすために非常に効果的です。行動と報酬が時間的に近接しているほど、その関連性が強まり、行動が定着しやすくなります。正しくは:褒めるタイミングを逃さず、具体的な行動を指摘して評価することが望ましいです。選びやすい理由:褒めること自体は良いことだが、そのタイミングの重要性を見過ごしがちかもしれない。混同注意:褒めることの重要性は理解していても、即時性まで意識していない場合があります。遅れて褒めても効果は薄れてしまいます。
国試ポイント
注意欠如・多動症(ADHD)を持つ子どもへの心理社会的治療(行動療法や環境調整など)の具体的な介入方法について、その有効性と適切性を問う問題です。特に「不適切な対応はどれか」という形式で、ADHDの特性(注意散漫、多動性、衝動性)を悪化させる可能性のある行動を見抜く知識が求められます。個別の具体的な対応の正誤を判断できることが重要です。
混同注意
一般的な子どもへの教育的アプローチや、和やかな雰囲気作りを重視するコミュニケーションと混同しやすいです。ADHDの特性を持つ子どもには、集中力を高めるための特別な配慮(刺激の最小化、明確な指示など)が必要であることを理解していないと、不適切な選択肢を選んでしまう可能性があります。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、ADHDの子どもに対する薬物療法の副作用や、ペアレントトレーニングの具体的な内容、または学校での具体的な支援(座席配置、宿題の工夫など)について問われる可能性があります。また、ASDとの合併や鑑別、それぞれの特性に応じた介入の違いも重要です。
関連知識
ADHDの診断基準(DSM-5など)、薬物療法、ペアレントトレーニング、ソーシャルスキルトレーニング(SST)、環境調整(構造化された環境、刺激の調整)、行動療法(ポジティブな強化、タイムアウトなど)。