7歳の女児。アテトーゼ型脳性麻痺。GMFCSレベルⅣ。頭部は右を向きやすく、上肢はATNR様の姿勢をとる。利き手は右であるが物を持続的に把持する能力は低い。食事訓練場面では座位保持装置に座って肘当てと同じ高さのテーブルで、スプーンでの自力摂取を試みている。食事訓練における作業療法士の対応として適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
GMFCSレベルⅣのアテトーゼ型脳性麻痺の女児は、体幹の安定性が低く、上肢の不随意運動が顕著です。テーブルを高くすることで、肘がテーブルに置かれやすくなり、上肢の支持基盤が広がるため、体幹の安定性が向上し、不随意運動の影響が軽減され、スプーン操作がしやすくなります。
選択肢ごとの解説
- 1. バランスフリー型上肢装具(BFO)は、重力の影響を軽減し、筋力低下のある上肢の運動を補助する目的で使用されます。本症例は筋力低下よりも不随意運動が主な問題であり、BFOでは不随意運動の抑制には繋がりにくく、むしろ操作を複雑にする可能性があります。正しくは:不随意運動を抑制し、安定した上肢運動を促すための装具や、肘から先を固定できるような支持具を検討する。選びやすい理由:上肢の安定性向上に役立つ装具であるため、一見有効に思える。しかし、アテトーゼ型では不随意運動の抑制が重要。混同注意:筋力低下に対する介入と不随意運動に対する介入。
- 2. 正解。GMFCSレベルⅣのアテトーゼ型脳性麻痺では、体幹の安定性が低く、不随意運動が顕著です。テーブルを高くし、肘当てと同じ高さにすることで、肘を安定してテーブルに置くことができ、上肢の支持基盤が広がり、体幹の安定性が向上します。これにより、不随意運動の影響が軽減され、スプーン操作がしやすくなります。選びやすい理由:姿勢調整の基本原則に基づいているため。混同注意:低すぎるテーブルと高すぎるテーブルによる弊害の判断。
- 3. 女児の頭部は右方向を向きがちで、ATNRのような姿勢を呈するため、右側に食器を配置すると、さらに右方向を向きやすくなり、ATNRを誘発・増強し、食事動作を困難にする可能性があります。利き手は右ですが、この状況下では左手での食事や、正中位での食事が望ましいです。正しくは:ATNRの影響を考慮し、食器は正中位か、顔が向きにくい左側に配置する。または、食器を滑りにくいマットなどで固定し、安定性を高める。選びやすい理由:利き手が右であるため、利き手側に食器を置くのが自然だと考える。混同注意:一般的な利き手側の配置と、反射の影響を考慮した配置。
- 4. アテトーゼ型脳性麻痺では、把持の安定性が困難であり、特に細い柄は握りにくく、不随意運動の影響を受けやすくなります。柄が太く、滑りにくい素材のスプーンの方が、安定して握りやすく、操作が容易になります。正しくは:スプーンの柄が太く、滑りにくい素材で、把持しやすい形状のものを選ぶ。選びやすい理由:一般的な自助具のスプーンの柄の細さや軽さを誤解する。または、健常者の握りやすさと混同する。混同注意:スプーンの柄の太さと、把持力・安定性との関係。
- 5. 座位保持装置のティルティング角度を床から60度(後方傾斜)にすると、体幹への重力負荷が増し、重力に抗した姿勢保持がより困難になります。むしろ、姿勢を安定させるためには、骨盤を立て、体幹を支持する姿勢を維持できる範囲での後方傾斜が適切であり、一般的には30度程度がよく用いられます。60度は体幹の不安定性を助長する可能性があります。正しくは:ティルティング角度を床から30度程度にし、体幹の安定性を向上させる。または、座位保持装置の角度を調整し、体幹を最も安定させられる角度にする。選びやすい理由:ティルト機能が座位安定に役立つという知識はあっても、適切な角度の理解が不足している。深いティルトが安定性を高めると誤解する。混同注意:ティルト機能の目的と、適切な角度設定の理解。
国試ポイント
脳性麻痺患者の食事動作に対する環境設定の基本原則と、GMFCSレベルに応じた介入方法を理解する。
混同注意
姿勢制御が困難な症例に対するテーブルの高さ調整と、特定の装具や自助具の適応判断を混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
脳性麻痺患者の食事訓練に関する問題では、まずGMFCSレベルや具体的な症状(不随意運動、姿勢反射など)を確認し、体幹の安定性向上と上肢の支持基盤確保が最も優先される介入であることを判断基準とする。
関連知識
GMFCSレベルの各段階と、それに応じたADL能力・介助量の目安。非対称性緊張性頸反射(ATNR)の陽性症状と食事動作への影響。