35歳の男性。飲酒後電車内で寝過ごし、右上腕部の圧迫によって橈骨神経麻痺となった。受傷4日後で橈骨神経領域の感覚低下があり、手関節背屈および手指伸展の自動運動は困難である。この患者に対するアプローチで適切なのはどれか。2つ選べ。
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出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4・5番
解説
橈骨神経麻痺では、手関節や手指の伸展ができなくなるため、関節拘縮や筋短縮を予防するために他動運動が必須です。また、下垂手に対してコックアップ・スプリントを使用することで、手関節を背屈位に保持し、機能的な肢位を保ちながら、伸筋群の過度な伸長を防ぎ、回復を促進します。
選択肢ごとの解説
- 1. 橈骨神経麻痺は圧迫による神経損傷であり、炎症は主病態ではありません。受傷から4日経過しているため、急性期の炎症反応はピークを過ぎており、アイシングは神経の血流をさらに悪化させる可能性があり不適切です。正しくは:神経圧迫が原因であるため、アイシングではなく圧迫の解除や関節可動域の維持が優先されます。選びやすい理由:外傷後の炎症に対して一般的な処置であるため。混同注意:急性期の外傷や捻挫に対する一般的なRICE処置。
- 2. 患者は手関節の背屈を自力で行うことが困難な状態であるため、抵抗運動は筋力増強を目的としたものであり、麻痺の回復初期には適用できません。まずは他動運動で可動域を維持し、筋活動が見られてから軽負荷で開始するのが一般的です。正しくは:まずは手関節背屈の他動運動を行い、拘縮予防に努めます。筋力回復が見られ始めたら、徒手抵抗運動や電気刺激療法を検討します。選びやすい理由:リハビリテーションの一環として筋力訓練が重要であるという認識から。混同注意:筋力低下がある場合の一般的な筋力増強訓練。
- 3. Engen型把持装具は、主に母指と示指の対立運動を補助し、つまみ動作を容易にするための装具です。この患者は手関節の背屈および手指の伸展が困難であり、下垂手が主な症状であるため、Engen型把持装具は症状に合致しません。正しくは:下垂手に対してはコックアップ・スプリントやダイナミックスプリントを使用します。選びやすい理由:麻痺による把持機能の低下を改善する装具と誤解しやすい。混同注意:装具の種類と適応疾患(例:正中神経麻痺、尺骨神経麻痺などでの把持装具)。
- 4. 正解。橈骨神経麻痺により手関節と手指の伸展が困難なため、放置すると拘縮が生じ、機能回復を妨げます。他動伸展運動を行うことで、関節の可動域を維持し、屈筋の短縮を防ぐことが重要です。これは麻痺回復までの期間の機能維持に不可欠な介入です。選びやすい理由:関節可動域訓練はリハビリテーションの基本であるため。混同注意:自動運動との違い。自動運動ができない場合は他動運動が必須である。
- 5. 正解。コックアップ・スプリントは、手関節を下垂位から背屈位に保持するための装具です。橈骨神経麻痺による下垂手では、手関節が屈曲位になりやすく、機能的な手の使用が困難になります。このスプリントを装着することで、機能的な肢位を保ち、伸筋群の過度な伸長を防ぎ、日常生活動作の補助にもなります。選びやすい理由:下垂手に対する一般的な装具療法であるため。混同注意:他の種類の装具や、手指の屈曲を補助する装具など。
国試ポイント
橈骨神経麻痺の症状(下垂手、感覚鈍麻)と、それに対する初期のリハビリテーション介入(関節可動域訓練、装具療法)を理解する。
混同注意
神経麻痺に対する急性期の炎症管理と、回復期の機能維持・改善のための介入の区別。特に、急性期のアイシングは神経の血流を阻害する可能性があり、また慢性期の筋力強化を急性期に行うことは適切でない。
次に同じ論点が出たら
橈骨神経麻痺の症例において、初期段階での関節可動域制限の予防と、機能的な肢位保持のための装具使用が適切かを判断する。
関連知識
橈骨神経の支配領域(筋:上腕三頭筋、腕橈骨筋、総指伸筋など、感覚:手背の一部、母指から環指橈側半分にかけての背面)、他の末梢神経麻痺(正中神経麻痺、尺骨神経麻痺)の症状と介入方法。