43歳の女性。高校の美術教師。2年前に乏突起神経膠腫を発症した。現在緩和ケア病棟で疼痛緩和の治療を受けている。作業療法時に「死んだらどうなるのでしょうか」と問いかけられた。対応として最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
患者が「死んだらどうなるでしょう」という問いかけは、死に対する不安や恐怖、あるいは自己の考えを整理したいという深層心理の表れです。この問いに対し、作業療法士が自身の価値観を押し付けたり、安易に否定したりするのではなく、患者自身の死生観を探る姿勢が、患者の感情を受容し、傾聴する上で最も重要となります。患者が自らの考えを言語化するプロセスを支援することで、自己の内面と向き合い、不安の軽減や受容につながる可能性があります。
選択肢ごとの解説
- 1. 「私には判断できません」という返答は、患者の問いかけに対する責任を放棄するものであり、患者は突き放されたと感じる可能性があります。専門職として、患者の感情を受け止め、適切な対話の機会を設けるべきです。正しくは:患者の問いかけを受け止め、「そうお感じになるのですね」といった共感的な返答から対話を始める。選びやすい理由:自身の専門外の内容であるため、安易な回答を避けるという意味では一見妥当に見える。混同注意:医療者が安易な断定を避けるべき場面と、患者の感情を受け止めるべき場面。
- 2. 正解。患者の「死んだらどうなるのでしょう」という問いに対し、「あなたはどのように考えていらっしゃいますか」と尋ねることは、患者自身の死生観や不安に寄り添い、その内面を探るための最も適切なアプローチです。これにより、患者は自身の感情や考えを言語化する機会を得られ、作業療法士はそれを傾聴することで、患者の心理状態をより深く理解できます。これは、患者中心のケアにおいて非常に重要です。選びやすい理由:患者に問いかけを返すことで、対話が深まることを期待できるため。混同注意:患者の感情や考えを引き出すオープンクエスチョンと、ただ問いを返すだけの不親切な対応。
- 3. 「気持ちを切り替えて、作業に取り組みましょう」という返答は、患者の死に対する不安という重要な感情を無視し、回避を促すものです。美術教師という患者の背景があっても、緩和ケアの状況下で感情を抑圧することは、患者の心理的負担を増大させる可能性があります。正しくは:患者の不安を受け止め、「何か心配なことがありますか」などと、感情に焦点を当てた質問で対話を継続する。選びやすい理由:作業療法という「作業」に焦点を当てることで、患者の気分転換を図ろうとする意図から選びやすい。混同注意:気分転換と、重要な感情への蓋。
- 4. 「そのようなご心配は無用ですよ」という返答は、患者の死に対する不安や懸念を否定し、矮小化するものです。患者の感情を尊重せず、安心感を無理強いする形になり、信頼関係を損なう可能性があります。特に進行性の疾患を抱える患者にとって、死への不安は自然な感情であり、それを否定すべきではありません。正しくは:患者の心配な気持ちを認め、「そうですね、死について考えるのはとても怖いことですよね」と共感を示す。選びやすい理由:患者を安心させたいという善意からくるが、結果的に感情を否定することになる。混同注意:患者を安心させることと、患者の感情を否定すること。
- 5. 「何か楽しいことを考えていきましょう」という返答は、選択肢3と同様に、患者の死に対する不安という核心的な感情から目をそらせ、現実逃避を促すものです。緩和ケアの段階にある患者の心理的なニーズに対応するためには、表面的な楽しさの提案ではなく、内面の葛藤に寄り添う姿勢が必要です。正しくは:患者の感情に寄り添い、不安の原因を共に探る対話に移行する。選びやすい理由:患者の気分を明るくしたいという意図から、前向きな言葉として選びやすい。混同注意:ポジティブ思考の促進と、患者の感情の棚上げ。
国試ポイント
緩和ケアにおける患者の心理的側面への対応と、専門職としての適切なコミュニケーション技法。
混同注意
患者の訴えに対して、即座に答えを出したり、感情を否定したりすることと、患者の主体性を尊重し、傾聴する姿勢との違い。
次に同じ論点が出たら
患者が感情的・精神的な問いかけをした際に、即座に答えを与えるのではなく、まず患者自身の考えや感情を深掘りするような質問が提示されているかを確認する。
関連知識
緩和ケアにおけるスピリチュアルケアの重要性、患者中心のケア、共感的傾聴、オープンクエスチョンの活用。