70歳の男性。診断名はCOPD。mMRC息切れスケールはグレード4、画像所見では肺の過膨張が指摘されている。在宅酸素療法が導入されていたが、感冒を契機に入院し、入院1週後に作業療法が開始となった。酸素安静時1 L/分、労作時2L/分で、開始時(安静時)のバイタルサインは心拍数86/分、呼吸数22/分、SpO2 94 %、修正Borg Scale 2であった。作業療法で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
COPD患者は呼吸困難感が強く、身体活動によって呼吸困難が悪化しやすい特徴があります。特に洗体のようなADL動作では、不随意に息こらえをしてしまいがちです。動作時に意識的に呼気を行うことで、呼気延長が促され、気道虚脱を防ぎ、肺内の残気量を減少させる効果が期待できます。これは呼吸困難の軽減や活動の効率化に繋がり、COPD患者のADL指導における重要なポイントです。
選択肢ごとの解説
- 1. COPD患者は呼吸困難により食欲不振や栄養状態の低下が見られやすいため、一度に多量の食事を摂ると、胃が膨張して横隔膜を圧迫し、呼吸困難を悪化させる可能性があります。正しくは:食事は少量ずつ頻回に分けて摂取するよう指導します。消化の良いものを選び、ゆっくりと摂ることも重要です。選びやすい理由:栄養状態の改善は重要であるため、一見すると栄養摂取を促す指導に見えるかもしれませんが、COPD患者の呼吸生理を考慮すると不適切です。混同注意:一般的な健康な人に対する栄養指導と混同しやすいですが、呼吸器疾患患者の食事指導には特殊な配慮が必要です。
- 2. COPD患者は、疾患の進行度や個々の身体機能、理解度によってIADLの困難さやニーズが大きく異なります。パンフレットのみの指導では、個別の状況に応じた具体的な支援やアドバイスを提供できず、効果的な指導とはいえません。実演や具体的な動作指導、環境調整の検討が必要です。正しくは:IADL指導は、患者の実際の状況や能力を評価し、個別に対応した具体的な動作指導や環境調整の提案、必要に応じた介助方法の検討などを組み合わせるべきです。パンフレットは補助的な情報提供にとどめます。選びやすい理由:情報提供としてパンフレットは有用であり、効率が良いように思えるかもしれませんが、OTの専門性を活かした個別指導が欠かせない場面です。混同注意:一般的な情報提供と、個別性や実践性を重視するOTの専門的指導の違いを混同しやすいです。
- 3. COPD患者の運動中止基準としての心拍数上昇は、一般的に最大心拍数の80%以上、または安静時心拍数+20〜30/分の上昇、あるいは自覚症状(息切れ、胸痛など)の悪化を目安とすることが多いです。この患者の安静時心拍数は86/分であり、110/分は安静時からの上昇が24/分と、中止基準としてはやや低い可能性があります。個々の患者の目標心拍数や運動耐容能に応じて設定すべきです。正しくは:運動中止基準は、患者の安静時バイタルサイン、運動耐容能、自覚症状(息切れの増悪、胸痛など)、SpO2の低下などを総合的に判断して個別に設定します。一般的には、安静時心拍数から20~30拍/分以上の上昇、または最大心拍数の80%以上、あるいは不整脈の出現などが目安となります。選びやすい理由:バイタルサインによる運動中止基準の概念は正しいですが、具体的な数値が適切かどうかで迷う可能性があります。混同注意:一般的な運動中止基準の概念と、COPD患者における個別性のある具体的な数値設定を混同しやすいです。
- 4. COPD患者のADL訓練におけるSpO2の目標値は、一般的に90%以上を維持することが推奨されます。85%という値は低酸素状態を示唆しており、この状態で訓練を継続すると体に大きな負担がかかり、危険な場合があります。正しくは:ADL訓練は、SpO2が90%以上を維持できる範囲で行うことが原則です。もしSpO2が90%を下回る場合は、酸素流量の増量や休憩、訓練の中止を検討すべきです。選びやすい理由:低すぎると感じつつも、COPD患者のSpO2は元々低い傾向があるため、妥協できる範囲と誤解してしまう可能性があります。混同注意:一般的なSpO2の基準値(96%以上)と、COPD患者における許容範囲を混同しやすいですが、85%はCOPD患者にとっても低すぎる数値です。
- 5. 正解。COPD患者は、呼吸困難を軽減し効率的な換気を行うために、口すぼめ呼吸などの呼気延長を促す呼吸法が重要です。特に洗体などの身体活動時に息こらえをしてしまうと、呼吸困難が増悪しやすいため、動作に合わせて呼気を意識させることで、呼吸リズムを整え、ガス交換効率の維持や呼吸困難感の軽減に繋がります。動作の力を入れる時や負荷がかかる時に呼気を行うことで、胸腔内圧の急激な上昇を防ぎ、呼吸筋への負担を軽減できます。
国試ポイント
COPD患者の呼吸理学療法、特にADLにおける呼吸法の指導に関する知識が問われています。身体活動と呼吸運動の連動、具体的な指導内容、および運動中止基準などの安全管理に関する知識が重要です。
混同注意
COPD患者に対するADL指導において、呼吸のタイミング(吸気か呼気か)と、その生理学的根拠が混同されやすいです。特に労作時に息を止めてしまうことの悪影響を理解しているかが重要です。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、他の呼吸器疾患(例:間質性肺炎)におけるADL指導の注意点や、酸素療法中のリスク管理、リハビリテーションプログラムの具体的な内容(運動処方、評価尺度)について問われる可能性があります。
関連知識
COPDの病態生理(気流制限、肺の過膨張、ガス交換障害)、口すぼめ呼吸、呼吸困難に対する対処法(姿勢、呼吸法)、運動療法のリスク管理(バイタルサインのモニタリング、中止基準)、活動と休息のバランス、栄養管理。