30歳の男性。脊髄損傷(第5胸髄節まで機能残存)。受傷から5か月が経過、セルフケアは自立し、退院に向けて住宅改修を検討している。排尿は自己導尿、排便は座薬を使用し便器上で排泄。自宅のトイレの改修前の見取り図を示す。必要な住宅改修で適切でないのはどれか。ただし、車椅子は全幅58 cm、全長80 cmとする。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
第5胸髄損傷の患者は、腹筋を含む体幹の筋力が低下しているため、座位バランスが不安定である。便座への移乗や座位保持の安定性を高めるには、横方向の手すりやL字型の手すりが特に有効である。縦手すりは立ち上がり動作の補助や歩行時の支持に主に用いられるが、この症例では立ち上がり動作そのものが困難であり、車椅子から便座への移乗と座位での安定が主な課題となるため、縦手すりの設置は適切とは言えない。
選択肢ごとの解説
- 1. 車椅子でトイレへ出入りする際、開き戸よりも引き戸(スライドドア)の方が開閉スペースを必要とせず、車椅子の操作がしやすいため、適切な改修である。
- 2. 車椅子の全幅が58cmであるため、出入り口の有効幅を85cmに広げることで、車椅子での通行がスムーズになり、扉や壁にぶつかるリスクを減らせるため、適切な改修である。
- 3. 車椅子利用者が洗面台を快適に使うためには、下肢や車椅子が洗面台に干渉しないよう、下部に十分な空間を設けることが不可欠であり、適切な改修である。
- 4. 車椅子での移動は、摩擦の大きい畳やカーペット、段差のある床よりも、平坦で摩擦の少ないフローリングの方が容易であり、車椅子利用者の住宅改修として適切である。(ただし、濡れた際の滑りやすさには配慮が必要だが、本設問の選択肢の中では適切とされる。)
- 5. 正解。第5胸髄損傷の患者は体幹機能の麻痺により座位バランスが不安定である。便座への移乗や便座上での安定した姿勢保持には、横方向の手すり(水平手すりやL字型手すり)が最も有効である。縦手すりは主に立ち上がり動作の補助や歩行時の支持に用いられるため、車椅子から便座への移乗が主となるこのケースにおいては、必要性が低い、あるいは効果が限定的であり、適切とは言えない。正しくは:便座への移乗や座位保持を補助するため、横方向の手すりやL字型手すりを設置する。選びやすい理由:手すりは一般的に身体機能の補助として役立つため、縦手すりも無条件に良い改修と捉えられやすい。混同注意:手すりの種類(縦、横、L字など)とそれぞれの役割、および身体機能レベルに応じた適切な手すりの選択基準を混同しやすい。
国試ポイント
脊髄損傷患者の機能残存レベルと、それに応じた住宅改修の具体的な知識が問われている。特に、車椅子利用者に対するトイレや洗面所の改修ポイント、手すりの種類とその目的を正確に理解しているかが重要。
混同注意
手すりなら何でも良い、と誤解すること。特に縦手すりは立ち上がり補助のイメージが強いため、一見すると適切に思えるが、脊髄損傷の高位レベルと車椅子利用という状況では優先度が低いか不適切となる。
次に同じ論点が出たら
次回同様の論点が出題された場合、患者の残存機能レベル、ADL状況、使用する福祉用具(車椅子サイズなど)を詳細に確認し、各改修項目が患者の具体的な動作改善にどのように寄与するかを判断する。特に手すりに関しては、その形状(縦、横、L字)、設置位置、高さ、目的(移乗、立ち上がり、姿勢保持など)を個別に評価することが重要となる。
関連知識
車椅子使用者における各生活空間(玄関、廊下、居室、トイレ、浴室、洗面所)の適切な寸法(幅、奥行き、回転スペースなど)と設備(手すり、扉、床材など)に関する知識。特に脊髄損傷のレベル別の残存機能とADLへの影響。