33歳の男性。交通事故で完全頸髄損傷(C7頸髄節まで機能残存)を受傷した。受傷後2か月が経過し、全身状態は良好でADLの拡大が図られている。排泄については核上型神経因性膀胱と診断され、自排尿が困難である。この患者の排尿管理として適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
C7頸髄損傷では、手指の機能がある程度保たれているため、患者自身で間欠的自己導尿を行うことが可能です。核上型神経因性膀胱は膀胱過活動や膀胱括約筋協調不全を特徴とし、自排尿が困難であるため、自己導尿は効率的かつ合併症のリスクが低い排尿管理方法として推奨されます。これにより、尿路感染症の予防、腎機能の保護、および患者の自立した生活の実現に貢献します。
選択肢ごとの解説
- 1. 核上型神経因性膀胱は通常、膀胱過活動や膀胱括約筋協調不全を伴うため、腹部圧迫による排尿は膀胱内圧の過度な上昇を引き起こし、逆流や自律神経過反射、腎機能障害のリスクを高めるため不適切です。弛緩性膀胱(下運動ニューロン障害など)の管理法として用いられます。正しくは:弛緩性神経因性膀胱の場合には選択肢となり得る。選びやすい理由:排尿困難があるため、外部からの刺激で排尿を促す方法の一つとして知識が曖昧だと選んでしまう可能性がある。混同注意:弛緩性膀胱に対する管理法と混同しやすい。
- 2. 骨盤底筋訓練は主に腹圧性尿失禁や過活動膀胱の一部の症例で尿禁制を改善するために用いられます。核上型神経因性膀胱に伴う膀胱括約筋協調不全がある場合、骨盤底筋を強化すると排尿時の尿道抵抗が増し、かえって排尿困難を悪化させる可能性があります。正しくは:尿失禁の改善を目的とする場合や、特定のタイプの過活動膀胱には有効な場合がある。選びやすい理由:排尿に関する訓練として一般的であるため、無意識に選んでしまう可能性がある。混同注意:尿失禁に対する一般的な運動療法と、神経因性膀胱による複雑な排尿障害に対する管理法を混同しやすい。
- 3. 正解。C7レベルの頸髄損傷では手指の巧緻性が保たれているため、患者自身でカテーテル操作を行うことが可能です。核上型神経因性膀胱による自排尿困難に対して、定期的な導尿は尿路感染症の予防、腎機能の保護、および患者のADLにおける自立を促す上で最も適切な管理方法とされています。
- 4. 尿道へのカテーテルを長期的に留置することは、尿路感染症や尿道損傷、尿路結石、膀胱がんなどの合併症リスクを著しく高めます。ADLの拡大を目指す患者において、可能な限り避け、間欠的導尿が不可能な場合に検討される二次的な選択肢です。正しくは:間欠的導尿が身体的・認知的に困難な場合や、急性期の管理、一時的な使用に限定される。選びやすい理由:確実な排尿管理法であるため、すぐに選んでしまいがちだが、長期的な合併症リスクを考慮していない。混同注意:緊急時や一時的な管理法と、長期的な自立を目指す管理法を混同しやすい。
- 5. 膀胱瘻は、尿道からのカテーテル留置が困難または禁忌である場合や、重度の合併症が発生した場合に考慮される、より侵襲的な外科的処置です。この患者のように自己導尿が可能な状態であれば、優先されるべき管理方法ではありません。正しくは:尿道カテーテル留置が不可能または重篤な合併症を伴う場合の最終的な選択肢となる。選びやすい理由:完全に排尿を確保する方法として選択肢に挙がるが、その侵襲性を過小評価してしまう可能性がある。混同注意:非侵襲的・低侵襲的な管理法と、最終手段としての外科的処置を混同しやすい。
国試ポイント
頸髄損傷のレベルとそれに伴う残存機能、および神経因性膀胱の病型に応じた適切な排尿管理方法の選択が問われています。特に、自己導尿が可能な身体機能レベルと、その適応となる膀胱機能障害の組み合わせを理解しているかがポイントです。
混同注意
弛緩性膀胱に対する管理(圧迫排尿)と、過活動性膀胱に対する管理を混同しやすい。一時的・緊急的な排尿管理(尿道カテーテル留置)と、長期的・自立的な排尿管理(自己導尿)のメリット・デメリットを混同しやすい。身体機能残存レベル(C7)で自己導尿が可能であることを見落とし、より侵襲的な方法(膀胱瘻)を選んでしまうことがある。
次に同じ論点が出たら
次回、同様の論点が出題された場合、まず「頸髄損傷のレベル」を確認し、それに伴う「手の機能残存」の程度を把握する。次に、「神経因性膀胱の病型」(過活動性か弛緩性か)を特定する。これら2つの情報から、患者の自立度を高め、合併症リスクを最小限に抑えることができる、最も適切で低侵襲な排尿管理法(特に自己導尿の適応可否)を判断する。
関連知識
神経因性膀胱の分類と特徴(核上型、仙髄上位、仙髄下位)、頸髄損傷の機能残存レベルとADLへの影響(特に自己導尿の可否)、排尿管理方法の種類と適応(間欠的自己導尿、持続的尿道カテーテル留置、膀胱瘻、圧迫排尿、骨盤底筋訓練、薬物療法)、各方法のメリット・デメリットと合併症リスク、自律神経過反射。