境界性パーソナリティ障害の患者が自傷行為をほのめかしたとき、作業療法士の行うべき対応はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
境界性パーソナリティ障害の患者が自傷行為を示唆した場合、自殺のリスク評価が最優先事項です。死への願望の有無を具体的に確認することは、患者の現在の危険度を把握し、その後の適切な対応(医療チームへの情報共有、緊急対応の必要性判断など)に繋がる最も重要なステップとなります。
選択肢ごとの解説
- 1. 緊急入院は専門医の判断による医療行為であり、作業療法士が独断で勧めるべきではありません。まず患者の具体的な状況を評価し、適切な医療チームに情報共有することが重要です。正しくは:患者の状況を評価し、主治医や精神科医、看護師などの医療チームに速やかに情報共有する。緊急入院の要否は医師が判断します。選びやすい理由:自傷行為の示唆は危険な状況であるため、最も安全な選択肢として緊急入院を考えたくなるかもしれません。混同注意:作業療法士の役割と医師の役割の混同。生命の危機に関わる判断は医師が行うべきです。
- 2. 正解。自傷行為の示唆があった場合、それが単なる注意引きなのか、本当に死を意図しているのかを確認することは、生命の安全確保の観点から最も重要です。自殺のリスク評価は緊急を要する対応の基本です。
- 3. 関わりを増やすこと自体は有効な場合もありますが、自傷行為の示唆に対しては、まず患者の安全を確保するためのリスク評価が最優先です。単に関わりを増やすだけでは、具体的な危機対応にはなりません。境界性パーソナリティ障害の患者に対する関わり方には、適切な距離感や構造化が重要となる場合も多く、一概に時間を増やすことが常に良いとは限りません。正しくは:患者の安全を最優先に、まずは死への願望や自傷行為の具体的な計画の有無を確認し、医療チームと連携して対応方針を決定する。選びやすい理由:境界性パーソナリティ障害の患者は見捨てられ不安が強く、関わりを増やすことで安心させられると考えるかもしれませんが、危機的な状況下では優先すべき対応が異なります。混同注意:治療的関係の構築と危機的状況への対応の優先順位の混同。
- 4. 過去の行為の回数は重要な情報ですが、緊急性の高い現在の「死にたい気持ちの有無」や「具体的な計画」の確認よりも優先されるべきではありません。現在のリスク評価が最優先です。正しくは:まず現在の自殺念慮や自傷行為の具体的な計画の有無を確認し、その上で必要に応じて過去の自傷行為歴も聴取する。選びやすい理由:過去の行動パターンを知ることは治療に役立つため、重要な情報であると判断しがちです。混同注意:現在の危機介入と長期的なアセスメントの優先順位の混同。
- 5. これは罰を与えるような対応であり、患者を突き放す行為として受け取られ、信頼関係を損ねる可能性があります。境界性パーソナリティ障害の患者は見捨てられ不安が強く、このような対応は逆効果になることが多いです。むしろ、適切なセルフケアや感情調整の方法を一緒に考え、治療的な関係を維持しながらサポートすることが求められます。正しくは:自傷行為をしないよう肯定的な言葉で促し、自傷行為以外の感情調整方法を一緒に検討する姿勢を示す。自傷行為があっても治療は継続されることを伝える。選びやすい理由:自傷行為を抑制するための指導として正論だと感じやすいかもしれませんが、患者の心理状態を考慮した適切な伝え方ではありません。混同注意:適切な境界設定と罰を与える行為の混同。また、患者の感情と行動に対する理解の欠如。
国試ポイント
境界性パーソナリティ障害患者の自傷行為示唆に対する、作業療法士の緊急時の初期対応における優先順位を問う問題です。生命の安全確保が最優先であることを理解しているか、また専門職としての役割範囲と限界を認識しているかが問われます。
混同注意
治療的関係の構築と危機介入の優先順位の混同、および作業療法士の役割と医師の役割の混同がポイントとなります。特に、見捨てられ不安が強い境界性パーソナリティ障害患者への対応は、安易な発言が関係性を悪化させる可能性があるため注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、まず『生命の安全確保』に関わる選択肢が最優先ではないかを確認し、次に『作業療法士の役割範囲』として適切な行動か、そして『患者の疾患特性』を考慮した適切なコミュニケーションであるか、という視点で判断する。
関連知識
境界性パーソナリティ障害の特性(衝動性、感情不安定性、見捨てられ不安など)、自殺・自傷行為のリスク評価(SLAP法など)、多職種連携の重要性、作業療法士の倫理と役割、危機介入の原則。