8歳の女児。脳性麻痺痙直型両麻痺である。ボール遊び時の姿勢設定を図に示す。この児の適切な姿勢設定はどれか。
画像の選択肢を選ぶと答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
脳性麻痺痙直型両麻痺の女児は股関節内転・屈曲、膝関節屈曲・内反などの下肢の痙性により立位や歩行が困難である。選択肢5の体位は、治療者が足関節を把持して股関節の外転位を保持し、両下肢の開脚を促すことで、下肢の痙性を抑制し、ボール遊びに集中できる安定した姿勢を提供する。これにより、体幹の安定性を高めつつ、上肢のリーチングや操作を促すことができるため、最も適切な体位設定といえる。
選択肢ごとの解説
- 1. 腹臥位での体重支持下でのボール遊びは、体幹の伸展パターンを誘発しやすく、脳性麻痺痙直型両麻痺の女児の下肢の痙性を助長する可能性があるため不適切である。また、体幹を安定させるための支持が不足している。正しくは:腹臥位を取る場合でも、骨盤や下肢を適切に支持し、痙性を抑制するような工夫が必要である。例えば、股関節を軽度屈曲・外転位に保つためのポジショニングクッションを使用するなど。選びやすい理由:腹臥位での活動は、一部の児にとって体幹伸展や抗重力伸展運動を促す目的で使用されることがあるため、有効であると誤解されやすい。混同注意:正常発達の児に対する体幹伸展活動と、痙性麻痺の児に対する痙性抑制を目的としたアプローチ。
- 2. 長座位は股関節の屈曲拘縮や膝関節の屈曲拘縮がある場合、安定した座位がとりにくく、代償的な姿勢(仙骨座りなど)になりやすい。また、下肢の痙性が強い場合、膝伸展位での股関節内転・内旋パターンが強まる可能性があり、安定した上肢操作が困難になる。正しくは:長座位で活動する場合、仙骨座りにならないように骨盤を前傾させ、股関節の屈曲拘縮がある場合は座面を高くするなど、適切なクッションやシーティングを用いて安定した姿勢を保持する必要がある。選びやすい理由:ボールを抱える姿勢は、上肢を使った活動に見えるため、一般的に遊びの姿勢として選択されやすい。混同注意:粗大運動能力が高く、ある程度の体幹安定性を持つ児の座位と、痙直型両麻痺の児の姿勢保持の困難さ。
- 3. 膝立ち位は体幹の抗重力伸展活動を促すが、脳性麻痺痙直型両麻痺の女児は股関節の伸展制限や膝関節の屈曲制限、足関節の尖足などにより、安定した膝立ち位を保持することが困難な場合が多い。また、過度な膝の屈曲や股関節の内転・内旋パターンを誘発する可能性もある。正しくは:膝立ち位で活動する場合、体幹の安定性を高めるための前方支持や、下肢の適切なポジショニングが必要となる。例えば、膝関節間にクッションを挟んで股関節の内転を抑制したり、足関節の尖足を防ぐための足部サポートを使用したりする。選びやすい理由:膝立ち位は、立位への移行段階の練習として用いられることがあり、機能的な姿勢であると誤解されやすい。混同注意:正常発達の児や、脳性麻痺であってもある程度の体幹機能と下肢の安定性を持つ児の膝立ち位と、痙性が強く不安定な児の姿勢。
- 4. 椅子座位は体幹の支持が得られるため一見安定しているように見えるが、画像では椅子がやや高すぎ、足底が接地できていない。足底が接地しない場合、下肢の痙性が増強されやすく、特に股関節の内転・内旋、膝関節の屈曲パターンが強まることで、体幹の安定性や上肢の操作性が低下する。正しくは:椅子座位で活動する場合、足底が確実に接地できるように足台を設置し、股関節・膝関節・足関節がそれぞれ90度程度に保たれるように椅子の高さを調整する必要がある。また、仙骨座りにならないよう骨盤の前傾を促すポジショニングが重要。選びやすい理由:椅子座位は一般的な活動姿勢であり、ある程度の安定性が得られるため、選択肢として魅力的である。混同注意:適切なシーティングによって調整された安定した椅子座位と、足底が接地しない不安定な椅子座位。
- 5. 正解。この体位は、治療者が足関節を把持して股関節の外転位を保持し、両下肢の開脚を促すことで、脳性麻痺痙直型両麻痺の女児に特徴的な股関節内転・屈曲、膝関節屈曲・内反といった下肢の痙性パターンを抑制し、体幹の安定性を高めている。これにより、上肢でのボール遊びに集中しやすくなり、機能的な上肢操作を促すことができるため、最も適切な体位設定である。選びやすい理由:治療者の介助が必要な姿勢であるため、自立的な活動に見えないかもしれないが、機能的な動きを引き出すための治療的介入としては非常に有効である。混同注意:単なる遊びの姿勢と、特定の病態に対する治療的なポジショニング。
国試ポイント
脳性麻痺の病態生理を理解し、そのタイプに応じた適切なアプローチを判断できるか。特に痙直型両麻痺の下肢の痙性に対するアプローチの知識が問われている。
混同注意
脳性麻痺は痙直型以外にもアテトーゼ型、失調型、低緊張型などがあり、それぞれに応じた体位設定やアプローチが異なる。痙直型では伸展パターンが強くなりやすく、屈曲や外転を促す体位が重要である。
次に同じ論点が出たら
同様の問題では、児の具体的な症状(例:痙性の程度、関節拘縮の有無、粗大運動能力レベル)を詳細に読み取り、その症状の改善または代償に最も効果的な体位設定や装具、介助方法を選択する。特に下肢の痙性による股関節内転・屈曲、膝関節屈曲・内反パターンを抑制し、機能的な動きを引き出す体位かどうかに着目する。
関連知識
脳性麻痺のGMFCS(粗大運動能力分類システム)やMACS(上肢能力分類システム)を理解し、児の機能レベルに応じた目標設定と介入方法を関連付けて覚える。また、痙性に対するボツリヌス療法やバクロフェン髄腔内投与、整形外科手術などの医学的介入についても理解しておく。