第6頸髄節まで機能残存している頸髄損傷患者に対する作業療法として適切でないのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
排便は重力の影響を受けるため、座位で行う方が生理的であり、便秘の予防にもつながります。頸髄損傷患者では、座位での排便を目標とすることが一般的です。臥位での排便は困難が多く、不適切です。C6レベルの残存機能(手関節背屈など)と補助具(万能カフなど)を活用すれば、着衣、コンピュータ操作、自己導尿は自立に向けた支援が可能です。また、起立性低血圧時の前屈位は、脳への血流を確保し症状を緩和するための適切な対処法です。
選択肢ごとの解説
- 1. C6レベルの患者は、手関節背屈、前腕回外、肘関節屈曲、肩関節屈曲・外転・伸展などの動作が可能ですが、手指の巧緻な動作は難しいため、ボタンやファスナーの操作が少ない被りタイプの衣服は比較的自立しやすいです。これは適切な支援です。正しくは:手指の巧緻性が低いC6レベルの患者にとって、被りタイプの上着はボタンやファスナーを操作する必要が少なく、着脱練習の導入として適切です。選びやすい理由:一見すると簡単な動作から始めることは理にかなっているように思えるため、迷うかもしれませんが、C6レベルの機能特性を考えると正しい選択肢です。混同注意:着替えの自立度が低い場合、介助の必要性を考えがちですが、残存機能で自立可能な方法を検討することがOTの役割です。
- 2. C6レベルの患者は上肢の運動機能がある程度残っているため、工夫次第でコンピューターの操作が可能です。音声入力、ジョイスティック、マウスの改造など、残存機能に応じたデバイスの検討は、QOL向上や社会参加のために非常に重要であり、適切な支援です。正しくは:C6レベルの残存機能(手関節の背屈など)を活用し、患者に合わせた入力デバイスを選定することは、情報社会への参加を促す上で極めて重要かつ適切な支援です。選びやすい理由:コンピュータ操作は高度な活動に思えるかもしれませんが、残存機能を利用した環境調整として非常に適切です。混同注意:手指の巧緻性が低いため、コンピュータ操作は無理だと決めつけがちですが、様々な補助具やデバイスの活用を検討するのがOTの役割です。
- 3. 正解。排便は重力の作用を利用するため、座位で行うのが生理的に自然であり、便秘の予防にも繋がります。臥位での排便は、重力に逆らうため困難が伴い、患者さんの身体への負担も大きくなります。C6レベルの患者は体幹の支持が不十分な場合でも、適切な介助や補装具があれば車椅子上や便座での座位保持が可能であり、座位での排便を目標とすることが適切です。したがって、臥位での排便を目標とすることは不適切です。正しくは:排便は、重力を利用しやすい座位(車椅子上や便座上)で行えるように環境を整えるのが適切です。選びやすい理由:自律神経系の障害がある脊髄損傷患者では排便管理が重要であり、安易に介助者が行いやすい臥位での排便を検討しがちですが、生理的観点や自立の可能性を考慮すると不適切です。混同注意:排泄管理の自立度と、排便の『生理的な体位』を混同しやすいです。C6レベルでも座位での排便は可能です。
- 4. C6レベルの患者は、手関節の背屈機能があるため、手の装具(万能カフなど)を活用することで、膀胱カテーテルを操作して自己導尿を行うことが可能です。これは尿路感染の予防やQOL向上に繋がり、適切な支援です。正しくは:C6レベルの残存機能と補助具を活用すれば自己導尿は十分に可能であり、自立支援として適切です。選びやすい理由:手指の細かな動きが難しいため、自己導尿は困難だと考えがちですが、万能カフなどの補助具を使うことで可能になります。混同注意:手指の巧緻性と、補助具を用いた動作遂行能力を混同しやすいです。万能カフなどの活用で可能になる動作は多いです。
- 5. 起立性低血圧の症状(めまい、気分不良など)が現れた際、上半身を前にかがめる前屈位は、下半身への血液の貯留を減らし、脳への血流を一時的に増やす効果があるため、症状の緩和に有効な対処法の一つです。これは適切な対処法です。正しくは:起立性低血圧の症状緩和には、頭部を低くする体位(前屈位など)が有効であり、適切な対処法です。選びやすい理由:低血圧で体を動かすことに抵抗を感じるかもしれませんが、この姿勢は脳血流を保つために有効です。混同注意:一般的な意識障害時の体位(仰臥位で足挙上など)と混同しやすいですが、起立性低血圧では前屈位が有効な場合があります。
国試ポイント
頸髄損傷患者の残存機能(特にC6レベル)を理解し、その機能に基づいた作業療法の内容の適切性を問う問題です。ADL、IADL、合併症への対処など、幅広い知識が要求されます。特に排泄管理における生理学的側面と、残存機能を最大限に活用した自立支援の視点が重要です。
混同注意
各レベルの残存機能と、それによって可能となるADLや手段的ADLの内容を正確に覚えていないと、適切な選択肢と不適切な選択肢の判断が難しくなります。特に、補助具の活用で可能になる動作と、本来の身体機能のみで可能な動作の区別が曖昧だと誤答しやすいです。
次に同じ論点が出たら
この論点から次に出題されるとすれば、C5やC7など異なるレベルの頸髄損傷患者に対する具体的な支援内容の適切性、あるいは同一レベルでも特定のADL(例:食事動作)に焦点を当てた問題、または各レベルで活用される具体的な自助具・補助具の知識を問う問題が考えられます。
関連知識
頸髄損傷の各レベル(C1-C8)における主な残存機能と、それに応じたADL(食事、更衣、排泄、整容など)の自立度、そして利用可能な自助具・補助具の種類。また、脊髄損傷に合併しやすい自律神経系障害(起立性低血圧、排泄機能障害など)への対処法も重要です。