多発性硬化症に対する作業療法で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
多発性硬化症(MS)では、体温の上昇が既存の神経症状を悪化させるウートフ現象(Uhthoff徴候)がよく見られます。そのため、運動療法や日常生活活動を行う際には、室温を低めに保つこと(一般的に25℃以下)や、冷却療法(冷たい飲み物、クールベストなど)が有効な対策となります。これにより、体温上昇を避け、症状の悪化を防ぎながらリハビリテーションを進めることができます。
選択肢ごとの解説
- 1. MS疲労の患者さんへの運動は、非常に軽い強度から始めるべきです。Borgスケール15は「ややきつい」に相当し、疲労を増悪させる可能性があります。正しくは:MS疲労の患者さんへの運動強度は、Borgスケールで11〜13(「楽である」〜「やや楽である」)程度の非常に低い強度から開始し、オーバーワークを避けるべきです。エネルギー保存の原則が重要です。選びやすい理由:運動療法がリハビリテーションの基本であるため、運動強度を設定すること自体は間違っていないと感じるかもしれませんが、多発性硬化症の疲労は一般的な疲労とは異なり、過度な運動は逆効果です。混同注意:通常の筋力増強運動における強度設定と混同しやすいです。MS疲労は病態生理が異なり、独自の注意が必要です。
- 2. 正解。ウートフ現象は、体温の上昇によって神経症状が悪化する多発性硬化症に特有の現象です。そのため、運動療法を行う際には、室温を低めに設定し、体温上昇を防ぐことが症状悪化の予防につながります。一般的に25℃以下が推奨されます。
- 3. 多発性硬化症の筋力低下は、中枢神経の脱髄によるもので、一般的な筋力トレーニングのように漸増抵抗運動を行うと、MS疲労を悪化させたり、他の症状を誘発したりするリスクがあります。エネルギー保存の原則に基づき、軽い負荷での反復や機能訓練が優先されます。正しくは:筋力低下に対しては、疲労を誘発しないよう、軽負荷での反復運動や、機能的な動作訓練を中心に実施します。全身のエネルギーマネジメントを考慮し、筋力増強のみを目的とした高負荷トレーニングは避けるべきです。選びやすい理由:筋力低下には筋力トレーニングという一般的な考え方から、この選択肢を選びがちです。しかし、多発性硬化症の筋力低下は背景が異なり、注意が必要です。混同注意:他の疾患における一般的な筋力トレーニングの原則(例:整形外科疾患や脳卒中回復期など)と混同しやすいです。
- 4. フレンケル体操は、主に深部感覚障害による運動失調に対して、視覚フィードバックを活用して協調性を改善する体操です。視力障害がある場合は、視覚フィードバックが利用できないため、フレンケル体操の適用は困難または不適切です。正しくは:視力障害がある場合は、聴覚フィードバックや触覚フィードバックを利用した運動、あるいはバランス訓練器具など、別の方法を検討する必要があります。フレンケル体操の適応は、視覚情報が利用できることが前提です。選びやすい理由:フレンケル体操が運動失調の改善に用いられる有名なリハビリテーション手法であるため、運動失調に注目して選んでしまいがちです。混同注意:フレンケル体操の適応疾患(例:脊髄癆など深部感覚障害)と、多発性硬化症の様々な症状(特に視力障害の有無)の組み合わせを正確に理解していないと間違えやすいです。
- 5. 有痛性強直性痙攣は、激しい痛みと筋肉の硬直を伴う症状であり、他動的関節可動域運動は、痙攣を誘発したり痛みを悪化させたりする可能性があります。急性期には安静を保ち、薬物療法などで症状をコントロールすることが優先されます。正しくは:有痛性強直性痙攣に対しては、まず痙攣誘発因子を避け、安静を保ち、薬物療法(抗痙攣薬など)で症状を緩和することを優先します。痛みが軽減され安定した状態であれば、非常に慎重に、ゆっくりとしたストレッチや軽い自動運動を検討することもありますが、痙攣を誘発しないように注意が必要です。選びやすい理由:関節可動域の維持や改善のために可動域運動が必要という一般的な認識から選んでしまいがちです。しかし、有痛性の急性期症状には適用できません。混同注意:一般的な関節拘縮予防のための他動運動と、急性期・有痛性の神経症状に対する対応を混同しやすいです。
国試ポイント
多発性硬化症の症状特性(特にMS疲労とウートフ現象)とその対応策を理解しているか、また一般的なリハビリテーション原則がMSの病態にどのように適用されるか(または適用されないか)を問う問題です。各選択肢で提示される症状と介入方法の組み合わせの適切性が問われます。
混同注意
多発性硬化症の多様な症状(疲労、筋力低下、協調運動障害、痙性、知覚障害など)と、それに対する一般的なリハビリテーション介入が、病態に照らして適切かどうかの判断が難しい。特に、MS疲労の特殊性や、ウートフ現象の体温管理の重要性が理解できているかが鍵となります。
次に同じ論点が出たら
多発性硬化症の問題が出た場合、まず「疲労(fatigue)とウートフ現象(Uhthoff徴候)」の有無と、それに対する「体温管理とエネルギー保存」の視点が入っているかを確認します。次に、他の神経症状(運動失調、筋力低下、痙縮など)に対して、通常の訓練法がそのまま適用できるか、あるいは病態特異的な配慮が必要かを判断します。
関連知識
多発性硬化症の病態生理(脱髄、炎症)、主な症状(視覚障害、感覚障害、運動障害、疲労、認知機能障害、膀胱直腸障害など)、ウートフ現象とMS疲労の管理、エネルギー保存の原則、各症状に対するOT介入(環境調整、自助具、運動療法、ADL訓練、認知リハビリテーション)。