認知症患者の認知機能を高めるための介入法として最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
リアリティオリエンテーションは、認知症患者の見当識障害に対し、時間、場所、人物などの現実的な情報を繰り返し提供することで、見当識の維持・改善、ひいては認知機能の向上を目指す、直接的な認知機能訓練法です。他の選択肢は、認知症患者の精神的安定や行動障害の軽減、社会性の維持などに重きを置いた介入法であり、認知機能の直接的な向上を主目的とはしません。
選択肢ごとの解説
- 1. 回想法は、過去の記憶を呼び起こすことで、精神的な安定、自己肯定感の向上、コミュニケーションの促進を図るものです。記憶の活性化は期待できますが、失われた認知機能を直接的に『向上』させることを主目的とする介入ではありません。正しくは:感情の安定や自己肯定感を促す目的の介入である。選びやすい理由:記憶を刺激するという点で認知機能と関連があると誤解されやすいですが、主に感情面や社会性の維持が目的です。混同注意:リアリティオリエンテーションと混同しやすいですが、回想法は過去の記憶に焦点を当て、リアリティオリエンテーションは現実の見当識に焦点を当てる点で異なります。
- 2. ピアサポートは、同じような経験を持つ人々がお互いを支え合うことで、精神的・社会的な側面をサポートするものです。認知症患者に対する認知機能の直接的な向上を目的とした介入ではありません。正しくは:精神的・社会的な側面をサポートする目的の介入である。選びやすい理由:社会的な交流が認知機能に良い影響を与えるという漠然としたイメージから選んでしまう可能性がありますが、本質的な目的とは異なります。混同注意:認知症カフェのような社会交流活動とは異なりますが、集団での交流という点で混同しやすいです。
- 3. マインドフルネスは、現在の瞬間の体験に意識を向けることで、ストレス軽減や精神的な安定を図るものです。認知症における失われた認知機能を直接的に『高める』ことを主目的とする介入ではありません。注意機能への良い影響は期待できる場合もありますが、全体的な認知機能の向上とは異なります。正しくは:ストレス軽減や精神的な安定を図る目的の介入である。選びやすい理由:注意や集中力の向上に繋がる可能性から、認知機能全般の向上と誤解されやすいです。混同注意:広範な認知訓練と混同しやすいですが、マインドフルネスは意識の向け方に焦点が置かれています。
- 4. バリデーション療法は、認知症患者の言動を否定せず、その人の感情や現実を受け入れ、共感することで、不安を軽減し、尊厳を保つことを目的とします。感情的な安定や行動障害の軽減には有効ですが、認知機能の直接的な向上を目指すものではありません。正しくは:感情的な安定と行動障害の軽減を図る目的の介入である。選びやすい理由:患者中心のケアであり、良いケア方法であると共感しやすいですが、設問の「認知機能向上」の目的とは異なります。混同注意:コミュニケーション技法やケアの基本姿勢と混同しやすいです。
- 5. 正解。リアリティオリエンテーション(Reality Orientation: RO)は、認知症患者の見当識障害に対し、時間、場所、人物などの現実的な情報を繰り返し提供することで、現実への認識を促し、見当識の維持・改善を図る介入法です。これは認知機能(特に見当識)を直接的に『高める』ことを目的とした訓練であり、設問の意図に最も合致します。
国試ポイント
認知症患者に対する様々な介入法について、それぞれの目的や主な効果を正確に理解しているかを問う問題です。特に、認知機能の『向上』を直接的な目的とする介入法を区別できるかが重要となります。
混同注意
回想法やバリデーション療法は、認知症患者への有効な介入法ですが、目的が認知機能の直接的な向上とは異なります。回想法は記憶の刺激や感情の活性化、バリデーション療法は感情の安定や行動障害の軽減に重点が置かれるため、混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、認知症の非薬物療法において、どの介入法が「認知機能の維持・向上」に特化しているか、どの介入法が「BPSDの軽減や精神的安定」に特化しているか、それぞれの目的を明確に区別できるかが重要になります。また、各介入法の具体的な実施内容も問われる可能性があります。
関連知識
認知症ケアにおける非薬物療法(薬を使わない治療法)全般の知識が必要です。具体的には、音楽療法、作業療法、園芸療法、学習療法などの各療法の具体的な内容とその目的、また認知症の行動・心理症状(BPSD)への対応方法も関連知識となります。