30歳の女性。断端長25 %残存の左前腕切断。肘関節が屈曲30°に制限されている。屈曲運動を補い、腹部前面での両手動作を可能にするため能動義手を作製する。ソケットと肘継手の組合せで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
前腕切断で断端長が短い(25%残存)場合、上腕と前腕の連結を分離させるスプリットソケットが適応となります。これにより、残存する肘関節の動きを最大限に活用できます。また、肘関節の屈曲制限(30°)がある状況で、腹部前面での両手動作を可能にするためには、肘関節の動きを補う機能が必要です。倍動肘ヒンジ継手(複動継手)は、上腕と前腕の相対的な運動を増幅させることで、実際の関節可動域よりも広い義手の動きを実現し、屈曲制限を効果的に補うことができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 差し込み式ソケットは一般的に断端長が十分な場合に用いられ、この症例のように断端が短く、肘関節の可動域制限がある場合には不適切です。また、倍動肘ヒンジ継手は関節制限がある場合に有効な場合もありますが、ソケットとの組み合わせが不適切です。正しくは:この症例の場合、ソケットはスプリットソケットが適しており、継手も可動域制限を補うタイプのものが望ましいです。選びやすい理由:倍動肘ヒンジ継手は肘関節の動きを補助する機能があるため、制限があるケースで選びやすいかもしれませんが、ソケットの選択が誤りです。混同注意:断端長が比較的長い場合の義手と、短い場合の義手の選択肢を混同しやすいです。
- 2. 正解。断端長が25%と短く、肘関節の屈曲制限(30度)があるため、スプリットソケットが適しています。スプリットソケットは、断端を覆うソケット部分と上腕を覆うカフ部分が分離しており、肘関節の動きを妨げずに能動操作が可能です。また、倍動肘ヒンジ継手(複動継手)は、肘関節の屈曲制限がある場合に、上腕と前腕の相対的な運動を増幅させることで、残存する関節可動域以上の動きを義手にもたらし、屈曲を補うことができます。これにより、腹部前面での両手動作が可能になります。
- 3. ノースウエスタン式ソケットは、主に断端が長い場合や、上腕骨の回旋を利用したい場合に用いられ、断端が短く肘関節の屈曲制限がある本症例には不適切です。能動単軸肘ヒンジ継手は単純な単一軸の動きしか提供しないため、肘関節の屈曲制限を補う効果は限定的です。正しくは:スプリットソケットと倍動肘ヒンジ継手の組み合わせが適切です。選びやすい理由:「能動」という言葉に引かれやすいですが、具体的な機能と症例のニーズが合致しません。混同注意:様々な種類のソケットや継手の特徴と、それぞれの適応症例を混同しやすいです。
- 4. ミュンスター式ソケットは、主に断端長が中程度の場合に用いられ、短断端の症例には不適切です。また、肘関節の屈曲制限がある場合に、軟性たわみ式継手ではその制限を補う効果が期待できません。正しくは:スプリットソケットと倍動肘ヒンジ継手の組み合わせが適切です。選びやすい理由:「軟性」という言葉から、関節に優しい印象を受けるかもしれませんが、機能的な補完には向きません。混同注意:各ソケットの適応断端長と、継手の種類による機能の違いを混同しやすいです。
- 5. ミュンスター式ソケットは、断端長が中程度の場合に用いられることが多く、短断端である本症例には適しません。能動単軸肘ブロック継手は、単軸の動きに加え、特定の角度で固定する機能を持つことがありますが、肘関節の屈曲制限を補い、より広い可動域を作り出すという本症例の目的に対しては、倍動肘ヒンジ継手の方が優れています。正しくは:スプリットソケットと倍動肘ヒンジ継手の組み合わせが適切です。選びやすい理由:「能動」や「ブロック」といった機能的な単語に魅力を感じるかもしれませんが、症例の具体的な問題解決にはつながりません。混同注意:ミュンスター式ソケットの適応と、ブロック継手の機能的な限界を混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、前腕義手におけるソケットの種類と肘継手の選択に関する知識を問うものです。特に、断端長と残存する関節可動域といった患者の身体状況に合わせて、最も機能的な組み合わせを選ぶ能力が求められます。短断端での能動義手、および関節可動域制限がある場合の継手選択が重要ポイントです。
混同注意
各ソケット(差し込み式、スプリット、ミュンスター式、ノースウエスタン式など)の適応断端長や特徴、および各肘継手(単軸、倍動、フリーロックなど)の機能と適応症例が混同されやすい。特に、「能動」という言葉に惑わされず、具体的な機能的メリットを理解することが重要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、まず患者の断端長と残存関節機能(可動域、筋力など)を正確に把握し、それに最も適したソケットの種類を選択します。次に、患者が達成したい動作(例:両手動作、特定の作業)や、関節可動域制限の程度を考慮し、そのニーズを満たすことができる肘継手を選択します。
関連知識
前腕義手の各ソケットの特徴(断端長、支持方法)、肘継手の種類(単軸、倍動、フリーロック、固定式など)とその機能、およびそれらの組み合わせによる能動義手の操作原理と適応症例。特に、短断端や関節可動域制限がある場合の義手選択の基本原則。