「自分は劣っている」と自信が持てず、他人からの批判や拒絶に敏感で対人関係や社会参加が損なわれている。最も考えられるパーソナリティ障害はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
不安性(回避性)パーソナリティ障害は、自己の無能感や魅力のなさを強く感じ、「人から嫌われるのではないか」という不安から、他者との関係を避けることが特徴です。批判や拒絶に極度に敏感であり、それが社会的な孤立につながります。問題文の記述は、このパーソナリティ障害の診断基準に合致しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 妄想性パーソナリティ障害は、他人が自分を害しようとしている、利用しようとしているなど、根拠のない不信感や疑念を抱くことが特徴です。問題文のような自己劣等感や批判への過敏さとは異なる症状です。正しくは:他人の動機を悪意のあるものと解釈し、常に疑念を抱いている。選びやすい理由:「対人関係が損なわれている」という部分に注目し、何らかの対人関係の問題と関連付けようとするかもしれませんが、具体的な症状が異なります。混同注意:統合失調症の妄想症状や、他のパーソナリティ障害の対人関係上の問題と混同することがあります。
- 2. 依存性パーソナリティ障害は、自分一人で物事を決定したり行動したりできず、他者に世話をしてもらうことを過度に必要とし、離れることへの不安が強いことが特徴です。問題文にあるような自己劣等感や批判への過敏さとは少し異なります。正しくは:他者からの世話や助言を過度に必要とし、一人でいることに強い不安を感じる。選びやすい理由:「自信が持てず」という部分から、他者に頼る傾向があるのではないかと誤解する可能性がありますが、依存性パーソナリティ障害の核は「自律性の欠如」です。混同注意:回避性パーソナリティ障害の「自信のなさ」と混同するかもしれませんが、依存性の場合は他者にくっつくことで不安を解消しようとします。回避性は人から距離を取ろうとします。
- 3. 非社会性パーソナリティ障害は、他者の権利を無視し、侵害するパターンを特徴とします。法律や社会規範に違反する行動、衝動性、無責任さが見られます。問題文の記述とは全く異なる症状です。正しくは:他者の権利を平然と侵害し、法や社会のルールを無視する。選びやすい理由:「対人関係が損なわれている」という点だけに着目すると、あらゆるパーソナリティ障害で対人関係の問題が生じるため、混乱しやすいかもしれませんが、根本的な問題の質が違います。混同注意:反社会性パーソナリティ障害やサイコパシーと混同することがあります。
- 4. 統合失調質パーソナリティ障害は、他者との親密な関係を望まず、感情表現が乏しく、孤立を好む傾向があります。他人からの批判や拒絶を恐れるというよりは、そもそも関係自体に興味がないことが多いです。問題文のような自己劣等感からの回避とは性質が異なります。正しくは:親密な人間関係を望まず、単独行動を好み、感情の幅が狭い。選びやすい理由:「対人関係や社会参加が損なわれている」という部分が共通しているように見えますが、その原因が「自己劣等感と批判への過敏さ」か「他者への関心のなさ」かで大きく異なります。混同注意:統合失調型パーソナリティ障害や、自閉スペクトラム症と混同することがあります。
- 5. 正解。不安性(回避性)パーソナリティ障害は、自己評価が低く、他人からの否定的な評価や拒絶に対する恐怖が非常に強く、そのため社会的な交流や対人関係を避ける行動パターンが特徴です。問題文の「自分は劣っていると自信が持てず、他人からの批判や拒絶に敏感で対人関係や社会参加が損なわれている」という記述は、このパーソナリティ障害の典型的な特徴と完全に一致します。
国試ポイント
パーソナリティ障害の鑑別診断において、それぞれの障害の核となる症状や行動パターンを正確に理解しているかが問われています。特に、対人関係の問題がどのような動機やメカニズムで生じているかを見極めることが重要です。
混同注意
社交不安症(社会恐怖)と混同しやすいですが、パーソナリティ障害はより広範な生活領域にわたる持続的なパターンであり、幼少期から青年期にかけて形成されることが多いです。また、依存性パーソナリティ障害の自信のなさや、統合失調質パーソナリティ障害の対人関係の少なさとも混同しうるため、鑑別ポイントを明確に理解する必要があります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、他のパーソナリティ障害の典型的な症状と、その症状がどのような心理的要因(例:自己評価、他者への信頼、衝動性など)から生じているのかに着目して選択肢を比較検討する。
関連知識
DSM-5やICD-10におけるパーソナリティ障害の分類と診断基準、特にクラスターA、B、Cに属する各障害の特徴を理解しておくことが重要です。回避性パーソナリティ障害はクラスターC(不安・恐怖型)に属します。