22歳の女性。幼少期に両親と死別したが、祖父母の支援などで問題なく学校生活を過ごした。学業成績は良かったが、感情が不安定で自傷行為を繰り返し、精神科クリニックに通院しながら高校を卒業した。卒業後は事務職として就職したが、感情が不安定でしばしばトラブルを起こした。最近、些細なことで友人と喧嘩になり、激怒して大量服薬して入院となった。入院後、早期に作業療法が開始された。この患者にみられる特徴はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
この患者は、感情の不安定さ、自傷行為の繰り返し、些細なことで激怒し大量服薬に至るという行動から、感情のコントロールが困難であり、衝動的に行動を起こす特徴が明確に示されています。これらは衝動行為の典型的な例であり、特に境界性パーソナリティ障害でよく見られる症状です。
選択肢ごとの解説
- 1. 本文に完璧主義を示す具体的な記述はありません。学業成績が良かったことと、完璧主義は直接関連しません。正しくは:「何事も完璧でなければ気が済まず、常に高い目標を設定し、達成できないとひどく落ち込む」といった記述があれば完璧主義の特徴を示します。選びやすい理由:学業成績が良いという記述から、真面目な性格を連想し、完璧主義と誤解する可能性があります。混同注意:真面目さ、高学歴、強迫性パーソナリティ障害の特性などと混同されやすいです。
- 2. 作為体験は統合失調症などで見られる精神病症状であり、「自分の行動や感情が他者によって操られている」と感じるものです。本人の意思で自傷行為や服薬が行われているため、作為体験ではありません。正しくは:「自分の考えが他人に操られていると感じる」「自分の行動が誰かに動かされているようだ」といった表現があれば作為体験です。選びやすい理由:精神科領域の専門用語であるため、内容を正確に理解していないと選択してしまう可能性があります。混同注意:幻覚、妄想、思考伝播などの精神病症状と混同されやすいです。
- 3. 正解。患者は「感情が不安定で自傷行為を繰り返す」「些細なことで友人と喧嘩になり、激怒して大量服薬」という記述があり、これらは感情のコントロールが困難で、計画性がなく、瞬間的な感情に基づいて自己破壊的な行動をとる衝動行為の典型的な例です。特に境界性パーソナリティ障害でよく見られます。選びやすい理由:直接的な記述であるため、選択しやすいです。
- 4. 脱力発作(カタプレキシー)は、強い情動刺激(笑い、怒りなど)によって突然全身の筋緊張が消失する発作で、ナルコレプシーの随伴症状として知られています。本事例では身体的な脱力に関する記述はありません。正しくは:「激しく怒った直後に全身の力が抜け、立てなくなった」といった記述があれば脱力発作を示唆します。選びやすい理由:「激怒して」という表現から、身体的な反応を連想し、脱力発作と誤解する可能性があります。混同注意:てんかん発作、失神、ヒステリー性の発作などと混同されやすいです。
- 5. 振戦せん妄は、アルコール離脱症状の重症型で、意識障害、幻覚、著しい振戦を特徴とします。本事例ではアルコール摂取や離脱に関する情報がなく、意識障害や著しい振戦の記述もありません。正しくは:「飲酒を長期間続けていた患者が、飲酒をやめた数日後に全身の震えと意識がぼんやりした状態になり、実際にはいない虫が見えると言い出した」といった記述があれば振戦せん妄を示します。選びやすい理由:精神科に関連する用語であるため、知識が曖昧な場合に選択肢として考えてしまう可能性があります。混同注意:他のせん妄状態、統合失調症の症状、薬物中毒の症状などと混同されやすいです。
国試ポイント
パーソナリティ障害、特に境界性パーソナリティ障害の症状に関する知識が問われています。事例から症状の特徴を正確に把握し、適切な医学用語と結びつける能力が求められます。
混同注意
衝動行為は、怒りの爆発、自傷行為、大量服薬、無謀な運転など多様な形で現れます。似たような症状を示す他の精神疾患(例:双極性障害の躁状態、薬物依存症)との鑑別も重要ですが、本設問では提示された情報から最も合致する特徴を選ぶことがポイントです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の症例問題が出題された場合、患者の行動や感情表現の特徴から、どのようなパーソナリティ障害が疑われるかを判断し、その障害に典型的な症状(衝動性、対人関係の問題、自己像の不安定さなど)を見極めることが重要です。
関連知識
境界性パーソナリティ障害の診断基準(DSM-5)、症状(感情不安定性、衝動性、対人関係の不安定さ、自己像の混乱、自傷行為、自殺企図など)、作業療法での関わり方(感情調整スキルの習得支援、対人関係スキルの向上、自己肯定感の育成など)