26歳の男性。C6レベルの頸髄損傷完全麻痺。仕事中の事故により受傷し入院。翌日からリハビリテーションが開始され継続している。受傷後1か月での徒手筋力テストの結果を表に示す。受傷後2か月で到達可能と予測される動作はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
C6脊髄損傷の患者は、総指伸筋や長・短橈側手根伸筋の機能が残存するため、手関節の背屈は可能です。これにより、万能カフを装着し、前腕の回外・回内運動を利用することで、フォークやスプーンを保持した食事動作が実現可能と見込まれます。受傷後1か月の時点からリハビリテーションが継続されているため、2か月後にはこのレベルでの基本的なADL獲得が見込まれます。
選択肢ごとの解説
- 1. C6レベルの完全麻痺では、手指の巧緻な動きが困難であり、更衣動作は自立が難しい。特にズボンやシャツの着脱には手指の機能と体幹の安定性が必要となる。正しくは:C7レベル以上で上肢機能の改善が見られれば、自助具を用いて更衣動作が可能になる場合がある。選びやすい理由:上肢の一部機能が残存するため、簡単な更衣なら可能と誤解しやすいため。混同注意:C7レベル以上の残存機能による自立更衣と混同しやすい。C6では手指巧緻性が不足する。
- 2. C6レベルの完全麻痺では、手指の機能が不十分なため、カテーテルを挿入するなどの自己導尿動作は困難である。特にカテーテルの細かな操作や陰部洗浄には手指の巧緻な動きが不可欠である。正しくは:C7-C8レベル以上で手指の巧緻性が改善すれば、自助具を用いて自己導尿が可能になる場合がある。選びやすい理由:排泄管理の重要性から、何らかの形で自立が可能と期待しやすいため。混同注意:C7-C8レベルの残存機能や、看護師による介助、または下肢装具など他のADL補助具との混同。
- 3. C6レベルの完全麻痺では、上腕三頭筋(肘伸展)が麻痺しているため、プッシュアップは不可能である。プッシュアップには強い肘伸展筋力と肩関節の安定性が必要となる。正しくは:C7レベルで上腕三頭筋機能が残存していれば、プッシュアップが可能となる。選びやすい理由:肩関節周囲の筋力の一部が残存するため、体幹支持の一部が可能と誤解しやすいため。混同注意:C7レベルで上腕三頭筋が機能することによるプッシュアップ能力と混同しやすい。
- 4. 正解。C6レベルの脊髄損傷では、手関節の背屈機能(長・短橈側手根伸筋)が残存しており、これを利用して万能カフを装着することで、スプーンやフォークを把持し、食事動作を行うことが可能である。前腕の回内外運動と手関節の固定により、口に運ぶ動作が可能となる。選びやすい理由:C6レベルで手指の巧緻運動は難しいものの、自助具を活用することで特定のADLが自立可能となるため、その知識がある受験者にとっては正答を選びやすい。混同注意:C6レベルの機能残存範囲と、自助具の適切な使用方法に関する知識。
- 5. C6レベルの完全麻痺では、体幹筋と下肢の筋力が麻痺しており、上腕三頭筋も麻痺しているため、ベッドから車椅子への自力移乗は非常に困難である。移乗には強い上肢支持力(特に肘伸展)と体幹の安定性が必要となる。正しくは:C7レベル以上で上腕三頭筋機能が残存し、さらに体幹の安定性やプッシュアップ能力が向上すれば、自力または一部介助での移乗が可能になる場合がある。選びやすい理由:リハビリテーションによる機能改善への期待から、早期の移乗自立を想像しやすいため。混同注意:C7以上のレベルで上肢の支持力が向上した場合の移乗能力と混同しやすい。C6では肘伸展筋がないためプッシュアップができない。
国試ポイント
脊髄損傷の損傷レベルと残存機能、およびそれに伴うADL獲得能力を理解すること。特にC6レベルの機能と自助具の活用。
混同注意
C6とC7の残存機能の区別、特にC7でトリセプス(上腕三頭筋)機能が回復することによるプッシュアップ能力の違い。
次に同じ論点が出たら
脊髄損傷の症例問題では、損傷レベルから残存する筋力を判断し、その筋力で可能な動作や使用する自助具を推測する。特に、「受傷後〇か月」という経過から、リハビリテーションによるADL獲得の進捗を考慮する。
関連知識
C5脊髄損傷では肘屈曲、C7では肘伸展が残存する。各損傷レベルにおけるキーマッスルとその支配神経、および各レベルで獲得可能なADL(食事、更衣、移乗、排泄管理)を合わせて覚える。自助具の適応についても理解を深める。