80歳の女性。2年前に夫と死別し、平屋の持ち家に1人暮らし。3か月前に屋内で転倒し、右大腿骨頸部骨折で入院した。人工骨頭置換術後のADLは杖歩行で、入浴のみ見守りでその他は自立し自宅退院となった。退院時のHDS-Rは28点であった。要支援1と認定され、通所リハビリテーションを利用するにあたり、担当作業療法士が自宅訪問することとなった。初回訪問時の対応で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
作業療法士の初回訪問では、対象者本人の視点に立ち、現在の生活でどのような点に困っているのかを聴取することが最も重要です。これにより、具体的なニーズや問題点を把握し、今後のリハビリテーション目標や介入計画の立案の基礎とします。他の選択肢は、情報収集の優先順位が低かったり、プライバシー侵害の可能性があったり、時期尚早な提案であったりするため不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 初回訪問の段階で具体的な住宅改修を提案するのは時期尚早です。まずは本人の生活状況や困りごとを把握し、その上で必要であれば住宅改修を検討すべきです。正しくは:生活上の問題点や本人の希望を十分に把握した上で、必要に応じて住宅改修の可能性について情報提供や検討を促す。選びやすい理由:転倒歴があり、骨折で入院していたため、住宅改修は必要そうに思えるかもしれません。混同注意:評価前の介入と評価後の介入の順序
- 2. 年金の受給額は個人のプライバシーに関わる非常にデリケートな情報であり、初回訪問時に作業療法士が直接的に聴取すべき情報ではありません。リハビリテーション計画に直接関係がなく、不適切です。正しくは:金銭的な問題が間接的に生活に影響している可能性があれば、必要に応じて介護支援専門員(ケアマネジャー)などの関係機関と連携して情報収集や支援を検討する。選びやすい理由:経済状況がサービス利用に影響を与える可能性があるため、気になるかもしれません。混同注意:リハビリテーションに直接関係する情報とそうでない情報、および個人情報の取り扱い
- 3. このケースでは、すでに通所リハビリテーションの利用が決定しており、要支援認定を受けています。初回訪問で、すぐに訪問作業療法を勧めるのは、本人の現在の状況や希望、通所リハビリテーションの効果を評価する前に、介入方法を限定する行為であり不適切です。正しくは:通所リハビリテーションの利用状況や、自宅での生活における具体的課題を評価した上で、必要であれば他のサービス利用の選択肢として情報提供する。選びやすい理由:自宅での生活状況を見ていると、訪問リハビリの必要性を感じるかもしれませんが、まずは本人の希望と現在のサービス利用状況を尊重すべきです。混同注意:提示されているサービスと他のサービスの優先順位、または本人の意向確認の重要性
- 4. 夫との死別は重要な情報ですが、その具体的な死亡原因を初回訪問時に掘り下げることは、現在のリハビリテーションや生活上の困りごとの把握に直接結びつかず、不必要な心理的負担を与える可能性があります。正しくは:死別が本人の精神的・社会的な状態に影響を与えている可能性を考慮しつつ、まずは現在の生活やリハビリテーションに関する困りごとを優先して聴取する。必要であれば、精神的な支援についてはケアマネジャー等と連携して対応する。選びやすい理由:精神的な側面も生活に大きく影響するため、夫の死が背景にあると考えるかもしれませんが、尋ね方やタイミングが重要です。混同注意:重要な背景情報と、その情報を掘り下げる適切性・タイミング
- 5. 正解。初回訪問の最も重要な目的は、対象者の現在の生活状況や、本人が感じている困りごと、ニーズを正確に把握することです。これにより、今後の通所リハビリテーションの目標設定や介入計画に繋げることができます。
国試ポイント
作業療法士の初回訪問における評価の優先順位と、対象者中心の視点、および適切な情報収集のあり方が問われています。特に、専門職としてどのような情報を、どのような順序で、どのように収集すべきかという倫理的・専門的判断が求められます。
混同注意
介入の具体的な提案(住宅改修、訪問リハ)を評価よりも優先してしまうこと、または直接的なリハビリに関係ないデリケートな個人情報(年金、死因)を不適切に聴取してしまうこと。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず「対象者自身の主観的な困りごとやニーズを把握する選択肢」を優先的に検討する。次に、客観的な評価や具体的な介入提案は、その困りごとを把握した後に続くプロセスであると判断する。
関連知識
作業療法における評価プロセスの基本、インテーク面接の原則、介護保険制度におけるケアマネジメントの役割、個人情報保護の原則、生活機能の評価(ADL、IADL)、HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の目的。