78歳の女性。布団を持ち上げようとした際、背部から腹部への強い帯状痛を生じ、寝返りも困難となったため入院となった。入院時のエックス線写真(別冊No. 3A)とMRI T2強調像(別冊No. 3B)とを別に示す。この患者の病態で適切なのはどれか。2つ選べ。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1・5番
解説
78歳の高齢女性が軽微な動作で急激な背部痛を生じ、寝返りも困難になったという状況は、典型的な脊椎椎体圧迫骨折の症状です。X線写真では椎体の形態変化(楔状変形など)が、MRI T2強調像では骨折部位に一致する高信号(骨髄浮腫)が確認でき、急性期の圧迫骨折と診断されます。高齢女性における軽微な外力による圧迫骨折は、基礎に骨粗鬆症があることを強く示唆するため、「骨粗鬆症」も適切な病態です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。78歳の高齢女性で、軽微な外力(布団を持ち上げる動作)で背部痛を生じ、画像所見で椎体圧迫骨折が確認できることから、基礎に骨粗鬆症が存在すると考えられます。骨粗鬆症は椎体圧迫骨折の主要な原因です。混同注意:閉経後骨粗鬆症は女性に多く、高齢になるほど有病率が高まります。他の脊椎疾患と異なり、全身性の骨代謝異常であり、画像所見(圧迫骨折)と年齢・性別から推測されます。
- 2. 脊椎分離症は、椎弓の峡部における疲労骨折で、主に若年者に多く、腰椎の伸展動作で痛みが生じやすいです。本症例のような高齢者の圧迫骨折とは病態が異なります。画像上も分離所見はありません。正しくは:若年者のスポーツ活動による腰痛、腰椎の伸展時痛選びやすい理由:腰痛を伴う脊椎疾患であるため。混同注意:脊椎すべり症や脊柱管狭窄症と合併することがありますが、これらとは独立した病態です。
- 3. 脊柱管狭窄症は、脊柱管が狭くなり神経が圧迫されることで、間欠性跛行や下肢のしびれなどが主な症状となります。本症例の症状は主に急性背部痛と寝返り困難であり、圧迫骨折が主病態です。画像所見からも脊柱管狭窄の明確な指摘はありません。正しくは:間欠性跛行、下肢のしびれや痛み選びやすい理由:高齢者に多い脊椎疾患であり、腰痛を伴うため。混同注意:椎間板ヘルニアや脊椎すべり症との鑑別が必要です。画像所見では脊柱管の形態と神経根の圧迫を確認します。
- 4. 椎間板ヘルニアは、椎間板が突出して神経を圧迫することで、主に下肢の神経症状(坐骨神経痛など)を引き起こします。本症例は急性背部痛と寝返り困難が主症状であり、MRI T2強調像でも椎間板ヘルニアの明確な所見は見られません。圧迫骨折による痛みが考えられます。正しくは:下肢の坐骨神経痛、足のしびれ・筋力低下選びやすい理由:腰痛の原因として一般的な疾患であり、MRI画像も示されているため。混同注意:脊柱管狭窄症と症状が似ていることがありますが、病態は椎間板の突出と神経根圧迫です。
- 5. 正解。「布団を持ち上げようとした際に背部から腹部への強い帯状痛を生じ、寝返りも困難となった」という急性発症の背部痛と、X線写真およびMRI T2強調像で椎体の形状変化(楔状変形や高さの減少)と骨折線、骨髄浮腫(T2強調像での高信号)が確認できるため、脊椎椎体圧迫骨折であることは確実です。混同注意:軽微な外力での発症や高齢者に多いことから、骨粗鬆症性椎体圧迫骨折と診断されます。本選択肢は病態そのものを指しています。
国試ポイント
高齢者における急性背部痛の主たる原因である脊椎椎体圧迫骨折の臨床症状と画像所見を正確に理解しているか。また、その背景にある骨粗鬆症との関連性を理解しているかを問う問題です。レントゲンとMRIの両方の画像から総合的に判断する能力が求められます。
混同注意
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった他の脊椎疾患と、圧迫骨折の症状・画像所見を混同しないように注意が必要です。特に高齢者では複数の脊椎疾患が合併していることもありますが、問題文の症状と提示された画像から最も合致する病態を識別することが重要です。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合は、まず患者の年齢、性別、発症機序(外傷の有無や程度)、主訴(痛み、しびれ、麻痺など)を把握します。次に、X線写真で骨形態の異常(椎体の圧潰、変形、骨棘など)を確認し、MRI T2強調像で軟部組織(椎間板、靭帯、神経)や骨髄の状態(浮腫の有無)を確認して、診断を確定します。特に、急性期の圧迫骨折ではT2強調像での高信号が特徴的です。
関連知識
骨粗鬆症の診断基準、危険因子、予防。椎体圧迫骨折の疫学、症状、画像診断(X線、CT、MRI)、治療(保存療法、手術療法)。圧迫骨折後の二次性骨折予防。高齢者の転倒予防。