32歳の女性。右利き。診断名は右乳がん(ステージⅡ)。右乳房切除術と腋窩リンパ節郭清術施行目的で入院となった。夫と2歳の子どもとの3人暮らし。職業は保育士。術前の右上肢機能は良好であり、セルフケアや家事動作は自立していた。術後作業療法について正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
腋窩リンパ節郭清術後の患者は、術側上肢のリンパ浮腫発症リスクが高まります。重量物を持つことや、術側の腕への過度な負担はリンパ浮腫を誘発・悪化させる主要な要因であるため、これを避けるよう指導することは術後作業療法において非常に重要です。リンパ浮腫の予防・管理は、術後リハビリテーションの中心的課題の一つです。
選択肢ごとの解説
- 1. 日光浴は、皮膚の刺激や火傷のリスクを伴うため、術後特に放射線治療を受けた部位では推奨されません。また、リンパ浮腫の悪化リスクがあるため避けるべきです。正しくは:術後は、術側の皮膚の保護やリンパ浮腫の予防のために、日光浴は避けるか、十分に日焼け対策を行うよう指導する。選びやすい理由:気分転換やビタミンD生成など一般的な健康効果があるため、一見良さそうに見える。混同注意:一般的な健康増進策と、特定の疾患・術後の禁忌事項の区別。
- 2. 術後の上肢固定は、肩関節の可動域制限や筋力低下を招き、ADLの早期獲得を阻害します。早期からの適切な運動が推奨されます。正しくは:術後は、安静を保ちつつも、合併症予防のために早期から段階的に術側上肢の運動を開始するよう指導する。選びやすい理由:安静にすることが術後の回復に良いという一般的なイメージから選んでしまう可能性がある。混同注意:安静臥床と、早期離床・早期運動の区別。
- 3. 職業選択の自由を侵害する行為であり、患者さんの意向を無視した一方的な助言は適切ではありません。患者さんの生活背景や希望を尊重し、現在の職業継続の可能性や、必要に応じて職場環境調整の支援を検討すべきです。正しくは:患者さんの意向を尊重し、現在の保育士としての業務継続が可能か、職場環境の調整が必要かなどを患者さんと話し合い、必要に応じて支援を検討する。選びやすい理由:保育士は体力を使う仕事であり、術後の上肢への負担を考慮すると事務職の方が安全だと短絡的に考えてしまう。混同注意:医療従事者としての助言と、患者の自己決定権の尊重。
- 4. 正解。腋窩リンパ節郭清術後は、リンパの流れが阻害されるため、術側の腕に過度な負担をかけるとリンパ浮腫を発症・悪化させるリスクが高まります。そのため、重い物を持つなどの高負荷な動作は避けるよう指導することが重要です。選びやすい理由:この選択肢は直接的な正解なので、選択の迷いは少ない。
- 5. 術後早期からの適切なリハビリテーションの一環として、医師の指示に基づき、物干し動作のような日常生活動作を段階的に再開することは推奨されます。1か月間の完全な制限は不適切であり、かえって関節拘縮や筋力低下を招く可能性があります。ただし、腕を高く上げる、繰り返し行うなどの負担の大きい動作は初期には制限する場合もありますが、1か月間の全面禁止は過度な制限です。正しくは:術後早期から、医師の指示やリハビリテーションの進捗に応じて、無理のない範囲で物干し動作などの日常生活動作を段階的に再開するよう指導する。選びやすい理由:腕を高く上げる動作は術後早期には負担になるため、制限する方向性自体は間違いではないと錯覚しやすい。しかし、1か月間の全面禁止は過剰である。混同注意:術後早期の運動制限と、過度な運動制限の区別。早期からのリハビリテーションの重要性。
国試ポイント
乳がん術後のリンパ浮腫予防に関する基本的な知識と、そのための具体的な生活指導が問われています。特に、過度な安静や過剰な制限ではなく、適切な活動制限と早期リハビリテーションのバランスを理解しているかが重要です。
混同注意
術後早期の安静と、早期リハビリテーションの重要性。また、一般的な健康増進策(日光浴など)と、特定疾患の禁忌事項の区別。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、乳がん術後の上肢機能障害やリンパ浮腫に関連する指導内容が適切か不適切かを判断する際には、①リンパ浮腫の誘発・悪化要因を避ける、②関節可動域制限や筋力低下を防ぐための早期からの適切な運動、③患者のQOLや社会参加を支援する視点、の3つの側面から選択肢を評価する。
関連知識
乳がん術後のリンパ浮腫の病態生理、発生要因、予防と管理(弾性着衣、スキンケア、運動療法)。術後合併症(セローマ、感染、ROM制限)とその対応。がん患者への心理的・社会的支援。