38歳の女性。性格は几帳面、完全主義。仕事仲間との関係性に悩んでいた。そうした中、浮腫を自覚したため内科を受診したところネフローゼ症候群と診断され、副腎皮質ステロイド薬の投与が開始された。投薬開始1か月後から蛋白尿は消失したが、「何事にも興味が湧かない」などの言葉が聞かれるようになり、趣味のコーラスもやめてしまった。今後検討すべき治療方針として、最も優先順位が高いのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
副腎皮質ステロイド薬の副作用として精神症状が出現することが知られており、本症例では薬剤開始1か月後に出現した抑うつ症状であるため、まず薬剤性精神症状を疑い、原因薬剤である副腎皮質ステロイド薬の減量や中止を検討することが最も優先されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 家族療法は精神疾患や心身症の治療において、家族関係の改善やサポート体制の構築に有効ですが、本症例では薬剤性精神症状の可能性が最も高いため、原因薬剤の調整が優先されます。正しくは:まずは薬剤調整を行い、改善が見られない場合に検討されます。選びやすい理由:職場の人間関係の悩みが記載されており、心理社会的な要因が関連している可能性も考えられるため。混同注意:一般的なストレス関連の精神症状に対する心理社会的介入。
- 2. 音楽療法は精神的安定やQOL向上に寄与しますが、直接的な治療効果を期待するものではなく、薬剤性精神症状に対する優先的な治療方針ではありません。正しくは:まずは薬剤調整を行い、改善が見られない場合や、症状緩和の補助として検討されます。選びやすい理由:「長年続けていたコーラスの趣味もやめてしまった」という記述から、音楽に親しみがあったため、趣味を再開させるアプローチとして魅力的に映るため。混同注意:リハビリテーションやQOL向上のための補助療法。
- 3. 精神分析療法は、無意識の葛藤を扱う精神療法であり、時間がかかり、薬剤性精神症状のような即時性のある原因に対する治療としては適切ではありません。正しくは:まずは薬剤調整を行い、改善が見られない場合や、より根深い心理的問題がある場合に検討されます。選びやすい理由:「几帳面かつ完全主義の性格」という記述から、性格特性や心理的要因が症状の背景にあると考えるため。混同注意:性格傾向や発達に起因する精神疾患の治療。
- 4. 「何事にも関心が持てない」という抑うつ症状は認められますが、副腎皮質ステロイド薬による薬剤性精神症状の可能性が最も高いため、抗うつ薬の開始よりも原因薬剤の調整が優先されます。安易な抗うつ薬の投与は、ステロイドによる精神症状を悪化させる可能性もあります。正しくは:まずは薬剤調整を行い、改善が見られない場合や、薬剤性ではないと判断された場合に検討されます。選びやすい理由:症状が抑うつ状態を示しているため、一般的なうつ病の治療である抗うつ薬を選択したくなるため。混同注意:一般的なうつ病の薬物療法。
- 5. 正解。本症例の女性は副腎皮質ステロイド薬の服用開始から1か月後に「何事にも関心が持てない」という抑うつ症状を訴えており、これは副腎皮質ステロイド薬の副作用である薬剤性精神症状と強く疑われます。薬剤性精神症状の場合、原因薬剤の減量や中止といった調整が最も優先される治療方針となります。選びやすい理由:特になし。症状の出現時期と薬剤開始時期の関連性から合理的な選択肢です。
国試ポイント
副腎皮質ステロイド薬の副作用と、薬剤性精神症状を疑う臨床的判断能力が問われています。
混同注意
一般的なうつ病と薬剤性うつ病の鑑別。薬剤性の場合、原因薬剤の調整が第一選択となります。
次に同じ論点が出たら
薬剤服用中に新たな症状が出現した場合、薬剤の副作用である可能性を常に考慮し、薬剤開始時期と症状出現時期の関連性を確認します。
関連知識
副腎皮質ステロイド薬の主な副作用:満月様顔貌、中心性肥満、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症、消化性潰瘍、感染症への感受性増加、精神症状(多幸感、不眠、うつ、精神病症状など)