48歳の男性。脳梗塞後の右片麻痺。発症から5か月経過。Brunnstrom法ステージは上肢、下肢ともにⅢ。T字杖で屋内歩行は自立しているが、疲労しやすく、すぐに椅子に腰掛ける。遠近感が分かりづらく、平地でつまずくことがある。自宅退院に向けた浴室の環境整備案を図に示す。設置する手すりとして必要でないのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
この男性は右片麻痺で、T字杖で屋内歩行自立していますが、疲労しやすく、遠近感が分かりづらく平地でつまずくことがあるため、転倒リスクが高いです。浴室では、浴槽への出入りや立ち座りの際に安定性を確保するための手すりは必要ですが、浴槽内に設置する手すり⑤は、バスチェアを利用することで不要となる可能性が高いです。また、浴槽内で座位が安定しない場合に利用される手すりですが、座位が比較的安定していると考えられ、過剰な設備と言えます。
選択肢ごとの解説
- 1. 浴槽への出入り時のまたぎ動作の安定性確保のために必要な手すりです。右片麻痺で遠近感の低下もあるため、バランスを崩しやすく、転倒防止に重要です。選びやすい理由:一見して必要そうに見えるため、すぐに誤りとは判断しにくいです。混同注意:全ての選択肢が浴室内の手すりであり、すべてが必要に見えてしまうことがあります。
- 2. 浴槽をまたぐ際の右片麻痺側の支持を補助する手すりとして有効です。特に、遠近感が分かりづらく、平地でつまずくことがあるため、バランスを崩しやすいため必要です。選びやすい理由:身体支持の補助として必要であると判断しやすいです。混同注意:手すりの設置場所の優先順位が不明瞭だと、どれも必要に感じられます。
- 3. バスチェアから立ち上がる際の支持や、座位保持の安定性を高めるために必要な手すりです。右片麻痺であり、片側での支持となるため、健側での安定した支持は非常に重要です。選びやすい理由:立ち上がり動作の補助として一般的に有効であるため、必要であると判断しやすいです。混同注意:立ち上がり動作の重要性から、この手すりを必須と考えるのは自然です。
- 4. 洗い場での移動や、バスチェアへの着座・離座時の安定性確保のために必要な手すりです。右片麻痺でT字杖歩行自立とはいえ、疲労しやすく、遠近感の低下もあるため、洗い場での動作の安定を図る上で有効です。選びやすい理由:洗い場での移動や立ち座りの補助として重要であるため、必要と判断しやすいです。混同注意:浴室という滑りやすい環境での安全確保のため、複数の手すりが必要だと考えがちです。
- 5. 正解。浴槽内に設置する手すり⑤は、浴槽内で座位が不安定な場合や、浴槽内から立ち上がる際に必要となります。しかし、本症例ではバスチェアを利用しており、バスチェア上で安定して座位が保てると考えられるため、浴槽内手すりの必要性は低いです。過剰な設備となる可能性があります。正しくは:バスチェアの使用により浴槽内手すりの必要性が低いことを説明し、他の手すりの必要性を強調します。選びやすい理由:浴槽内での転倒防止という観点から、一見すると必要そうに思えるため。混同注意:浴槽内での動作の全てを補助しようとして、全ての場所に手すりを設置すべきだと混同しやすいです。
国試ポイント
脳卒中片麻痺患者の身体機能評価とそれに基づいた住環境整備の知識が問われています。特に、浴室での安全確保のための手すりの適切な配置を理解することが重要です。
混同注意
すべての手すりが必要と判断しがちですが、患者の能力や他の福祉用具(バスチェア)の使用を考慮して、本当に必要な手すりを見極める必要があります。過剰な設備はかえって邪魔になることもあります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合は、患者の麻痺の程度、ADL自立度、使用している福祉用具(バスチェアなど)、具体的な動作(浴槽を跨ぐ、浴槽内で立ち座りする、体を洗うなど)を詳細に検討し、どの手すりがどの動作を補助するかを具体的にイメージして判断します。
関連知識
片麻痺患者の住環境整備では、導線確保、段差解消、手すり設置、滑り止め対策などが基本です。BrunnstromステージⅢは共同運動優位であり、随意運動能力が不十分なため、移乗や立ち座り動作の補助は必須です。浴槽内手すりは、浴槽内で安定しない場合や立ち上がり動作が困難な場合に検討されますが、バスチェア使用時はその必要性が低下します。