47歳の男性。幼少期からクラスメートとの喧嘩が絶えず、しばしば担任から注意を受けていた。中学校卒業後、暴行と傷害とで少年院に2回の入院歴、刑務所に4回の服役歴がある。最後の出所後、クリーニング工場に勤めたが、同僚への暴言によるトラブルをきっかけに飲酒量が増加し、飲食店で他の客と口論になって刃物を持ち出して逮捕された。その後、連続飲酒状態を繰り返すようになり、アルコール依存症と肝障害との診断を受けて入院した。作業療法では他の患者の発言に反応して威圧的な態度をとることが多く、指摘しても問題を感じている様子がない。合併するパーソナリティ障害として考えられるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
症例の男性は、幼少期からの頻繁な学友とのいざこざ、少年院や刑務所への複数回の入所、暴行・傷害による逮捕歴、職場での同僚への暴言、飲酒を伴う他者との口論、刃物沙汰など、社会の規範を無視した行動、他者への攻撃性、反社会的な行動パターンが持続していることから、反社会性パーソナリティ障害の診断基準を多く満たしていると考えられます。特に他者の権利を侵害する行動が繰り返され、問題意識の欠如が見られる点が特徴的です。
選択肢ごとの解説
- 1. 強迫性パーソナリティ障害は、秩序、完璧主義、精神的・対人関係的統制へのとらわれが特徴であり、症例の男性に見られるような反社会的な行動パターンや攻撃性とは異なるため誤りです。正しくは:強迫性パーソナリティ障害では、几帳面さや完璧主義、融通の利かなさなどが主な症状となります。選びやすい理由:症状が異なるため、選択しにくいと考えられます。混同注意:強迫症(強迫性障害)。強迫性パーソナリティ障害は自己同一的な性格傾向であるのに対し、強迫症は異質な強迫観念や強迫行為に苦しむ病態。
- 2. 境界性パーソナリティ障害は、対人関係、自己像、感情の不安定性、衝動性、自傷行為や自殺企図が特徴であり、症例の男性の行動パターン(社会規範からの逸脱、攻撃性、他者の権利侵害)とは異なるため誤りです。正しくは:境界性パーソナリティ障害では、不安定な人間関係、感情の不安定さ、見捨てられ不安、衝動性などが主な症状となります。選びやすい理由:衝動性という点で一部共通性があるため、迷う可能性があります。また、飲酒量増加なども衝動性の一部と捉えられがちです。混同注意:反社会性パーソナリティ障害。両者ともに衝動性が見られますが、境界性は感情の不安定さや自己像の混乱が主で、反社会性は他者の権利侵害や社会規範からの逸脱が主です。
- 3. 回避性パーソナリティ障害は、社会的な抑制、不全感、否定的な評価への過敏性が特徴であり、症例の男性に見られるような攻撃性や反社会的な行動パターンとは対照的であるため誤りです。正しくは:回避性パーソナリティ障害では、批判や拒絶を恐れて社会的な接触を避ける行動が主な症状となります。選びやすい理由:症状が異なるため、選択しにくいと考えられます。混同注意:社交不安症(社交恐怖)。回避性パーソナリティ障害は広範な対人関係の回避傾向が性格の一部であるのに対し、社交不安症は特定の状況での不安が中心。
- 4. 自己愛性パーソナリティ障害は、誇大性、賞賛への欲求、共感性の欠如が特徴であり、症例の男性に見られるような反社会的な行動パターンや暴力性とは直接的には関連しないため誤りです。共感性の欠如は共通しますが、その行動の発現様式が異なります。正しくは:自己愛性パーソナリティ障害では、自分は特別であるという誇大な感覚、賞賛への絶え間ない欲求、他者への共感の欠如などが主な症状となります。選びやすい理由:「他の患者の言葉に過剰に反応し、威圧的な振る舞いをすることが多く見られる」という記載から、自己愛が傷つけられたことによる反応と捉え、自己愛性パーソナリティ障害と混同する可能性があります。また、共感性の欠如という点で共通性が見られます。混同注意:反社会性パーソナリティ障害。両者ともに共感性の欠如が見られますが、自己愛性は自己の優越性や特別感を基盤とした誇大性や賞賛欲求が主であり、反社会性は他者の権利侵害や社会規範からの逸脱が主です。
- 5. 正解。本症例の男性は、幼少期からの学友とのいざこざ、少年院・刑務所への複数回入所、暴行・傷害での逮捕歴、職場での同僚への暴言、刃物沙汰を伴う口論、さらには他の患者への威圧的態度と問題意識の欠如など、他者の権利を侵害し、社会規範を無視した行動パターンが持続している点が反社会性パーソナリティ障害の診断基準に合致するため、最も適切です。選びやすい理由:症例の行動が反社会性パーソナリティ障害の典型的な特徴を多く示しており、迷う要素は少ないと考えられます。
国試ポイント
パーソナリティ障害の診断基準、特に反社会性パーソナリティ障害の中核症状と経過を理解し、他のパーソナリティ障害と鑑別できることが重要である。
混同注意
境界性パーソナリティ障害との混同。境界性パーソナリティ障害は不安定な対人関係、衝動性、自己像の混乱が主であるのに対し、反社会性パーソナリティ障害は他者の権利侵害や社会規範からの逸脱が特徴。また、薬物・アルコール依存症と併発しやすい。
次に同じ論点が出たら
今後同様の症例が出た場合、まず「他者の権利侵害」「社会規範からの逸脱」「衝動的な行動」「罪悪感の欠如」「問題意識の欠如」といったキーワードに着目し、その行動が幼少期から持続しているか、また反復性があるかを確認する。
関連知識
反社会性パーソナリティ障害は、精神病質(サイコパシー)とも関連が深く、共感性の欠如や罪悪感の欠如が特徴とされる。青年期までに素行症(行為障害)の診断が先行することが多い。治療は困難な場合が多く、薬物療法よりも精神療法や環境調整が中心となるが、本人が治療に動機づけにくいという課題がある。