大腿骨頸部骨折に対して後方アプローチにて人工骨頭置換術を施行した患者のADL指導で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
大腿骨頸部骨折に対する後方アプローチ人工骨頭置換術後の脱臼肢位は、「股関節の屈曲、内転、内旋」です。この肢位を避けることがADL指導の基本となります。選択肢3のあぐら座位は、股関節が外転・外旋位となり、術後の禁忌肢位を回避できるため、靴下を履く際の安全な方法として適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 和式トイレの使用は、股関節の過度な屈曲や内転、内旋を伴うため、後方アプローチ術後の脱臼肢位を誘発するリスクが高いです。正しくは:洋式トイレを使用し、座面が高い場合は補助具を利用して、股関節の屈曲角度を制限するように指導します。選びやすい理由:一般的な排泄動作ですが、術後の禁忌肢位に注意が必要です。混同注意:術後早期に推奨される動作と混同しやすい。
- 2. 割り座(横座り)は、股関節の過度な内転と内旋を強く伴うため、後方アプローチ術後の脱臼肢位を誘発するリスクが非常に高いです。正しくは:足の爪を切る際は、椅子に座り、股関節の屈曲・内転・内旋を避けるように、自助具や他者の介助を検討します。あるいは、足を反対側の膝に乗せるなど、安全な方法で行います。選びやすい理由:体をかがめる必要があり、股関節の動作に意識が向きがちですが、割り座自体の危険性を見落としやすいです。混同注意:単に前かがみになる動作と、体幹と股関節の複合的な動きによる危険性を混同しやすい。
- 3. 正解。あぐら座位は、股関節が外転・外旋位になるため、後方アプローチ術後の脱臼肢位(屈曲・内転・内旋)を回避できる安全な肢位です。靴下を履く動作の指導として適切です。選びやすい理由:一見すると股関節を大きく動かすように見えますが、脱臼肢位から遠ざかるため安全です。混同注意:股関節を大きく曲げる動作全般が危険だと誤解しやすい。
- 4. 階段を下りる際は、まず患側下肢を下ろすことが推奨されます。これにより、患側への荷重負担を軽減し、バランスを保ちやすくなります。健側から下りると、患側に全体重がかかる時間が長くなり、不安定になります。正しくは:階段を下りる際は、「患側 → 健側」の順で下ろすように指導します。手すりなどがあれば積極的に利用します。選びやすい理由:階段昇降の基本は「良い方から昇り、悪い方から下りる」と覚えるのが一般的ですが、これを誤解しやすいです。混同注意:階段を昇る動作(健側から)と下りる動作(患側から)の指導を混同しやすい。
- 5. 椅子に座って床の物を拾う場合、体幹を前屈させると股関節の過度な屈曲や内転を伴いやすく、後方アプローチ術後の脱臼肢位を誘発するリスクが高いです。正しくは:床の物を拾う際は、リーチ動作補助具を使用するか、片膝立ちやランジ姿勢(患側を後ろにして)で股関節の屈曲を抑えながら行うように指導します。選びやすい理由:座っている方が安定しているように思えるかもしれませんが、股関節の屈曲角度に注意が必要です。混同注意:立ち上がって拾う動作と比べて安全だと誤解しやすい。
国試ポイント
この問題は、大腿骨頸部骨折後方アプローチ術後の脱臼肢位(屈曲・内転・内旋)を正確に理解し、日常生活動作(ADL)においてその禁忌肢位を回避するための具体的な指導内容を選択できるか、という知識を問うています。特に、各ADL動作がどのような股関節の動きを伴うかを把握していることが重要です。
混同注意
前方アプローチ術後の脱臼肢位(伸展、外転、外旋)と混同しやすい点、および各ADL動作における股関節の複合的な動きの分析が誤りやすいポイントです。また、階段昇降の原則(昇りは健側から、下りは患側から)の混同もよく見られます。
次に同じ論点が出たら
次回同じ論点が出た場合は、まず『後方アプローチであること』を確認し、禁忌肢位が『屈曲・内転・内旋』であることを想起します。その上で、各選択肢の動作が股関節のどの動き(屈曲・伸展、内転・外転、内旋・外旋)を主に伴うかを詳細に分析し、禁忌肢位を回避できるものを選びます。
関連知識
人工股関節置換術の種類(前方・後方アプローチ)、それぞれの術後の禁忌肢位、ADL指導の具体例(着衣、入浴、排泄、移動、拾い物など)、自助具の活用。