境界性パーソナリティ障害の治療について最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
境界性パーソナリティ障害の患者は、感情の不安定さや対人関係の困難さから、治療関係においても不安定になりやすく、治療的枠組み(セッティング)を逸脱しようとすることが頻繁にあります。治療者は、このような患者の特性を理解しつつ、時間厳守、守秘義務、治療者の役割といった治療における明確なルールや境界線を一貫して維持することが非常に重要です。これにより、患者に安全な環境と予測可能性を提供し、治療の基盤を安定させることができます。これは、弁証法的行動療法(DBT)など、境界性パーソナリティ障害の主要な治療法においても重視される原則です。
選択肢ごとの解説
- 1. 境界性パーソナリティ障害の患者は、見捨てられ不安から治療者へ過度に依存しがちです。治療では、このような依存を促進するのではなく、自律性を育み、安定した対人関係を築けるようにサポートすることが重要です。正しくは:治療者への依存に適切に対処し、患者の自律性を支援する。選びやすい理由:治療者との関係性が重視されるため、一見すると密な関係が良いように思えるかもしれない。混同注意:ラポール形成と依存促進を混同しやすい。
- 2. 境界性パーソナリティ障害そのものに直接効く薬はありませんが、抑うつ、不安、衝動性、精神病症状などの併存する精神症状に対しては、症状緩和のために薬物療法が用いられることがあります。正しくは:併存する精神症状に対しては、薬物療法を検討することがある。選びやすい理由:パーソナリティ障害は精神療法が中心であるという認識から、薬物療法は不要と思われがち。混同注意:パーソナリティ障害の『根本治療薬がないこと』と『症状緩和のための対症療法』を混同しやすい。
- 3. 境界性パーソナリティ障害の患者は、退院時の見捨てられ不安や病棟内での人間関係のトラブルのリスクが高いため、長期入院は通常推奨されません。社会生活への適応は、外来治療やデイケアなどを通じて段階的に支援することが一般的です。正しくは:社会適応能力を高めるためには、外来治療や段階的な介入が推奨される。選びやすい理由:安定した環境を提供することで症状が落ち着くと誤解されがち。混同注意:症状安定を目的とした一時的な入院と、社会適応訓練を目的とした長期入院を混同しやすい。
- 4. 境界性パーソナリティ障害の患者は対人関係に困難を抱えていますが、グループ療法や集団活動を通じて、適切な対人関係スキルを学び、他者との交流から回復を促すことが重要です。交流を完全に制限することは、孤立を深め、治療機会を奪うことになります。正しくは:適切な治療的配慮のもとで、他者との交流を促進し、対人関係スキルの習得を支援する。選びやすい理由:対人関係のトラブルを避けるために、交流を制限することが賢明だと誤解されやすい。混同注意:トラブル防止のための個別の介入と、交流自体の全面禁止を混同しやすい。
- 5. 正解。境界性パーソナリティ障害の患者は、見捨てられ不安や理想化・こき下ろし(splitting)といった特徴的な対人関係パターンから、治療関係においても境界線を試し、逸脱させようとすることがあります。そのため、治療的枠組み(例:時間、回数、守秘義務、役割など)を明確にし、一貫して維持することが、患者に安心感と予測可能性を提供し、治療の安定性を保つ上で極めて重要です。
国試ポイント
境界性パーソナリティ障害の患者特性と、それに対する治療者の適切な態度・介入原則を問う問題です。特に、治療関係における『枠組み』の重要性や、対人関係のトラブルへの対処、衝動性への配慮がポイントとなります。
混同注意
治療関係を強化することと、治療的枠組みを厳格に保つことの区別。患者の要求に応じることと、治療方針を一貫させることの区別。
次に同じ論点が出たら
境界性パーソナリティ障害の患者が、治療中に特定の行動(例:深夜に治療者に電話をかける、自殺企図をほのめかす)を示した場合、治療者はどのように対応すべきか、といった具体的なシチュエーション問題が考えられます。
関連知識
弁証法的行動療法 (DBT) の基本原則、スキーマ療法、精神力動的心理療法における治療的枠組みの概念、パーソナリティ障害の診断基準 (DSM-5、ICD-10)。